日本中から人が集まる東京だが、特に最近だと中目黒や代官山などは若者や富裕層中心に人気があるエリアだ。しかし、地価や物価も非常に高く、特に中目黒は「コスパの悪い街」とする不動産関係者もいる。

それでは、なぜ中目黒はコスパが悪いのか。

 不動産の専門家である東京情報堂代表の中川寛子氏はこう言う。

「都内でもっとも、かどうかはわかりませんが、確かに中目黒はコスパが悪いという印象です。もともと中目黒は目黒川沿いの低地で、立地は決してよくない。街並みを見ても表通りこそ華やかですが、一本路地に入れば行き止まりや階段、古い木造建築などもよく見られるので、意外と下町っぽい印象があります」

 ではなぜ、このエリアは一般的に高級なイメージを持たれているのだろうか。

●代官山のイメージに引っ張られた中目黒

「それは付近にある代官山の影響でしょう。あのあたりから斜面を上っていけば美空ひばり邸(現美空ひばり記念館)もありますし、立地は淀橋台という武蔵野台地の中でも古くて固い地盤なので、地震の揺れにも強い。眺望、日当たりもいいため、高級住宅地として人気があります。代官山のイメージ、目黒川の桜のイメージ、再開発で変わったと言う誤解が人気の秘密なので、正直、専門家から見れば『中目黒ってそんなに安全で素敵な場所だっけ?』となるんです」(中川氏)

 では、反対に都内のどこなら、住むにはお得なのかが気になるところ。不動産に興味がある人であれば、値下がりしづらいエリアの物件を購入して、将来的に売却してひと稼ぎしたい、と考える人もいるはずだ。しかし、都心の物件で儲けられるようなエリアはほとんどないと中川氏は指摘する。

「投資向け物件の過去のデータを見てみると、利回りの推移は近年ずっと下がり続けています。
区分所有の物件の場合、都内は表面利回りが5%だったとしても管理費、修繕積立金、固定資産税での支出を考えたらほとんど回らないような物件がすごく多い。もちろん過去に値上がりして儲かる可能性が高いエリアはあるにはありますが、それは都心3区(千代田区、中央区、港区)で、とても一般の人が手を出せる物件ではありません」

 不動産投資と収益物件の情報サイト「健美家」が公開している、2016年4月から6月を対象とした同サイト登録物件の市場動向レポートによると、利回りは前年同期比で、区分マンションが0.38%減、一棟アパートが0.37%減、一棟マンションが0.53%減。いずれも近年下がり続けており、今後も回復の兆しは予想しづらい状況だ。投資向けの物件ですらそれだけ利回りが悪化しているのだから、不動産に関して素人が購入できる物件で、得をできることはほとんどないといえよう。

●イメージが悪いエリアほどコスパよし

 しかし、そんななかでも、あくまでも比較的だが、コスパがいいエリアも存在しているのも事実。

「交通的な利便性を考えれば足立区、葛飾区、荒川区、北区、江戸川区の都内の東エリア。それと、池袋ターミナルの東武東上線や西武池袋沿線、特に板橋とか練馬あたりでしょうか。一部には治安が悪いイメージがありますが、最近は、治安の面では他のエリアとそこまで変わらない。それなのに、イメージがよくないだけに地価も安くなっています。それは賃料よりも購入するほうにさらに大きく出ます。ということは、このあたりに家を購入するとコスパ的にはさらにお得といえます」(同)

 これらのなかには下町風情溢れる雰囲気で、商店街や安い居酒屋もあるエリアもあり、生活するにはメリットも多い、と中川氏はいう。要するに、住まいを決める上ではイメージ先行ではなく、自分がそこに住んで満足できるかどうかが一番重要なのだ。


 現在地価が安いエリアだって、将来的に価値が上がる可能性も否定はできない。現在印象が悪い場所の物件ほど、もしかしたら買い時なのかもしれない。
(取材・文=編集部)

編集部おすすめ