全国的に猛暑が続き、23日には埼玉県熊谷で日本歴代最高となる41.1℃の暑さを記録。熱中症による救急搬送の数も全国で増加し、死亡事故も発生している。

日本政府は2013年から7月を「熱中症予防強化月間」と定めており、うだるような暑さは長く続きそうだ。異常ともいえる暑さに対し、インターネット上では「昔と比べて、今の日本の夏ははるかに暑いのでは?」という説が話題を呼んでいる。

 発端となったのは、あるTwitterユーザーが14日に投稿した「60歳の人が『オレん時はエアコンなしで受験勉強したんだ、今の若いモンは!』と言ったとして、42年前(1976年の7月・8月)の東京の気温を調べたらこんなに快適だったのかと驚いた」というツイート。過去50年分の天気データを記録する「goo天気」の気象情報ページも添付されており、1976年7月の記録を見ると最高気温はすべて34度以下となっていた。

「1976年は冷夏だったから、比較対象に選ぶのはおかしい」という指摘の声も上がっているが、1976年前後の気温記録を見てみると、前年の1975年は34℃に到達したのはわずか1日。1977年に至っては1976年同様、すべて34℃を下回っている。

 こうした気温上昇のデータを見て、ネット上では「確かに昔の暑さは扇風機さえあれば凌げた記憶があるな」「これだけ熱くなってるのに『クーラーを使うのは甘え』とか言ってくる世代を見ると腹が立つわ」「エアコンやアスファルト、高層ビルが増えたのも気温上昇と関係があるのかもね」といった声が上がっている。

 今年2月に環境省、文部科学省、農林水産省、国土交通省、気象庁が合同で公表した「気候変動の観測・予測・影響評価に関する統合レポート2018 ~日本の気候変動とその影響~」によると、日本の気温が急速に上昇し始めたのは1980年代後半から。

 レポート内では、30年間に1回程度の出現率でしか起こらない高温をさらに超えた「異常高温」についても注目している。発生が非常にレアケースとなる異常高温だが、1980年代後半から出現率が増加して1990年代には1年のうちに3回も発生した年が見られた。気温上昇の原因に関しては、「温室効果ガスの増加」と数年~数十年スパンで繰り返される「自然変動」が重なったためと考えられている。気温上昇は世界的な傾向だが、気温上昇率が比較的大きい北半球の中緯度に位置する日本はより影響を受けやすいという。


●30℃以上となる時間数が2倍に

 そこで気象情報提供会社ウェザーマップの気象予報士、桐谷景子氏に話を聞いた。

――現在の日本の夏期は40~50年ほど前と比較して暑くなっているというのは、事実なのでしょうか。また、その原因はなんでしょうか。

桐谷氏 事実です。地球温暖化が主な原因だと考えられますが、東京など大都市は、ヒートアイランド現象による気温上昇も加わっていると思われます。50年前に比べて、大都市圏では、緑地が減って、熱を溜めやすいアスファルトやコンクリートが増えたこと、建物や工場、自動車などの排熱が増えたこと、密集した建物によって、相対的に涼しい海風が内陸にまで届かなくなったこと、ビルが増えたことによって、空に逃げる熱量が減ったことなどが挙げられます。

――具体的に、どれくらい暑くなっているのでしょうか。

桐谷氏 世界の平均気温は、ここ100 年で約0.69℃上昇していますが、東京や名古屋など、日本の大都市の平均気温はこの100 年あたりで3.0℃上昇しており、世界平均を大きく上回っています。最高気温より最低気温のほうが顕著ですが、1990年代以降、高温となる年が頻出しています。東京周辺で30℃以上となる時間数は、1980 年代前半には年間200 時間程度でしたが、2000年に入ると約2倍になり、その範囲も郊外へ広がっています。

――将来的なトレンドとして、ますます暑くなっていくと推察されるのでしょうか。

桐谷氏 地球環境は、太陽活動や火山の噴火などとも関連があるため、年による変化は大きいと考えられます。
ただ、長期的に見て、何も対策をしなければ、地球温暖化やヒートアイランド現象がさらに進むことが予想されます。

 気温が上がり続けると、局地的大雨の頻発、熱中症患者数の増加、夜間も30度以上の高温が続く、いわゆるスーパー熱帯夜の増加、台風の強大化、生態系の変化の可能性などがあり、日常生活への影響は計りしれません。

――今年の夏、現在の暑さはいつ頃まで続くと予想されるのでしょうか?

桐谷氏 今年は、7月中旬から40℃以上を観測したり、全国の2割以上の地点で35℃以上の猛暑日となるなど、早い時期から猛烈な暑さになっていて、すでにうんざりしている方も多いと思います。先日(19日)気象庁から発表された最新の1カ月予報によると、沖縄・奄美を除き、8月中旬にかけては、晴れて気温が平年より高い予想となっています。特に、8月のはじめにかけては、東・西日本でこの猛烈な暑さが続く恐れがあります。8月中旬になると、平年並みか高いくらいになりますが、今の猛烈な暑さよりワンランク下がるくらいで、夏の厳しい暑さが続く事に変わりありません。また、8月下旬から9月上旬に、再び暑さのピークがやってくると予測するデータもあって、今年は残暑も厳しくなりそうです。
(文=編集部、協力=桐谷景子/ウェザーマップ所属気象予報士)

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