今年のプロ野球も大詰めを迎え、10月22日からいよいよ日本シリーズが始まる。25年ぶりに悲願のリーグ優勝を果たした広島東洋カープと、若い選手が一丸となり最大11.5ゲーム差を大逆転した北海道日本ハムファイターズ。
さらに、今季限りでの引退を発表したカープの黒田博樹、二刀流の怪物・大谷翔平といった対決も予想され、注目度も高い。今年はセントラル・リーグチームの球場で土日開催されるということもあり、すでにカープ本拠地のMAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島(マツダスタジアム)近辺の宿泊施設は満室で、ゲームチケットもすぐに完売した。
マツダスタジアムでは、先日行われたクライマックスシリーズ(CS)のチケットも即完売し、マツダスタジアムは赤一色。CSだけでなく、今年はどの球場でも、相手がカープの日はスタンドが真っ赤に染まっていた。しかし、ファンが増えるということは良いことばかりではない。観戦マナーを守らないファンも増え、その状況が目立つようになっているのだ。
たとえば、9月17日の中日ドラゴンズ戦では、カープの丸佳浩選手が放ったフェンスぎりぎりの打球を、カープファンがフェンスから手を出して捕球。守備をしていた外野手は邪魔されて捕球できなかったのだが、結果はホームラン。中日は試合に勝ったものの、リプレイ検証をした審判、そして捕球したファンはインターネット上で猛批判にさらされた。
また、優勝決定直前の9月2~4日に行われた神宮球場でのカープ最終3連戦。早い段階でカープ応援席であるレフト側は売り切れ、次いで3塁側内野席も売り切れた。
そしてカープが優勝マジックを2として迎えた9月8日、甲子園球場で行われた阪神タイガース対読売ジャイアンツ(巨人)戦に、カープのユニフォームを着たファンがちらほらと見られた。カープが勝ち、巨人が負ければ、カープの優勝が決まるため、阪神を応援していたのだ。阪神の席でカープのユニフォームを着て応援している姿がテレビに映し出され、しかも複数人いたことに筆者も驚かされた。
結局その日はカープと巨人が共に勝ったことでマジックは1となり、東京ドームで直接対決によって優勝を決めることとなった。9月10日、普段はオレンジ色のタオルが舞い、巨人ファンでいっぱいになる東京ドームも、この日ばかりはカープのユニフォームを着た人で埋め尽くされた。
●相手側の席まで買い占めるカープファン
さらに、シーズンを通して問題となっていたのが、チケットに関することだ。マツダスタジアムでは、今まで簡単に購入できていたカープ応援席(ライト側)のチケットがすぐに売り切れ、10倍以上のプラチナチケットとなって転売業者に流れてしまうことも多かった。カープ側のチケットが買えないファンはビジター側(レフト側)のチケットを購入し、ビジター側のチケットも完売となることも珍しくなかった。だが、チケットが完売となっていても、ビジター側に空席が目立つことがたびたびあった。
これは、ビジターチケットで入場し、内野席の後ろで立ち見をしてカープを応援するファンがいるために起きていると指摘されている。
マツダスタジアムに限らず、どの球場へ行ってもビジターエリア(一般的にレフト側)はビジターチーム以外のユニフォーム着用や応援をすることはマナー違反だ。内野席は基本的にホーム、ビジターどちらのファンでも入れるため、熱狂的なファンや応援団は外野席で応援する。そんな外野席で相手チームの応援をしていたら、揉め事が起こるのは避けられない。ファンが急激に増加したカープは、こうしたマナー違反が特に目立ち、一部のファンの「暴走行為」はインターネットを中心に物議を醸している。
こうした暴走するファンについては、多くのカープファンも心を痛めているようだ。球団が対策を講じても、裏目に出たり、対応が追い付かなかったりすることもある。そのたびに他球団ファンの怒りの矛先がカープに向けられることは、すべてのファンが望んでいないはずだ。
もちろん、暴走するファンはカープに限らず、どのチームにも存在する。好きなチームのユニフォームを着て球場へ行くということは、その球団の宣伝、アピールにもなっている。
プロ野球ファンの多くが注目する日本シリーズ。入手困難となることが予想されるチケットだが、もし買えなかったとしても自宅や居酒屋、パブリックビューイングなどで楽しむ方法もある。無限にあるそれぞれの楽しみ方で、今年最後の熱い戦いを見届けよう。
(文=唐沢彩野/Sportswriters Café)