「(東日本大震災は)まだ東北で、あっちのほうだったからよかった」――。
この発言で、自民党の今村雅弘氏が復興大臣を辞任した。
今村氏は4日の記者会見でも、東京電力福島第1原子力発電所事故に伴う自主避難者について「本人の責任」と発言した上、質問した記者に「出て行きなさい」「うるさい」と激高するなどして、批判が集まっていた。
度重なる失言に、安倍晋三首相も「被災地のみなさまのお気持ちを傷つける、きわめて不適切な発言がありました」「内閣総理大臣として、あらためて被災地のみなさまに深くお詫びを申し上げたいと思います」と謝罪、後任には自民党の吉野正芳氏が就任した。
復興相、さらには福島原発事故再生総括担当を兼任していながら、被災地および被災者に対して無神経な発言を繰り返す姿勢は言語道断だが、政治家に失言はつきものだ。
たとえば、原発関連で思い返されるのは、2014年の石原伸晃環境大臣の「最後は金目でしょ」発言だ。
石原氏は同年6月、福島第1原発事故で発生した除染廃棄物を保管する国の中間貯蔵施設建設について、「最後は金目でしょ」と記者団に対して語った。建設候補地との交渉を交付金などの金銭で解決するような姿勢に批判が集まり、後日、建設候補地の福島県大熊町と双葉町の町長および福島県知事の佐藤雄平氏に謝罪した。
東日本大震災関連では、東京都知事時代の石原慎太郎氏も、発生直後に「(津波は)やっぱり天罰だと思う」と発言して謝罪したことがある。しかしながら、その後行われた都知事選挙(11年4月10日)では大差で4選を果たした。
●石原慎太郎、北朝鮮や水俣病患者にも過激発言
慎太郎氏は、ほかにも問題視されるべき発言を残している。今、緊迫化している北朝鮮については、以下のようなものだ。
「私は半分以上本気で北朝鮮のミサイルが1発落ちてくれたらいいと思う」(「週刊ポスト」<小学館/00年12月29日号>)
「僕が総理大臣なら、実は百人近くもいるという拉致された日本人をとり戻すためになら北朝鮮と戦争をおっぱじめるよ」(「週刊文春」<文藝春秋/02年9月6日号>)
「(北朝鮮と)日本は堂々と戦争したっていい」(『サンデープロジェクト』<テレビ朝日系/02年11月10日>)
差別的な発言にも事欠かない。
さらに、環境庁長官時代の77年には、水俣病患者の施設を視察後に「これ(患者から渡された抗議文)を書いたのはIQが低い人たちでしょう」「補償金が目当ての“偽”患者もいる」と言い放ち、後に患者らの前で土下座して事を収めた。
●小泉進次郎が見せた「失言しない強み」
「2007年、柳澤伯夫厚生労働大臣の『女性は産む機械』発言も大きく物議を醸しました。講演で少子化対策について『15~50歳の女性の数は決まっている。産む機械、装置の数は決まっているから、あとは1人頭でがんばってもらうしかない』などと語ったものですが、批判を浴びたものの、結局辞任には至りませんでした。ちなみに、柳澤氏は今村氏と同じ東京大学法学部出身です。
慎太郎氏の場合は歯に衣着せぬ発言が持ち味となっている感がありますが、政治家は言葉尻をとらえて攻撃されるのが常のため、失言は命取りになります。しかしながら、脇が甘い議員が多く、失言による失脚は後を絶ちません。
そういう意味でスキがないのが、小泉進次郎です。以前、衆議院選挙で圧倒的な強さで当選したときのこと。民放の選挙特番に出演した際、MCの上田晋也(くりぃむしちゅー)から再三『どうでしょう、次の(自民党)総裁選に出てみては?』などと煽られたのですが、『政治家というのはひとつの発言が命取りになりますので……』とまったく動じずにうまくかわしました。そうしたスキルも、政治家に必要な素養のひとつといえるでしょう」(全国紙記者)
今村氏の辞任について、今後は安倍首相の任命責任も争点になることが予想され、まだまだ尾を引きそうだ。
(文=編集部)