ロボット掃除機、全自動洗濯乾燥機、食器洗い機が共働き家庭などで「新三種の神器」と呼ばれている。いずれも家事にかける時間を減らせる“時短家電”で、共働き世帯をターゲットにしている。



 なかでも人気なのが掃除機だ。量販店で繰り返し掃除機を盗んだ男が逮捕される事件が起きた。ブランド掃除機は「高く売れるから」だそうだ。

 掃除機といえば、これまでは吸い込み口と本体がパイプで接続されたキャニスター型が定番だったが、数年前からスティック型やハンディ型、ロボット型など、用途に応じて使い分けるスタイルが広がってきた。

 米アイロボットの「ルンバ」が、ニュータイプ掃除機のブームの口火を切った。ルンバは動き回って自動で清掃するロボット掃除機という新しいカテゴリーを生み出し、最も時短効果が高い。


 ルンバの国内累計販売台数は、2016年10月末で200万台を突破した。売れ出したのは10年以降。13年の100万台突破からわずか3年で200万台を達成した。

 アイロボットにとって日本は米国に次ぐ大市場だ。17年4月、日本にアイロボットジャパンを設立。自社製品の世帯普及率を、現在の4%程度から3~5年後に10%に引き上げる目標を掲げている。


 では、ロボット掃除機の売れ行きが伸びているのかといえば、そうでもない。ルンバなどロボット型の数量構成比は5%程度と限定的。話題性は高いが、掃除機の主流になっているわけではない。

 成長株はコンセントに差すことなく、すぐに掃除が始められるコードレス式スティック型だ。スティック型掃除機は1980年代からあったが、吸引力が弱く購入者は単身者がほとんどだった。

●火付け役はダイソン

 注目を浴び始めたのは2011年からだ。
英ダイソンが日本に「DC35」を投入すると、その画期的な掃除スタイルと吸引力の強さがたちまち話題になった。ダイソンは、ジェームス・ダイソン氏が世界で初めて紙パック不要のサイクロン掃除機を発明して、高い知名度を得た。そのダイソンのコードレス掃除機が世界を席巻した。

 アイロボットのルンバ、ダイソンのサイクロン掃除機が人気を博したことに刺激され、東芝ライフスタイル、パナソニック、日立アプライアンスはこぞってロボット掃除機と強力な吸引力を持つスティック型掃除機を開発。これにより掃除機は戦国乱世の様相を呈した。

 市場調査会社GfKジャパンのデータによれば、10年に750万台だった掃除機の販売台数は、14年には960万台まで急増した。
従来のキャニスター型に加えて、コードレスのスティック型、布団クリーナーなどのハンディ型、そしてロボット型が寄与した。

 しかし、16年には830万台と2年連続で減少した。その背景にあるのは、2台目需要が下火になってきたことだ。掃除機は毎年、買い替える製品ではない。

 この間、シェアは様変わりした。10年の数量構成比は73%がキャニスター型で、スティック型とハンディ型が各々12%、ロボット型は1%にすぎなかった。
16年にはキャニスター型が46%で6年間に27ポイント減少。ハンディ型は15%で3ポイント増。ロボット型は5%で4ポイント増。スティック型は33%で、実に21ポイントも上昇した。

 スティック型はいまや国内メーカーが次々と参入する一大ジャンルとなった。キャニスター型との差を年々縮めており、逆転するのは時間の問題だろう。


 ダイソンは、日本での掃除機市場シェアについて、今後3年のうちに金額ベースで50%を獲得すると明言している。ダイソン製掃除機の国内シェアは、16年の数量ベースで20%弱だが、コードレス掃除機に限ればすでに50%を超えているという。

 掃除機の出荷台数は、東芝ライフスタイル(16年シェア25.2%)、パナソニック(同23.5%)、日立アプライアンス(同22.9%)の3社並立状態だが、販売の現場では主役が交代した。アイロボットやダイソンが急速に存在感を増している。

 日本の掃除機の市場は、ダイソンのコードレス掃除機、アイロボットのロボット掃除機が制覇する勢いだ。国内勢は巻き返すことができるのだろうか。

●新三種の神器の最新事情

 全自動洗濯乾燥機は作業音が静かで夜中でも洗濯できる機種、食器洗い機はキッチン組み込み型が主流となっている。

 洗濯機、冷蔵庫、エアコンなど生活必需品である白物家電のシェア争いは激しい。洗濯機は日立アプライアンス(16年シェア30.7%)とパナソニック(同28.8%)、冷蔵庫はパナソニック(同22.2%)とシャープ(同20.0%)、エアコンはパナソニック(同22.4%)とダイキン工業(同18.1%)がしのぎを削る(シェアは「日経業界地図」2018年版に基づく)。

(文=編集部)