大手芸能事務所のジャニーズ事務所が、嵐や関ジャニ∞などのファンクラブ規約において、「会員規約が予告なく改訂できる」「支払い済みの年会費を返還しない」などと定めていることについて、消費者団体から「規約の一部が消費者保護の観点から不適切」と指摘を受けたことが話題を呼んでいる。
ジャニーズは規約を見直す方針を示しているが、今回問題となった規約にも現れるファンに対する“姿勢”は、別の面でもみられるようだ。
「ジャニーズファン、とくに地方在住のファンが東京に来た際、赤坂にある事務所を一目見ようと訪問し、記念として建物の写真を撮影しようとするファンも多いです。しかし、撮影しようとした瞬間、事務所の警備員に厳しく注意されるというのが、お決まりのパターンになっています」
実際にジャニーズ事務所を訪れて外観を撮影したことがあるという50代女性は、こう証言する。
「私は嵐の大ファンで、地方から上京した際にどうしてもジャニーズ事務所を見てみたくて、わざわざ赤坂まで行きました。やっと見つけて、路上から建物を撮影しようとしたところ、突然1Fのエントランスから警備員の方が飛んできたのです。そして、『ちょっと! 勝手に撮らないで!』と注意され、ものすごい目で睨まれてしまいました。確かに、勝手に撮影したことは悪かったかもしれませんが、まるで犯罪者みたいに扱われて、かなりへこんでしまいました。今年はSMAPの独立騒動があり、ジャニーズという企業に関する良くない情報がたくさん報じられましたが、ファンへのこうしたヒドい対応を目の当たりにしてしまうと、やはり“そういう体質”なのかな、と悲しくなりました」
ちなみにこの女性は、事務所の隣の建物前の歩道から撮影していたというが、こうした対処の理由について、当サイトがジャニーズ事務所に問い合わせたところ、期日までに回答は寄せられなかった。では、事務所建物の外観を撮影する行為は違法なのであろうか。弁護士法人ALG&Associates弁護士の児玉政己氏に解説してもらった。
●法的見解
・結論
結論としては、違法となる一定の場合でない限り、ジャニーズ事務所側は、撮影者の行為を禁止する法的な権利は有していないものと考えられます。
・理由
屋外に建てられている建物を撮影する行為について法的に問題が生じうるとすれば、以下のような点が考えられます。
(1)撮影した場所が他者の管理権の及ぶ土地であることからの同地への侵入の問題
(2)撮影対象の屋内の状況が撮影(確認)されることによるプライバシー侵害等の問題
(3)建物の外観自体が有する財産的権利の侵害の問題
(4)撮影対象が企業である場合に建物外観に付された企業のロゴマーク等が撮影された写真を使用されることによる問題
まず、(1)の問題についてですが、たとえば、ジャニーズ事務所が事務所周囲の土地を所有している場合を想定すると、ジャニーズ事務所としては、同地を自らで自由に利用することができ、なんらの権限のない他者の行為、あるいは、所有者として許諾していない態様での立ち入りを行う者に対しては、その排除を求めることが可能です。このことは、土地を賃借等している場合に生じる管理権に基づく場合であっても同様です。
さらに、当該土地部分が建物と接しており、かつ周囲を塀等で囲われている場合には、当該土地部分も、建造物侵入罪の客体である「建造物」に含まれるとするのが判例の立場となっているため、もし撮影者がこのような敷地部分に立ち入って写真を撮影するということであれば、建造物侵入罪が成立する可能性があります。この場合、法定刑としては3年以下の懲役、または10万円以下の罰金刑となっています。
もっとも、以上の点はあくまで、撮影者がジャニーズ事務所の所有権ないし管理権の及ぶ土地部分に侵入する場合が前提となっています。当該土地部分から外れた場所で撮影行為をする人物に対しては、少なくとも土地のなんらかの権限に基づいて行動に制限を課すことはできないと考えられます。
次に、(2)の問題についてですが、事業用建物とはいえ、建物内部は建物使用者であるジャニーズ事務所の私的領域となります。これを撮影されることは通常誰も望まないことだと考えられますので、そもそも、その撮影自体を行わせないということは法的にも許容される対応だと思います。
もっとも、これをもってプライバシー権の侵害が成立するためには撮影者がこれを公開することが前提となっています。また、建物の全体像の撮影のみであり、たとえば窓内の状況を把握できないような態様での写真しか撮れていないのであれば、そもそもとしてプライバシー侵害が生じる行為には当たらないと考えられ、禁止することも難しいものと考えられます。
なお、建物内部を撮影されたくないという理由としては、特にジャニーズ事務所の場合には、所属タレントが所在していること自体を明らかにされたくない、あるいは、所属タレントの肖像を利用されたくないという観点もあるのではないかと考えられます。
一方、(3)の問題としては、とくに建物が有する著作権の問題が考えられます。
もっとも、学説上争いはあるものの、我が国の裁判例の傾向からすると、建物であればどのようなものでも著作権が発生するというものではなく、建物としての実用性を超えた芸術性(美術性)が備わっていることが必要であると考えられています。当職が把握する限りのジャニーズ事務所の建物外観に、このような芸術性(ないし美術性)があるとは考えられません。
また、仮にジャニーズ事務所の建物がこのような芸術性を備えたものとして「建築の著作物」であることが認められたとしても、建築の著作物については「建築により複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に提供する場合」以外の利用行為は適法に行うことができるとされているため、写真撮影により外観を複製する行為は、自由に行うことができるものと考えられます。よって、いずれにしても、著作権を根拠とした撮影行為の制限は難しいものと考えられます。
最後に、(4)の問題ですが、建物の外観に、たとえばジャニーズ事務所が商標登録しているロゴマークが存在している場合に、その写真を「使用」する場合には、商標権侵害の問題が発生するとも考えられます。
もっとも、商標権侵害が生じるためには、当該ロゴマークを「商標的に使用」する必要があります。商標的な使用とは、当該ロゴマークが持つ識別力(本件でいえば、ジャニーズ事務所という名称が有するブランド力といってもいいかもしれません)を、ジャニーズ事務所以外の商品やサービスに利用することをいうものと考えられますので、単に写真を撮って自分の思い出にすることや、インターネット上に自分の行動録として掲示するだけでは、これに当たらないと考えられます。
よって、ジャニーズ事務所の建物外観に、商標登録されたロゴマークが存在していたとしても、商標権に基づいて写真撮影自体を制限することは難しいと考えられます。
以上の通り、基本的には、ジャニーズ事務所の管理権が及ぶ土地に侵入したうえでの撮影行為、あるいは、建物内部を撮影する態様での撮影行為ではない限り、ジャニーズ事務所として、建物外観を撮影する行為を禁止する法的な根拠はないものと考えられます。
なぜこれを禁止したいのかはわかりかねますが、やはり、集客力あるタレントを撮影されることによる弊害(人が集まって業務に支障が出ること、あるいは、タレントの肖像を不正に利用されること)を防止したいのではないでしょうか。
(文=編集部、協力=児玉政己/弁護士法人ALG&Associates弁護士)
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