夏が到来すれば、おのずと活用頻度が高くなるのがエアコンだ。しかし、自信を持って冷房を正しく活用できていると明言できる方は、少ないのではないだろうか。



 たとえば節電の方法。東日本大震災による節電ムードから一時期はこまめにオン・オフすることが推奨されていたが、その一方で、逆に24時間つけっぱなしのほうが結果的に節電になる、という意見もある。一体どちらが正しいのだろうか。

 また、体質的に冷房に弱いが、あまりの暑さに使わざるを得ないというジレンマを抱えている方や、あまりの寝苦しさに冷房をつけて寝たら翌日体調を崩した経験を持つ方も多いかもしれない。

 そこで今回、世界的な空調機のメーカーであるダイキン工業に、お財布と身体に優しい賢い冷房の活用方法を聞いた。

●「日中はつけっぱなし」「夜間はこまめにオン・オフ」こそが最適解

 結局のところ、冷房は「つけっぱなし」と「こまめにオン・オフ」のどちらのほうが消費電力が少なく、電気代が安く済むのだろうか。

「当社では2016年8月5日に26度の設定温度のもと、24時間冷房をつけっぱなしにした場合と、30分毎にオン・オフを繰り返した場合とで消費電力を比較する実証実験を行いました。もちろん家の気密性や日当たりの状況、エアコンの機種などによって条件が変わってくるので一概には言えませんが、実験からは『9:00~18:00の日中は30分程度の外出であればつけっぱなしのほうがお得、18:00~23:00の夜間はこまめにオン・オフを行ったほうがお得』という結果が出ております」(ダイキン広報担当者)

 最適解は、時間帯によって適宜使い分けていくのがベストということか。ちなみに、なぜ日中と夜間で違いが出るのだろうか。

「近年の一般的なエアコンは、電源をオンにした直後はフルパワー運転で一気に部屋を冷やし、その後は省エネ運転にシフトして室温を維持する仕組みになっており、フルパワー運転のときにもっとも電力を使います。外が暑い日中にこまめなオン・オフを行うと、毎回電源をオフにした瞬間から部屋の温度は上がってしまうため、何度もフルパワー運転をすることとなり、結果つけっぱなしのときより消費電力が大きくなってしまいます。反対に夜間は外も涼しいため、こまめにオン・オフしたところでフルパワー運転の負荷もほとんどかからず、結果つけっぱなしのときよりも消費電力は少なくなるというわけです」(同)

 つまり節電するうえで重要なのは、温度を下げるためのフルパワー運転をいかに少なくできるか、ということのようだ。


●体感温度を下げ、熱帯夜を快適に過ごすためのポイントは「湿度」

 また、身体に優しく冷房を使うためのポイントも聞いた。
 
「温度の調節も大事ですが、温度を下げ過ぎればそれだけ体調を崩すリスクも高まります。そこで注目していただきたいのが、湿度を調節することで体感温度を下げることです。ただでさえ日本の夏は高温多湿な気候なうえ、梅雨ともなると湿度は80~90%にもなるため、実際の気温以上に蒸し暑く感じられるでしょう。ですから、エアコンの除湿機能などを活用して湿度を調節すれば、冷房の設定温度を下げずとも涼しく感じられるのです。

 また、湿度の調節は熱帯夜を乗り越えるのにも効果的です。人間は入眠時に寝汗をかいて体温を下げるのですが、熱帯夜の寝苦しさはこの寝汗をスムーズに除去して体温を下げられないことに起因します。なので除湿によって寝汗が乾きやすい状態にしておけば、熱帯夜であっても快眠ができるようになります。

 もちろん除湿のしすぎも体にはよくないので、50~60%くらいを目安にして湿度を調節していただければ、冷房の設定温度を下げ過ぎることなく快適に過ごすことが可能となります」(同)

 また、エアコンのプチトラブルといえば、暑がりの人と寒がりの人によるリモコンの奪い合い。特にオフィスなどではそれがもととなり、男性社員と女性社員の対立が生まれるといったケースもあるが、何かうまい解決法はないのだろうか。

「一般的には寒がりの方がひざかけやカーディガンを用意するような対策が多いかと思いますが、暑がりの方は風を利用してみてはいかがでしょうか。先ほど湿度を調節して体感温度を下げる方法をご紹介しましたが、風にあたることでも体感温度は下げられます。
小型の扇風機やサーキュレーター(送風機)を個別で用意するだけでも、冷房の温度を下げることなく充分涼しくなることは可能でしょう。とある企業では、真夏の外回りで火照った社員のために、冷房が強く効いた小部屋を用意することを検討していたそうなのですが、このようにクールダウンするためのスペースを用意するというのも有効だと思います」(同)

●効率よく冷房を活用し、賢く涼しくなるために知っておくべきこと

 そのほかにも賢く冷房を使っていくうえで意識するべきことや、押さえておくとよい点について聞いた。

「まず、エアコンのフィルター掃除をこまめに行うことが挙げられます。ユーザーの方にとっては手間に感じられるかもしれませんが、どうしても埃が溜まってしまえば性能は落ち、消費電力も大きくなってしまいます。それこそ部屋の掃除のついでに掃除機で吸う程度でも大きく違ってくるため、心がけていただけると幸いです。

 また、風の流れをうまく使うことも重要となってきます。空気の性質として冷たい空気は下に溜まってしまうので、風通しのよくない部屋では足ばかり冷えてしまうことがあります。ほかにもL字型の部屋のように、どうしても冷房の風が全体に行き届きにくい部屋もあるので、そういったときは扇風機やサーキュレーター、空気清浄機などの空気を動かす機械を併用してください。そうして部屋全体に冷気を循環させられれば、設定温度はそのままでもバランスよく部屋を冷やすことができます。

 ほかにもカーテンなどで太陽光の侵入を防げば、部屋が必要以上に暑くならないので充分に節電効果がありますし、先ほども申し上げた通り風が当たることで体感温度が下がるので、風が心地よい日には冷房を使わず窓を開けておくだけでも涼しく感じられるでしょう。

 節電ばかり気にして熱中症になってしまっては元も子もないですし、逆にガンガン冷房を効かせるのも身体にはよくありません。節電と快適性のバランスをとっていくうえでは、やはり身体と相談しながら無理せず上手に活用することが大事です」(同)

 電気のコストパフォーマンスを上げるため、自身の仕事のコストパフォーマンスを上げるため、ぜひ今回紹介したような冷房の賢い使い方を身につけたいものである。

(文・取材=A4studio)

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