日本食の海外進出はラーメンと寿司が定番だったが、次はうどんのようだ。
英国の大衆紙のインディペンデント紙が昨年、うどんブームの兆しについて報じた。
記者は通訳から、うどんは「イギリスのハムサンドのようなもの」と説明されたという。うどんは、日本人なら誰でも食べているポピュラーな食べ物と伝えたかったのだろう。インディペンデント紙が火付け役となり、欧米でうどんブームが起きる期待が高まったのである。
トリドールホールディングスは9月14日、讃岐うどん店「丸亀製麺」の米本土初となる1号店を米ロサンゼルスにオープンした。
丸亀製麺ソーテル店は、ロサンゼルス中心部のラーメンや寿司をはじめ人気外食店舗が集中するエリアにある。米国人にUDON(うどん)が受け入れられるかどうかを知る重要な機会だ。来春までに米国西海岸に3店舗を出す。ソーテル店の成否が、目標としている「2025年までに米国で300店体制」を実現できるかどうかの試金石となる。
国内と同じオープンキッチンを採用。うどんの生地をつくったり、鮮やかな手さばきで麵を切ったりゆでたりする光景を見せてライブ感を出す。
釜揚げうどん(日本円換算の価格495円)といった定番品のほか、チキンクリームうどん(同825円)、豆腐サラダうどん(同715円)など、米国人の味覚にあったメニューを投入する。サーモンいくら丼(同539円)、まぐろアボガド丼(同429円)もそろえた。現地のファストフードと同等の手ごろな価格で、まずUDONに親しんでもらうことを狙っている。
ハワイの丸亀製麺ワイキキ店は、国内外に1000店以上ある丸亀製麺のなかで最も売り上げが多い。米国本土でも受け入れられるとみて、念願としてきた米西海岸に上陸した。
●2025年までに海外を中心に6000店体制を目指す
創業者の粟田貴也氏は1961年、神戸市生まれ。神戸市立外国語大学を中退後、学生時代の喫茶店アルバイトの経験から飲食での起業を目指す。開業資金を得るために佐川急便のセールスドライバーとなり、開業資金を貯めて85年に兵庫県加古川市に焼き鳥店「トリドール3番館」を創業した。栗田氏23歳の時だ。そして90年、トリドールコーポレーション(現トリドールホールディングス)を設立した。
2000年に新業態店「丸亀製麺加古川店」を開店したことが転機となった。香川の地元のうどん店だけが全国区の人気を誇っていた。
主力商材は280円の自家製麵うどんだが、これに出来たてのトッピングを組み合わせることで、顧客満足度の向上と客単価の引き上げを同時に実現。丸亀製麺は人気店となり、業態を焼き鳥店からうどん店に転換した。
06年に東証マザーズに上場し、08年に東証1部へ指定替えになった。今や、丸亀製麺は全国区の知名度を誇るまでに急成長を遂げた。
粟田氏が次のターゲットにしたのが海外市場だ。トリドールHDは海外事業を成長の柱に据えている。25年に世界6000店舗体制で売上高5000億円を目指す。このうち海外事業は4000店で、売り上げ2900億円としている。国内事業は丸亀製麺など既存事業が1300店・1300億円、新規事業で700店・800億円を計画している。
17年3月期の連結決算(国際会計基準)の売上高にあたる売上収益は、前期比6%増の1017億円、当期純利益は8%増の56億3100万円だった。このうち丸亀製麺の売上収益は855億円と、全社の84%を占める。
海外展開を見ておこう。12年、ハワイに海外1号店を出店したのを皮切りに、以後、中国、台湾、マレーシア、タイ、インドネシアなど東南アジアを中心に展開してきた。今年8月16日には、フィリピンの首都マニラに讃岐うどん店、丸亀製麺1号店を開設。フィリピンで飲食店を運営するB.V.キュイジーヌがフランチャイズ方式で展開し、20年までに10店舗をオープンする予定だ。
だが、海外展開の本命は欧米進出だ。ロサンゼルス1号店を足掛かりに、欧米市場への進出に本腰を入れることになる。
18年3月期の売上収益は、前期比8%増の1096億円、純利益は1.5増の57億1400万円を見込む。成長戦略と増益を好感し、株価は上昇している。10月12日に3690円と年初来の高値をつけた。
満を持して米国に上陸したUDONは、ラーメン、寿司に次ぐ日本食として市民権を得ることができるのだろうか。
(文=編集部)