今クールの連続テレビドラマ『あなたのことはそれほど』(TBS系)第3話が2日、放送された。

 眼科クリニックで医療事務として働く美都(波瑠)は、不倫関係にある有島光軌(鈴木伸之)と温泉旅行に行くも、その夜、有島は妻に子どもが産まれたため一人で帰ってしまう。

後日、美都は有島からデートの誘いを受けるも、有島との関係を断ち切ろうと誘いを断り、夫である渡辺涼太(東出昌大)を大切にしようと心に決め、涼太の会社の同僚で友人の小田原真吾(山崎育三郎)を自宅に招き食事を振る舞いたいと提案する。

 そして食事会当日、買い出しのため家を出ようとする美都の元に有島から、温泉旅行で先に帰ってしまったお詫びに今からホテルでランチをしようと誘いのメッセージが来る。美都は「お詫びなら……」と自分を納得させて、その誘いに乗り、食事が終わるとそのままホテルの一室で再び有島と関係を持つ。

 気がつくと時間は16時30分――。18時30分には涼太と小田原が自宅に来てしまうため、美都は百貨店で惣菜を買い込み、あたかも自身が料理したかのようにそれをテーブルの上に並べ、事なきを得る。だが、気を緩めた美都は、有島にメッセージを送ったスマートフォンをそのままにして寝てしまい、それを見 た涼太は美都が不倫をしていることを確信するところまでが第3話で放送された。

 第2話に引き続き、今回も美都の自分勝手さが冴えわたる。

 美都は親友の飯田香子(大政絢)から、有島は妻が妊娠中に浮気で羽根を伸ばす最低の男だと諭すも、美都は「(有島のことが)まだ嫌いになれない」と吐露。「あんた、それじゃあ、動物だよ」と言う香子に対し、「動物か……。優しいから、いい人だから好きになるほうが、 心に餌? もらって、なついているみたいで、動物っぽくない?」と言い返し、香子を呆れさせる。

 有島とのホテルデートの場面では、エレベーター内で有島が「お詫び」と言って客室フロアのボタンを押し美都を誘うと、美都は心の中で「ずるいなー。ごめんも、ありがとうも言わせてくれない。
忘れるわけない、忘れられるわけないじゃん、有島くんがやっぱり世界で一番、好き」と言い、有島とベッドイン。

●復讐

 そして後日、涼太と食卓を囲む場面では、美都の自分勝手さは全開になる。ホテルデートの日に美都が有島に送った「大丈夫。なんとか間に合って 柴犬くん【筆者注:涼太のこと】も美味しそうに食べてくれた。今日はありがとう」という“柴犬呼ばわり”された涼太は、美都に「こんなに食べたら、柴犬から秋田犬になっちゃうよ」とカマをかけるが、美都は悪びれる様子もなく「秋田犬って、うどん好きなの?」と返す。そう、美都は鈍感でもあるのだ。涼太は悔しさに耐えながら、テーブルの下で拳をブルブルと震わせ強く握る。

 涼太はまるで復讐するかのごとく「みっちゃん、子ども欲しくない?」と問いかけるが、美都は「今はいらないかな、今は働きたいし」「私、子ども欲しくない」と返す。涼太が「いいよ、今はまだ」と理解を示すと、美都は強い口調でこう宣言する。

「今じゃなくて、ずっと、いらない」

 涼太は悔しさや落胆やいろんな感情を噛み殺し、歪んだ笑顔を見せながら「じゃー、2人で楽しく暮らそうね」と言葉を絞り出す。夫婦関係が破綻した瞬間だ。そう、美都は夫婦にとって大事な問題である子どもについて、夫と話し合うという選択肢すら頭に浮かばず、ただ自分の考えを夫にぶつけることしかできない。


「有島が好き」という思いで頭がいっぱいで、夫や有島の妻を傷つけていることなど想像もできず、一直線に不倫に邁進し、親友の香子に有島との温泉旅行の口裏を合わせてもらうよう頼み、香子を怒らせる。夫婦間の問題も、夫の意向などまるで存在しないかのように無視し、ただ自分の意見をぶつける。そして心の中で平然と涼太に言い放つ。「好きよ、あなたはあなたで、2番目にね」と。

 美都に悪意はない。ただ自分の欲望に真っ直ぐなだけなのだ。それゆえ、美都は自分が不倫していることが、夫や親友、母、勤務先の上司など周囲にバレバレなのにもかかわらず、それに気がつかない。

 あなたの周囲にも、こういう女性っていませんか? 清楚な顔をしながら、自分が悪いことをしている、他人を不幸にしているという感覚がなく、ただひたすら欲望に忠実な女性が。そういう女性は、次々と新しい欲望を抱き、それが肥大化してしまうため、常に現状に不満を持ち、さらに周囲から疎まれるので、絶対に幸せにはなれない。そう、絶対に。

 そして、次回放送回の予告でも匂わされていたが、ついに涼太による美都への復讐が始まりそうだ。一気に人生を転落し始める美都の“落ちっぷり”に、ぜひ期待したい。

(文=米倉奈津子/ライター)

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