宮城県仙台市で午前0時以降に客引きをしたとして、宮城県警仙台中央署は12月1日、風営法違反容疑で「白木屋」「魚民」などを運営する外食大手、モンテローザと同社の男性社員を仙台地検に書類送検した。同署によると、いずれも「管理が不十分だった」と容疑を認めているという。
風営法は、飲食店が深夜に営業する場合には、午前0時以降の客引きを禁止している。それにもかかわらず、同社が経営する居酒屋の店員が仙台駅近くで通行人に声をかけ、客引きをしていたという。しつこい客引きを受けた男性が警察に通報して発覚したようだ。このような違法行為があった場合には、会社も処罰対象となる。飲食店の客引きをめぐり、同法違反容疑で外食大手を摘発した初のケースとみられる。
同店では、しつこく客引きしないと客を呼び込めないほど客の入りが悪かったのだろうか。またモンテローザは、客を呼び込んで業績を上げるためには、個々の店に法令遵守を徹底させるべきではないと判断していたのだろうか。その真相はわからないが、ひとつだけはっきりとしていることがある。
それは、モンテローザの業績が悪化しているということだ。同社の決算公告によると、2017年3月期の売上高は前期比27.0%減の1039億円だった。大幅な減収だ。営業損益は7億円の赤字(前年同期は37億円の黒字)、最終損益は120億円の赤字(同8億円の赤字)に陥った。
モンテローザグループの店舗数は激減している。採用サイトから確認できた総店舗数は、16年12月末時点で2119店だったが、17年4月末時点では1968店になっていた。わずか4カ月で約150店も減少しているのだ。その後の店舗数は採用サイトなどへの掲載をモンテローザが控えているため、残念ながら確認できない。
最終損益の赤字については、特別損失として59億円を計上したことが大きく影響しているが、これは店舗閉鎖に伴う費用が大半を占めていると考えられる。
モンテローザは1975年に創業した。「白木屋」「魚民」「笑笑」といった居酒屋を次々と開発し、居酒屋業界の盟主になるまで成長した。00年11月にすべての都道府県への出店を果たし、02年5月にはグループで1000店を達成している。13年5月には、飲食業界では数社しかない2000店を擁する企業にまで成長した。
ビル一棟を丸ごと借り上げて割安の家賃にして、グループの居酒屋で埋め尽くすなど、積極的に出店を重ねてきたことが功を奏した。
こうしてモンテローザは規模を拡大して業界の盟主となったが、2000店を超えたあたりから店舗数が伸び悩むようになり、業績は低迷していった。
●グループ店舗を大量閉鎖のワケ
業績が悪化し、大量閉店に追い込まれた理由は大きく2つ考えられる。
ひとつは「競争の激化」だ。日本フードサービス協会の調査によると、居酒屋業界の市場規模は92年の1兆4600億円をピークに、その後は減少の一途をたどっている。13年以降は少し持ち直したものの、1兆円をわずかに上回る水準で概ね横ばいで推移している。しぼんだパイを各社が奪い合っている状況だ。若年層の酒離れや高齢化の進展による飲酒量の減少などが背景にある。
近年、居酒屋業界以外の外食店が実施している「ちょい飲み」サービスが、居酒屋から客を奪っているという側面もあるだろう。吉野家はアルコールやつまみ類などの居酒屋メニューを夜に提供する「吉呑み」サービスを提供し好評を得ている。日高屋は「ちょい飲み日高」を標榜し、「中華そば」(390円)、「餃子」(220円)、ビール(330円)を頼んでも、1000円でお釣りがくることを売りにして人気を博している。
また、モンテローザが展開する居酒屋の魅力が相対的に下がっていることも影響していると考えられる。
模倣は決して悪いことではない。魅力的な選択肢が増えることになるので、消費者にとっては不都合ではないからだ。そのため、初期の頃であれば模倣は成長の原動力となり得る。しかし、市場が成熟し似たような業態が乱立するようになってしまうと、単なる二番煎じでは立ち行かなくなってしまう。その段階で“本家”に勝ることができれば問題ないが、モンテローザの場合は二番煎じの状態に甘んじている感が否めない。消費者の嗜好が多様化していることもあり、モンテローザの各店舗が飽きられているのではないだろうか。
大量閉店に追い込まれた2つ目の理由は、「人手不足」だろう。飲食業界における人手不足は深刻化しているが、モンテローザは2000店を超える店舗を抱えていたこともあり、人手不足の問題はより深刻だったはずだ。人手が足りないため、店舗を集約するかたちで店舗を閉鎖していったと考えられる。
モンテローザの業績は急激に悪化している。そのため、これまでの施策が通用しなくなってきており、新たな成長戦略を描く必要に迫られている。これまでにない居酒屋、もしくは単なる模倣で終わらない、「本家を超える業態」を開発する必要があるのではないだろうか。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)