居酒屋大手コロワイドの株価が高値圏で推移している。10月27日、2094円と、ここ10年来の高値をつけた。
居酒屋「北海道」「甘太郎」などを手掛けるコロワイドは、居酒屋市場の伸び悩みを受け、外食事業に軸足を移す戦略に転換、M&Aに打って出た。
12年10月、焼肉チェーン「牛角」を運営するレインズインターナショナルを、140億円で傘下に組入れた。
16年12月16日、レインズインターナショナル創業者の西山知義氏から、北米で焼肉店「牛角」を展開する米社の全株式を取得した。北米やカナダで外食事業に進出する足がかりとする。買収額は100億円だ。
14年10月、回転ずし店「かっぱ寿司」チェーンを運営するカッパ・クリエイトホールディングス(現・カッパ・クリエイト)の過半数の株式を取得して子会社にした。買収額は300億円でコロワイドのM&Aでは過去最大規模だった。
●ハンバーカー国内5位のフレッシュネスバーガーを買収
16年12月1日、ハンバーガー国内5位のフレッシュネスバーガーを展開するフレッシュネスを買収した。レインズインターナショナルがユニマットグループからフレッシュネスの全株式を取得した。
フレッシュネスのチェーン売上高は80億円。店舗数では同4位の160店。業績は低迷していた。
ハンバーガー業界は外資系の参入や事業拡大が相次いでいる。国内最大手、日本マクドナルドホールディングスの低迷が続き、ビジネスチャンスと判断したからだろう。
米大手ハンバーカーチェーン、ウェンディーズの日本法人が今夏、サントリーホールディングス傘下で同業のファーストキッチンを買収した。ウェンディーズは1980年に日本へ進出したが、マックとの価格競争に敗れて09年に撤退した。直営店1店舗のウェンディーズが135店舗のファーストキッチンを買収して再度挑戦する。
15年11月には、米国で「マックキラー」の異名を持つ新興チェーン、シェイクシャックが日本で1号店を開業。16年3月には米カールスジュニアが日本1号店をオープンした。カールスジュニアは米CKEレストラン・ホールディングスが世界で展開しており、LPガスが主力のミツウロコグループホールディングスが日本での運営権を取得した。ミツウロコは10年間で150店を出す計画を立てている。
米トランプ次期大統領が労働長官に指名したのがCKEのアンドリュー・パズダーCEO(最高経営責任者)。カールスジュニアのハンバーガーはボリュームを重視し、米国で流行している健康志向のハンバーガーとは一線を画している。セクシーなビキニ姿の女性を使ったテレビCMを流し、「女性を商品化している」と批判を浴びたこともある。最低賃金の引き上げなどの労働者保護政策に反対してきた人物が労働長官になるというので話題になっている。
●「かっぱ寿司」と「ステーキ宮」が苦戦
M&Aの大攻勢によって、コロワイドの17年3月期の売上高は前期比2.7%増の2403億円、営業利益は27.6%増の87億円を見込む。しかし、純利益は34億円と67.5%減になりそうだ。日本会計基準からIFRS(国際会計基準)への変更に伴い、固定資産の減損損失9億円を計上するため最終減益となる。
外食産業の王者として君臨してきた日本マクドナルドホールディングスの16年12月期の売上高は2200億円の見込み。コロワイドはマックを抜いて業界3位に浮上する公算が高まっている。
業界地図を見ておこう。首位はゼンショーホールディングス(17年3月期の売上高は5588億円の見込み)、2位はすかいらーく(16年12月期の売上高3600億円を予定)。コロワイドは、すかいらーくの背中が見えてきた。
M&A攻勢でコロワイドは外食部門が居酒屋を上回った。13年3月期の直営店の売上比率は居酒屋が59.8%、レストラン(外食)が41.2%だった。16年9月中間期は居酒屋29.6%、外食が70.4%となった。だからといって、M&Aが果実をもたらしているわけではない。
05年に傘下に収めたステーキレストラン「ステーキ宮」のアトム(東証2部上場)は16年4~9月期の売上高が263億円、営業利益は9億円。前年同期に比べて売上高は800万円の減収、営業利益は7億円2100万円減った。
レインズインターナショナルの売上高は309億円、営業利益18億円。6億円の増収だが、営業利益は2億円のマイナス。
深刻なのは「かっぱ寿司」のカッパ・クリエイト(東証1部上場)。17年3月期第2四半期の売上高は398億円、営業利益は1億円。22億円の大幅減収で営業利益は11億円強減ったため、大幅な減益となった。
創業事業である居酒屋のコロワイドMDの売上収益は547億円、営業利益は3100万円の赤字。
居酒屋が不振のため外食事業に軸足を移したわけだが、現状を見る限り成果を挙げているとはいい難い。既存店売上高は「かっぱ寿司」が前期比8%減、「ステーキ宮」は11%減で、前年同月比で実績割れが続いている。
M&Aによる成長戦略に対する株式市場の評価は高い。とはいえ、燃えやすく冷めやすいのが株式市場の常だ。収益アップという果実を口にできなければ、評価は一転して冷めたものになる。
(文=編集部)