新年を迎えたこの時期に心配なのがハメを外して悪酔いしてしまったり、翌日に影響が出るほどの二日酔いになってしまったりすることだろう。

 そこで、悪酔い・二日酔いを防ぐための対処法を、漢方や健康相談の専門店「さわたや薬局」店主で健康管理士の早川弘太氏に聞いた。



――そもそもお酒を飲んで酔っぱらってしまうのは、なぜですか。

早川 アルコールを過度に摂取することにより、肝臓で分解すべきアセトアルデヒドを分解しきれなくなります。そして、そのアセトアルデヒドが血液中に残ってしまうと、嘔吐や頭痛といった体調不良につながるのです。

――「安い酒だと悪酔いしやすい」という噂は、本当でしょうか。

早川 安価なお酒のすべてが悪酔いしやすいというわけではありませんが、高価なお酒より酔いやすいという傾向はあるかもしれません。安価なお酒はどうしても製造する過程でコストダウンを図ることもあり、高価なお酒よりも不純物が残りやすくなるでしょう。そういった不純物の入ったお酒は、肝臓でアルコールを代謝するのが遅くなり、悪酔いする原因ともなるアセトアルデヒドが発生しやすくなるのかもしれません。

――醸造酒と蒸留酒で、酔いやすさの違いはありますか。

早川 醸造酒(ビール、ワイン、日本酒など)と蒸留酒(ウイスキー、ブランデー、ウォッカ、テキーラ、焼酎など)は、どちらが酔いやすいというのはないと思います。ただ、蒸留酒のほうがアルコール度数高めなので、酔いやすいイメージはあるかもしれません。

 しかし、醸造酒にしろ蒸留酒にしろ、結局のところはアルコールをどれだけ摂取しているかが酔いやすさに関係してくるのです。ですから、蒸留酒をロックやストレートで飲めば当然アルコール摂取量は増えがちですが、水割りやソーダ割りなどで割って飲むのなら、醸造酒よりも酔いにくくできるでしょう。
醸造酒はあまり割って飲むという飲み方がないため、そういう意味では蒸留酒のほうがアルコール量を調整しやすく、醸造酒よりも蒸留酒のほうがアルコール総量を抑えることができるでしょう。

 また、アルコール成分を早く体の外に出すには、適量の水を摂取すると良いとも言われていますので、蒸留酒を水割りで飲めばアルコールを体の外に排出しやすくなります。ですから、多めの水で割ってアルコール量を抑えた蒸留酒を飲むようにすると、悪酔い・二日酔いしにくくなるでしょう

――「ちゃんぽんで飲むと酔いやすい」といわれていますね。

早川 ビールやワインや焼酎やウイスキーなど、1日に何種類ものお酒を代わる代わる飲むちゃんぽんが酔いやすいというのは、実は科学的根拠はないんです。ただ、完全にウソとも言いきれず、半分本当で半分ウソといったところでしょうか。

 まず、違うお酒のアルコールを何種類も摂取すると、体の中でなんらかの反応が起こって、それが悪酔いの原因と考えている方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。これは私の推論ですが、違う種類のお酒を代わる代わる飲んでいくと、どれぐらいのアルコールを摂取しているかが自分でわかりづらくなり、それで知らず知らずたくさん飲んでしまうということが、あるのではないでしょうか。

 たとえば、ビールだけ飲んでいれば、「ジョッキ○杯飲んだから、もうそろそろやめておいたほうがいいな」といった具合に自己管理しやすいもの。ですが、ビールを飲んで焼酎を飲んでワインを飲んで――としていると、目安が曖昧になり、どれだけアルコールを摂取しているのかわからなくなってしまうかもしれません。

 また、同じお酒をずっと飲んでいると、飽きてきてペースが落ちるかもしれませんが、途中で種類を変えると飲み口も変わるため、再びグイグイとペースアップしてしまうということもあるでしょう。となると、同じ種類だけ飲むよりもちゃんぽんのほうがアルコールの総量が多くなってしまうというケースもありそうです。

 つまり、お酒の総量を自分でコントロールできるのであれば、ちゃんぽんで飲んでも大丈夫ですが、自己管理に自信がない方は、ちゃんぽんを控えたほうがいいのではないでしょうか。


――根本的に悪酔い・二日酔いしないための対策はありますか。

早川 基本的なことですが、空腹状態でいきなりお酒を飲むと、空っぽの胃の中にお酒が流れ込み、アルコールが腸から吸収されてしまい、結果的にアルコールの吸収が早まってしまうものです。ですから、手軽に食べられる枝豆、ナッツ、チーズのような軽食でもいいので、お酒を飲む前に食べておくとアルコールの吸収を遅らせることができるでしょう。

 また、こちらも基本的なことではありますが、お酒を飲んでいる途中途中に水を飲むのも、酔いにくくするとても良い方法です。たとえば、特に利尿作用が強いといわれているビールの場合、ビールを1リットル飲むと1.5リットルぐらいが尿(水分)として出ていくこともあり、アルコールだけ飲んでいると脱水症状になってしまうこともあります。

 ですから、できれば飲んでいる途中、アルコールを飲んだ量の1.5倍ぐらいの水を飲んでいただくと、普段よりかなり酔いにくくなると思います。お酒を連続で飲むのではなく、お酒を1杯飲んだら水やお茶といったノンアルコールの飲料を挟むようにすると、悪酔いや二日酔いをしにくくなるでしょう。

 年始は連日お酒を飲むことがある方こそ、ぜひとも覚えて、実践していただきたい。
(文・取材=後藤拓也、昌谷大介/A4studio)

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