今クールの連続テレビドラマ『大恋愛~僕を忘れる君と』(TBS系)の第1話が12日、放送された。

 医師の北澤尚(戸田恵梨香)はお見合いで知り合った医師の井原侑市(松岡昌宏)との結婚を控え、ある日、新婚生活を始める新居への引越し作業をしていた。

無愛想なアルバイト作業員の間宮真司(ムロツヨシ)が段ボールから出した書籍を本棚に並べていると、尚はある小説を手に取り、その小説家のファンだと話す。実は真司は過去に権威ある文学賞を取った元小説家で、今は小説家から足を洗いアルバイト生活を送っていたのだが、尚は真司がその小説の著者であるとは気が付かない。

 後日、真司が尚の家に引越しに使った段ボールを回収しに行くと、天井からの雨漏りで困惑していた尚から助けを求められる。上の階の部屋の水道管故障が原因だと考えた真司は、尚を連れてその部屋へ行き、早く修理しないと多額の賠償金を払う羽目になると説得。真司のおかげで難を逃れた尚は、真司に御礼としてお金を渡そうとするが、真司は拒否。すると尚は真司を食事に誘い、その日の夜、さっそく2人は食事に行く。

 一緒に入った安い居酒屋で、真司は声が聞こえない男性店長と女性店員のやりとりに即興でセリフを当て会話劇を披露し、尚を喜ばせる。そんな真司に心が惹かれた尚は、再び真司を食事に誘うが、デート当日、尚がいくら待っても真司は現れない。そして店を出ると、なぜか店の外には真司が突っ立ている。そして2人は神社のベンチでおしゃべりをしながら、朝を迎える。

 後日、一日の仕事を終えて真司が会社で同僚たちとおしゃべりをしていると、なんと会社の入口の前には、真司の帰りを待っている尚の姿が――。尚は真司を先日と同じ居酒屋へ食事に誘い、食事を終えた2人は真司の家に行き、尚は強引にキスを迫り、2人は結ばれる。
ついに尚はアメリカで勤務する侑市に電話をかけて婚約を破棄したいと告げるが、驚いた侑市はすぐに帰国するから直接会って話をしたいと言う。

 それでも真司に会うことをやめられない尚は、スーパーで食材を買い込み真司の家へ急ぐが、歩行中に自転車と衝突して救急車で病院に運ばれる。検査の結果、問題ないことがわかり医師から帰宅が許されるが、駆けつけていた母の薫(草刈民代)を置いて、尚は真司に会うため走って病院を出ていってしまう。すると、入れ違いでその病院に侑市が入っていく。その病院は、これから侑市が准教授として勤務する病院だったのだ。

 そのまま侑市は同期の医師へ挨拶をするために医師ルームに行くと、その医師はついさっき診察した尚の脳のMRIを見ていた。何気なくMRIを見た侑市は、MCI(軽度認知障害)の疑いがあると言い、画像に書かれた「キタザワ ナオ 34歳」という文字に驚くところまでが放送された。

●タダモノではない女優・戸田恵梨香

 淡々と静かに物語は進み、これといって派手に盛り上がるシーンはないが、タイトルに表れているように、まさに本格恋愛ドラマという感じで、視聴者の好みは分かれるだろうが、個人的には嫌いではない部類のドラマだ。変に盛り上げようと“つくられたシーン”もなく、会話もそれなりにじんわりと心に染みてくるものがあり、尚と真司が徐々に恋に落ちるプロセスを描写する2人のやりとりも興味深く、何より落ち着いて見られるのが良い。秋の季節、疲れた金曜の夜に見るには最適だろう。「久しぶりに、こんな“しっぽりとした気分”にさせてくれるドラマ、見たかったなあ」と思わせてくれる作品だ。

 特段に欠点は見当たらないが、ドラマを見ていて少し驚いたのが、尚と真司のキスシーンだ。
初めて真司の部屋に来た尚は、半ば強引に真司に迫りキスをするのだが、よくドラマで見られるような“チョン”というかたちだけのキスではなく、かなり長い間、尚がリードするかたちで2人とも口を“モグモグ“させながらディープキスを展開。ちょっと波紋を呼んでしまいそうなほどリアルな演技につい見入ってしまった。

 しかもその後、尚が笑顔で「あっちへ行こう」と言って真司をベッドに誘い、そのまま翌朝2人でベッドで寝る画面が映し出されるのだが、ベッドシーンといえばその前にも侑市とのシーンが見られ、今回のドラマ、体当たりなシーンが目立つ戸田の覚悟が垣間見られるのも好印象である。

 戸田といえば、今回のような美人でキュートな役だけではなく、『SPEC』(TBS系)では人格破綻気味な女刑事を演じコメディアンヌとしての才能をいかんなく発揮し、『コード・ブルー』(フジテレビ系)では“キツイ性格”の医師を演じるなど、まったくタイプの異なる役柄でもしっかりハマるカメレオン女優ぶりに定評があるが、やはり戸田、タダモノではない。

 そんな同ドラマだが、前述のとおり、どちらかといえば地味なつくりになっているため、視聴率的にはちょっと微妙かもしれないが、じわじわと視聴者を増やすことができれば、ひょっとするかもしれない。
(文=米倉奈津子/ライター)

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