いまだに謎が多く、諸説が飛び交うお笑いタレント・有吉弘行とフリーアナウンサー・夏目三久の「熱愛・妊娠」報道。事の真相はともかく、この話題によって注目を集めたのが、以下のような有吉の過去の発言だ。
「(子供が)できちゃうのは順番が違うと思う。万が一そうなった場合は、授かり婚ではなく“できちゃった婚”と呼んで」(2011年11月9日放送『マツコ&有吉の怒り新党』<テレビ朝日系>より)
夏目との「できちゃった結婚」を報じられた有吉だが、彼自身は「順番が違う」と、でき婚反対派とも思えるコメントをしていたのである。実際、結婚後に妊娠するのではなく、妊娠をきっかけに結婚する「でき婚」には、さまざまなデメリットが存在しているという。
●10代女性のでき婚率は8割?
厚生労働省の「出生に関する統計」(10年度)によると、「結婚期間が妊娠期間より短い出生」によって生まれた第1子の割合は、09年時点で全体の25.3%を占めている。この中には「妊娠したのを知らずに結婚した」というケースもあるのかもしれないが、単純に考えれば、結婚した夫婦がもうけた1人目の子供の約4分の1が、でき婚によるものなのだ。
「このデータを母親の年齢別に見ていくと、15~19歳の母親が8割と最も多く、次に多いのが20~24歳の6割。一方、25~29歳は2割、30歳以降は1割と、母親の年齢が上がるにしたがって減少していきます。でき婚で出産するのは、10~20代前半の女性がダントツに多いのです」
そう語るのは、恋人・夫婦仲相談所所長の二松まゆみ氏。これまで、1万数千人の女性たちの「セックスレス」「結婚」などの悩みに答えてきた二松氏によれば、10~20代前半には「結婚への覚悟もないまま、『恋人が好き』という感情だけで妊娠・結婚してしまう」人が多いという。しかも、10代など若年層の場合、でき婚だけではなく、その後の離婚の確率も高いのである。
国立社会保障・人口問題研究所の「人口統計資料集」の「年齢層別有配偶人口に対する離婚率」(10年度)にも、19歳以下の既婚女性のうち、離婚した割合が82.74‰(8.274%)に上るというデータがある。これは、でき婚に限定したものではないが、前述した「15~19歳女性のでき婚率が8割」という数値を見ると、2つのデータの関連性は否定できない。
「3組に1組の夫婦が離婚するといわれる現代では、結婚生活を続けること自体がとても難しいのです。にもかかわらず、きちんとした将来設計もなく、避妊せずにセックスする……。その結果、『妊娠したから』と子供を生んで結婚するというのは、非常に危うい選択です」(二松氏)
●シングルマザーの貧困や虐待に陥る例も
そもそも、でき婚はお互いの「好き」という感情を優先させたものだけに、その感情に任せて離婚してしまうケースが非常に多いという。
「これまで、1万数千人の女性から、セックスレスに関する相談を受けてきましたが、最も驚いたのは、19歳で夫とのセックスレスに悩んでいる既婚女性です。その相談内容も『私が子供を生んでから、亭主が若い女と浮気して帰ってこないんです』というもので、かなり衝撃を受けました。夫も同じ19歳で、浮気相手はさらに若い女子高生だったのです。結局、この夫婦は離婚しました」(同)
このような、10代ででき婚した女性に「なぜ避妊しなかったのか?」と聞くと、彼女たちは決まって「彼氏が好きだから」「彼氏に悪いと思ったから」と答えるという。しかし、若年層のでき婚は、特にデメリットが多いのである。
「10~20代前半で無計画にでき婚をするのは、経済的に不安定な家庭に生まれた人が多い。若い2人だけではアパートの家賃が払えないので、出産と同時にどちらかの実家で親と同居することになります。そうすると、嫁姑でトラブルになる可能性が高い上、まだまだ遊びたい盛りの夫が家に寄りつかなくなる一方、妻は子育てによって行動が制限されてしまう。その不満が子供に向かうケースもあるのです。
さらに、離婚後に待ち受けているのは、子供の教育費どころか明日の食費にすら困る、近年大きな問題となっている「シングルマザーの貧困」だ。若年層のでき婚は所得の低い地方に集中しており、厚労省の「結婚期間が妊娠期間より短い出生数及び嫡出第 1 子出生に占める割合」(09年)を見ても、関東地方より東北地方や九州地方の「でき婚率」が高くなっている。
●避妊具に穴を開けてでき婚した30代女性
一方、都市部のでき婚は年齢もキャリアもさまざまで、なかには計画的にでき婚をするケースもあるという。
「目当ての彼とセックスする際に、コンドームに穴を開け、思惑通り妊娠してでき婚をした30代前半の女性もいました。しかし、計画的だからといって、結婚生活がうまくいくとは限りません。こういう場合、男性側に結婚に対する覚悟や子供を育てることの精神的な準備が足りないので、やはり離婚につながることが多いのです。妊娠させたことの責任感が先に立ち、相手のことを愛しているのか、一生守り切る自信があるのかが見えなくなっているんです。また、都市部の経済的に自立した女性のなかには、子供をつくることが一番の目的で、結婚生活そのものにはあまり執着のない人もいます」(同)
また、女性側だけでなく、男性側にも問題はあるという。
「その場の快楽だけを求めて避妊しない男性はもってのほかですが、ほかにも、妊娠適齢期の交際相手に煮え切らない態度を取り続ける男性も、態度をはっきりさせるべきだと思います」(同)
デメリットばかり目立つでき婚だが、メリットがゼロというわけでもない。例えば、若年層のでき婚には、体力があるうちに出産・育児ができるという利点もある。
「子育ては24時間体制なので、やはり相応の体力が必要です。
そして、経済的な問題も重要だ。現在、子供1人を育てるためには約3000万円が必要ともいわれている。今の日本の経済状況を考えると、本来なら「本当に子育てができるのか」「失業したらどうするのか」など、シミュレーションした上で子供をつくる必要があるのだ。
「それでも、生んだ以上は親の責任をしっかりと果たすべきです。そして、離婚した人も、再婚を考える際にはより慎重に男女のお付き合いをしていただきたいです」(同)
ネガティブなイメージを払拭するためか、最近はでき婚が「授かり婚」「おめでた婚」と言い換えられることも増えてきた。しかし、いくら表現を変えても、有吉が「順番が違う」と発言していたように、無計画な妊娠であることには変わりない。一時の快楽や感情に流されて避妊を怠ると、その先に待っているのは離婚や生活苦であるということは、覚えておいたほうがよさそうだ。
(文=谷口京子/清談社)
※10月26日掲載時点で、『離婚した割合が82.74%に上るという驚きのデータがある』と記載しておりましたが、単位は‰の間違いでした。お詫びして訂正いたします。(12月2日修正)