元国税局職員、さんきゅう倉田です。好きな社長は「ももたろ社長」です。



 今年は、ZOZOの前澤友作社長に関するニュースをよく耳にします。恋人や買い物、月旅行、スタートトゥデイからの社名変更など、話題に事欠きません。メディアもこぞって同氏に関する情報を報道しています。そういった報道に、個人的には興味を持ちませんが、前澤氏がTwitterに投稿した、以下のツイートには興味津々です。

「2016年度77億円、2017年度34億円、2018年度70億円(予定)。個人での国内における所得税や住民税などの納税額です。買い物もするけど、税金もしっかり納めております。これからももっと稼いでいっぱい買い物して、いっぱい納税します!」

 ついつい、年収がいくらなのか計算してしまいます。前澤氏の収入の主たるものは、なんなのか。おそらく、保有する株式の配当と株式の売却益です。お金持ちの社長といえば、その2つが一般的で、役員報酬はそれらと比べると少ないものです。

 ツイートの「2018年度70億円(予定)」というのはどういうことかというと、おそらくですが、2018年分のことをおっしゃっていると推察されます。
ZOZOは3月決算なので、それと誤認しているのか、前澤氏の個人所得は12月決算なので、「年度」という表記では正確に対応できません。

 2018年の1月から12月の収入と所得から所得税が計算されるので、今年の分は来年3月に税額が確定します。では、なぜ「(予定)」として金額がわかるかというと、税金には「予定納税」という制度があり、前年の所得によって7月と11月に所得税を予め納めます。本来であれば、翌年3月15日に納めるところ、一括で納めるのは難しいという方が多いため、事前に3分の1相当の金額が通知され、納めることとなります。だから、なんとなく2018年分の所得税を計算できるわけです。

 さらに、役員報酬の金額は1年間変わりませんし(そういうルールがあります)、配当の金額も、年内に売却予定の株数もわかっているのでしょう。予定納税がなくとも、概算で納税額を計算することができます。

 すでに納めた過去の分だけではなく、進行期の分もツイートしたのは、何か意図があるのかもしれません。ある程度は想像できますが、ぼくは勝手に他人の気持ちを、それも自分より圧倒的に成功している賢い方の気持ちを、本人のいないところで言うような無粋なことはしません。ただ、2016年から2017年は納税額が下がっていますので、2018年分も載せたほうが見栄えは良いと思います。

●年収は総額約140億円?

 ZOZOの役員報酬は、7人で2億3000万円なので、前澤氏の役員報酬は1億円程度あるいは、それ以下と考えられます。ZOZO以外に複数の法人の役員であれば、もっと多いかもしれません。


 ZOZOは3月決算なので概算ですが、年間の配当が36円(予定)、前澤氏の持株数が1億1822万6600株なので、配当金は42億円となります。前年の株数は1億2141万7800株で、1年間の株の売却数は319万1200株。これは、ZOZOの有価証券報告書を参考にしているので、決算期の関係でズレがあります。

 正確な株の売却金額はわかりませんが、現在の株価から3000円ほどとすると、およそ96億円の売却益を得ていると考えられます。

 一般的な計算であれば、所得税と住民税を合わせた税率は20.315%で、税額は28億円となりますが、前澤氏は「一定の大口株主」に該当し、総合課税の対象となります。配当や株の譲渡所得は、お金持ちに有利な一律22%の税率が適用されますが、総合課税になると所得税45%+住民税10%の55%となります。お金持ちが「収入の半分が税金で持ってかれる」と言うのは、ここから来ています。

 前澤氏の配当所得と譲渡所得の納税額は76億円(予定)となります。仮に、役員報酬が1億円あっても、その分の納税額は誤差の範囲でしょう。前澤さんがツイートされた「2018年度70億円(予定)」に近似します。ツイートや有価証券報告書、地位を考慮すると、納税額の基となる収入の内訳は上記のようになるのではないでしょうか。
(文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人)

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