10月27日発売の「週刊文春」(文藝春秋)は、芸能事務所LDHが自社に所属する三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBE(以下、JSB)に昨年末の日本レコード大賞を取らせるため、審査委員への“働きかけ”を1億円で芸能事務所バーニングプロダクションに依頼していたと報じた。

 本件について、もし事実である場合、一連のLDH、およびバーニングの行為は法的に問題ないのだろうか。

弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士の山岸純氏に解説してもらった。

●税法上の問題

 仮に、「LDHがバーニングに対し、(「文春」に掲載された、バーニングからLDH宛の請求書に記載の請求品名)『年末のプロモーション業務委託費』とし1億円を支払った」のが事実だとすると、税法上の問題が生じる可能性があります。

 今回、LDHがレコード大賞を取るためにバーニングに1億円を支払ったとのことであれば、法律上は、「LDHはバーニングに対し、『JSBがレコード大賞を取ることができるように関係者などにお願いをする』という業務を委任し、LDHはこの業務の対価としてバーニングに1億円という報酬を支払った」ということになります。

 しかし、世の中の通常の感覚を持った人たちの常識からして、そんな業務がまかりとおるわけがありません。

 要するに、レコード大賞のような審査・選考を必要とする大会やイベント事においては、少なくとも、常識的には「カネを払えば賞を取れる」ということは決してないため、「カネを払うので賞を取れるように“動いてください(仕事をしてください)”」といった業務が認められるはずもありません。

 このことは当然、税務署の職員も同じ考えです。おそらく、「そんなふざけた業務内容で1億円をもらうなんて認めない。業務として認めない以上、これは単にLDHがバーニングに1億円を無償でプレゼント(贈与)したことにします」と判断するでしょう。
 
 そうなると、LDH、バーニングという「法人」の間で寄附が行われたものと認定され、本来であれば、プレゼント(贈与)した側のLDHは「寄附金」として、そしてプレゼント(贈与)を受けた側のバーニングは「受贈益」として、これらの利益に対し法人税が課税されることになります(なお、法人の利益状況等により課税の有無、税額は変化します)。

 それにもかかわらず、「寄附金」や「受贈益」として税務処理をしていなければ、脱税のそしりを受けることにもなるでしょう。このように、「レコード大賞を取るために1億円を支払った(受け取った)。しかし、税務処理はしていない」という場合には、税務上の問題が生じるわけです。


 そのほかは、レコード大賞は公的な機関が運営しているわけでもなく、私的な団体の大会や賞で“裏金”が動いても、特にこれらを取り締まる法律はありませんので、問題はありません。
(文=編集部、協力=山岸純/弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士)

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