女子高生が制服姿で接客する「JKビジネス」。東京都では7月から規制条例が施行されたが、業者とのイタチごっこは続いており、問題は根本的に解決していないという見方が大半だ。
そんななか、最近増加しているのが「JK売り子」だ。これは女子高生がツイッターを通じて自ら下着や靴下などを販売する行為で、表向きは「中古服の売買」ということになっている。しかし、なかには唾液や尿などを売る女子高生も存在し、かつてのブルセラショップのような状態になっているという。
また、JK売り子は基本的にインターネット上で売買を行っているが、客と会って下着を「直売り」する女子高生も存在する。実際に直売りを行っているという女子高生に話を聞き、JK売り子の現状を探った。
●10人にパンツやブラジャーを売った17歳のエリカ
JK売り子たちの多くは警戒心が強い。会って話を聞かせてもらえる女子高生を見つけるのに苦労したが、なんとか1人と会う約束を取り付けた。
約束した時間に5分ほど遅れて待ち合わせ場所に現れたエリカ(仮名)は、都内の通信制の学校に通う高校3年生の17歳。少し茶色がかったロングヘアの美少女で、背中がざっくりと開いている白のトップスにジーンズというシンプルなファッションは、まさに「どこにでもいそうな女子高生」だ。
彼女がJK売り子として下着を売り始めたのは、高校3年生になったばかりの今年4月頃だという。
「家庭の事情で、高3から学費を自分で払うことになったんです。それで、『たくさん稼げるバイトないかなぁ』って友達に話したら、『パンツ売ればいいじゃん』って教えてくれて。
友達に教えてもらった後、試しにツイッターで「#JK売り子」と検索してみると、女子高生を名乗る書き込みが多数ヒットした。
エリカは「みんなやっているなら……」と安心し、さっそくツイッターで客を募集。約半年で10人の客にパンツ3000円、ブラジャー2000円、靴下1500円、ローファー5000円でそれぞれ売ったという。
さらに、彼女の場合、その場で脱いで下着を手渡しするプラス3000円の「生脱ぎ」、その際に自慰行為をして下着にシミをつけるプラス2000円のオプションも設定している。
「こちら側からすれば、相手がどんな人でも売れるので郵送のほうが楽。でも、実際に会わなきゃ私の下着だって信用できないって人も多いし、怖いけど確実に買ってもらえる。オプションも付けられるので、『直売り』もするようになりました」(同)
●カラオケボックスでサッとパンツを脱いで渡す
彼女が知る限り、JK売り子の客層は30~40代の男性がほとんどだが、たまに20代の学生風の男性もいるそうだ。
確かに、「どうせ買うなら、実際に会って履いているものを脱いでもらうほうがいい」というのが買う側の心理なのかもしれない。
とはいえ、女子高生が見知らぬ男性と2人きりで会うのはかなり危険だ。この直売りをするとき、男性側から“さらなる要求”はなかったのだろうか。
「直売りだけなら、駅で待ち合わせして、その場で手渡しするだけだから安全です。でも、生脱ぎは相手の車の中とかカラオケに移動するので、確かに危険かもしれない……。
変な空気になりそうなときは、「急にバイトが入っちゃったから」などと言い訳をして、すぐにその場を離れるようにしているという。
そして、売った後は客のツイッターをブロック。同じ人と二度と会わないというのが、彼女の防衛策となっているようだ。
しかし、これまでのさまざまな事件を見ると、彼女が無事でいられたのはたまたまとしか思えない。なかには、下着を売りに来た女子高生に妙な気を起こす男性客もいるだろうし、お金のために見知らぬ男性客と実際に会ってしまうような危機意識の低さにも問題がある。何かが起きてからでは遅いのだ。
●売る側の女子高生は罰せられない?
女子高生が使用済み下着を売る行為は、1990年代前半に流行した「ブルセラショップ」が始まりといわれている。当時は下着や制服、体操着などに加え、売り主である女子高生の写真やビデオまで販売されていた。
しかし、下着を売る少女たちが未成年者だったことから社会問題化する。93年には古物営業法違反容疑でブルセラショップが摘発され、各都道府県で青少年保護育成条例が改正されたため、ブームが沈静化していった経緯がある。
この青少年保護育成条例は各都道府県によって内容が異なるが、エリカが主に売っているという神奈川県の条例では第29条で以下のように定められており、違反すると30万円以下の罰金が科せられる。
「何人も、青少年から着用済み下着等(青少年が一度着用した下着又は青少年のだ液若しくはふん尿をいい、青少年がこれらに該当すると称した下着、だ液又はふん尿を含む。以下この条において同じ。)を買い受け、売却の委託を受け、又は着用済み下着等の売却の相手方を青少年に紹介してはならない」
ただし、これは青少年を保護する条例のため、罰せられるのは売った側の女子高生ではなく買った側だ。郵送でも手渡しでも罪は変わらない。
一方で、ツイッター上の書き込みによる交渉を規制するのが困難である以上、歯止めをかけるのは難しい。警察や行政がJKビジネスの規制を強化し、業者を摘発した結果、女子高生自身が売り子となって、違うかたちでJKビジネスが広がっていく……そんな皮肉な結果になってしまっているのが現状だ。
この先、より巧妙化したJK売り子が社会問題化し、大きな事件を招いてしまうことにもなりかねない。
(文=吉井福之進/清談社)