“アラサーの心をえぐるドラマ”として、主に女性たちの間で人気となっている『東京タラレバ娘』(日本テレビ系)。視聴率も好調で、2月22日放送の第6話まで毎回11%以上の2ケタをキープしている(ビデオリサーチ調べ/関東地区)。
東村アキコの人気漫画が原作の同ドラマに登場するのは、吉高由里子演じる脚本家の鎌田倫子、榮倉奈々演じるネイルサロンを経営する山川香、大島優子演じる居酒屋の看板娘・鳥居小雪のアラサー3人組。彼女たちは「30歳・独身・彼氏なし」という岐路に立ちながらも「キレイになったら、もっといい男が現れる!」「好きになれれば、結婚できる!!」と“タラレバ話”を肴に女同士で酒を飲む毎日を送る。
そんな3人の前に「30代はもう女の子じゃない」「そうやって一生、女同士でタラレバつまみに酒飲んでろよ」と、罵声を浴びせる謎のイケメンモデル(坂口健太郎)が登場し、アラサー女子たちは厳しい現実に直面していく……というラブコメディだ。
がんばっているはずが、なぜか行き詰まり、過去の選択を後悔ばかりしてしまうタラレバ娘。そんな彼女たちの気持ちが「わかりすぎてつらい」という共感が、このドラマのキモとなっている。では、現実のアラサー女性たちは本当に「タラレバ」を言い合いながら毎日酒を飲んでいるのか。“リアルタラレバ娘”の実態を探るべく、ドラマの登場人物と同年代の女性約30人から話を聞いた。
●「出会い系アプリに登録」「いまだに実家住まい」
初回の放送では、吉高演じる主人公・倫子が8年前にフッたドラマプロデューサー(鈴木亮平)から食事に誘われるシーンがある。魅力的に成長した相手にときめくが、すでに現在の自分は恋愛対象にすらなっていないことを思い知らされ、「あのとき、フラなければ」とショックを受けるのだ。
今回、アラサー女性たちから寄せられたなかで、もっとも多かったのが、この倫子のように過去の選択を嘆く「後悔型タラレバ」のエピソードだ。
「25歳のときに三浦翔平くん似のイケメンと付き合っていたんですけど、当時の私はかなり奔放で、彼氏がいても合コン三昧。浮気がバレたときも、私をつなぎとめるために彼が『子供つくろう』とまで言い出したくらいでした。
でも、私はまだ遊び足りなかったし、結婚願望もなかったので、面倒くさくなって別れました。30歳を目前にして遊び尽くした今は彼氏もいません……。一方、イケメンの元カレは結婚して1児のパパになってるとか。あのとき結婚していれば……なんて、今頃になって後悔しています」(29歳/独身/看護師)
「6年間付き合った彼氏と別れたのが、32歳のとき。せめて20代のうちに別れていたら、別の出会いがあって結婚していたかもな~なんて。私の人生計画ではとっくに結婚しているはずだったので、そのギャップに焦っています。出会い系アプリに登録して何人かと会ったんですが、いい出会いには恵まれていません」(33歳/独身/営業)
恋愛や結婚に関する後悔だけではなく、仕事面での「後悔型タラレバ」も多く聞かれた。
「大学で進学したのは就職率12%のドイツ語学部。勉強に没頭していたので、ほとんど就活もしませんでした。自分が好きな勉強はできたけど、なんの保証もない契約社員になっている今となっては、『就職率がいい経済学部を選べばよかった』と後悔しています。自立したバリバリのキャリアウーマンになっているはずが、いまだに実家住まいです」(30歳/独身/契約社員)
「高校生のころ、もっと勉強してちゃんと進路を考えていたら、手に職つけてバリバリ働いていたのに……。結婚も出産もして、今の自分にはそれなりに満足はしているけど、もっといろいろしておけばよかったと思うことばかりです。
●「世の中のダメ男を網羅」「ドラマはファンタジー」
過去の選択を後悔する一方、失われてしまった時間への未練を抱える「時間未練型タラレバ」のアラサー女性も少なくない。
「学生時代から20代半ばまで、ダメ男とばかり付き合っていました。借金男にDV男、浮気男にマルチビジネスに走る男……。世の中のダメ男をすべて網羅したような気がします。周囲からは『別れたほうがいい』と止められるのですが、1人になるのが嫌で、いつも最悪の状態になるまで別れませんでした。
今は優しい夫と結婚して子供にも恵まれて平和に暮らしていますが、いろいろなことが体験できたはずの20代前半をダメ男に振り回されなければ、もっと楽しい人生になったんだろうな、と後悔しています」(31歳/既婚/パート)
「大学時代に留年しまくって、卒業まで8年間もかかりました。ちゃんと大学で勉強して、就活をして、正社員になっていれば、安定した収入を確保して将来を見通せたのかな、なんて。思い描いていた私の31歳は、愛する旦那様と子供2人に囲まれ、『そろそろ社会復帰しようかな~』とか言ってる主婦だったはず。理想と現実のギャップを感じています。とりあえず、今は正社員になりたい……」(独身/31歳/派遣社員)
恋愛も仕事も、自分から行動を起こさなければ時間だけが過ぎてしまい、思い描いたようにならないのは当然のこと。その点、ドラマの主人公である倫子は、憧れだった脚本家になれた分、まだ勝ち組のようにも見える。
実際、今回話を聞いた現実のタラレバ娘からは、「(ドラマのなかの)彼女たちはお金に困っていないし、人気イケメンモデルとセックスするなんてあり得ない展開もある。
●集合すら億劫で1人酒…6時間“スカイプ飲み”
ドラマでは、昔はおしゃれなバルで女子会をしていたのに、今では手っ取り早く酔うために、大島演じる小雪の父親の大衆居酒屋に3人が集まり、酔っ払ってタラレバを言い合うのが常態化している。
ほかの2人に仕事のグチを聞いてもらいたいときは「第1出動」、恋愛がらみの相談は「第4出動」と呼んで連絡するなど、とにかく何かにつけて集合するのだ。では、現実のタラレバ娘の女子会事情はどうなのか。
「昔は、友達と飲むときはかわいい系の、いかにも女子会っぽいお店を探して予約していましたが、20代後半からはサイゼリヤでの女子会もザラ。昔はファミレスでお酒を飲むなんてあり得ないと思っていたけど、今では1人でも唐揚げとビールを普通に頼めるようになりました」(31歳/独身/営業)
「以前は、『外で飲むと高くつくなぁ』って思いながらも、女友達と集まっていたんです。でも、家が離れている友達となら、自宅で無料オンライン通話ができる『スカイプ』で会話しながら飲むほうがコスパ的にいいと気づき、最近も6時間“スカイプ飲み”しました」(30歳/独身/アパレル)
「20代前半は、渋谷、新宿、六本木、銀座などの繁華街で飲んでいましたが、今は人混みに行くのも怖い(笑)。1人では飲まないけど、地元の居酒屋で女友達と飲むのが通例になった」(28歳/独身/保険営業)
ほかにも「彼氏と別れてから、1人飲みができるようになった。最近は誰かと連絡を取って集まるのも面倒」(33歳/独身/営業)など、1人酒への抵抗感が少なくなった独身アラサー女性も多いようだ。
最後に、タラレバ話を肴に1人酒を飲むアラサー女性に「現状を変える努力をしているのか」を聞いてみると、「何もしてないからタラレバ言っているんですよ(笑)。ドラマの3人のほうががんばっていると思う」という答えが返ってきた。
アラサー女性に限らず、人生に「タラレバ」はつきもの。
(文=真島加代/清談社)