国会議員秘書歴20年以上の神澤志万です。

 1月28日、第198回国会が開会しました。

会期は6月26日までの150日間を予定しています。今回は年明けから浮上した厚生労働省の統計問題に注目が集まったことで「統計国会」とも揶揄され、早くも与野党の攻防が始まっています。

 今年は皇位継承や参議院議員選挙などの大きな政治イベントが相次ぐので、政府・与党は提出法案を絞ったようですが、安倍晋三首相の施政方針演説も特筆するような内容はなく、そのため統計問題がクローズアップされてしまったようです。野党(特に立憲民主党)の追及への対応次第では、開会早々に国会が止まる事態にもなりかねない雰囲気です。

●平成最後の国会開会式に予約殺到

 平成最後の通常国会ということもあり、今年の開会式には「天皇陛下をお迎えする式をぜひ参観したい」という方がとても多かったです。陛下は、この開会式をとても大切にされてきました。前立腺がんの手術後に一度だけ皇太子殿下に「お言葉」の代読をお願いされた以外は、憲法を尊重して必ず開会式にお越しくださっています。今回も、定例の健康診断の検査の予定をずらしてのご来臨と報道されましたね。

 開会式は、旧貴族院だった参議院の議場で行われます。陛下の御席は参議院にしかありません。通常の本会議の傍聴は当日の申し込みでもおおむね大丈夫ですが、開会式だけは事前の申し込み手続きが必要です。今回は特に人気が高かったので、早い時期から参議院警務部は予約の注意事項について全事務所に告知していました。


 申し込みの受付は電話予約のみで、衆参の議運(議院運営委員会)理事会で開会式の日程が了承された翌日の10時から始まります。今国会の場合、衆議院の議運理事会では1月18日に開会式の日程の了承が行われましたが、参議院は「政府の統計問題への対応の悪さ」を理由に、野党は開会式の日程について議題にもあげませんでした。

 翌週も参議院の議運理事会は断続的に開かれましたが、なかなか日程が了承されず、ギリギリの24日にようやく了承されて25日と決まりました。遠方からの参観を希望していた方々は、予約が取れたかどうかわからずにやきもきされたと思います。

 さて、やっと予約受付が始まった25日10時。秘書たちも、みな必死で警務部へ電話しました。その結果、予約申し込みが殺到し、参議院警務部の電話が混線、衆議院から参議院への内線自体がつながらない事態になりました。

 参観証は議員事務所ごとに3枚まで予約が可能なのですが、それも合計180枚まで。先着順なので、早ければ60事務所で打ち切られてしまいます。ちなみに、現在は衆議院465議員・参議院242議員・欠員2議員で、あわせて707の議員事務室があります。そのうち1割以下にしか参観証が交付されないので、超激戦でした。

●野田聖子議員が“大人気”だったワケ

 開会式は13時から行われ、議場が開場されるのは1時間前の12時からです。
プレミアがついた参観証を持った180名の方々が参議院の通用門から傍聴者用入り口を通り、厳しい荷物検査を受け、コートや荷物、ポケットの中のものまでロッカーに預けてから議場に案内されます。

 傍聴席は180人全員が座ることができないので、30人くらいは立ち見状態で開始を待ちます。待っている間に、礼装した衛視さんが議場内をゆっくりと歩いて警備している姿を見たり、傍聴席担当の衛視さんから注意事項の説明を受けたりするのも、貴重な経験になると思います。

 開始15分前になると議員席の扉が開錠され、衆参の国会議員たちが続々と入ってきます。開会式の日は和装の議員も多く、とても華やかです。著名な議員を見つけるのも、楽しみのひとつになると思います。

 議員たちの座席も決まっていないので、空いている席を探すためにウロウロしたり、時間ギリギリに入場して後ろのほうで立ったまま陛下の到着を待ったりする議員もいます。「平成最後」ということでいつもは列席しない議員も参列したので、例年よりも立ち見組が多かったです。

 開会すると、国会議員も傍聴者も全員起立し、ずっと立ったままです。衆議院議長が両議院を代表して式辞を述べ、陛下からお言葉を賜るのが通例になっています。

 陛下は「国会が、当面する内外の諸問題に対処するに当たり国権の最高機関として、その使命を十分に果たし、国民の信託に応えることを切に希望します」と述べられました。細かい部分は報道されないため、機会があればぜひ足を運んでいただきたいです。


 式の終了後に陛下をお見送りしてからは、恒例の和装振興議員連盟の写真撮影会がありました。女性議員では圧倒的に野田聖子・和装議連事務局長が人気で、党派を超えて撮影依頼が多く、そのたびに笑顔で応じていました。水色のさわやかなお着物で、とても素敵でした。女性議員の議員バッジはたいてい帯揚げにつけるのですが、野田議員は帯に直でつけていて、みなさんからいじられていました。

●社民党にすり寄る立憲民主党のお粗末さ

 開会式が終わると、衆参両院で安倍首相をはじめ大臣の施政方針演説が行われます。神澤としては、安倍首相が韓国軍のレーダー照射問題の件で「日本政府として韓国と対話での解決に向けて取り組む」などと発言してくれれば国民の関心も高くなるのにと思っていたのですが、残念ながら言及したのは統計問題でしたね。

 統計問題の原因は単なる人手不足です。根本的な解決策は人材の補給以外にないと思います。統計を取るほうも取られるほうも人手が足りなかっただけでしょう。そして、それをひとりの職員のせいにして終わらせようとしている厚労省の対応もよくありません。「職員のせいじゃないだろ」と思ってしまいます。

 また、それを「与党攻撃のチャンス」とばかりに追及を続ける立憲民主党にも疑問がありますね。
そもそも、立憲民主党は「数合わせ」については否定的だったのに、国民民主党が自由党と会派を結成して参議院の野党第一党になったとたん、社民党にすり寄りました。「『数合わせ』なんてダメだって偉そうに言ってたよね?」と永田町の女性秘書たちはみんなあきれています。

●細野豪志議員、自民党二階派入りの裏事情

 もっとあきれたのは、無所属のまま自民党会派入りすると見られている細野豪志議員です。民主党政権時には環境大臣や党幹事長を歴任した細野議員ですが、二階派に「特別会員」として入会する見通しが報じられました。

 二階俊博議員は「来るもの拒まず」で有名で、派閥には“やらかし議員”が多いことも知られています。もはや説明不要の片山さつき内閣府特命担当大臣のほか、失言で知られる桜田義孝大臣(東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当)、さらには“路チュー騒動”の中川郁子議員(当時)と門博文議員、不倫スキャンダルの宮崎謙介議員と金子恵美議員夫妻(いずれも当時)など“スター”がそろっています。そして、二階派の会合や秘書会は正直楽しいです。

 しかし、同じ選挙区内で自民党の議員同士を競わせるようなことを平気でする二階議員には「なんか違うんじゃないかな」と思ってしまいます。同じ政党の秘書同士なのに、総選挙の時期になると微妙な間柄になってしまうこともあり、つらく感じることもあります。

 実は、無所属の議員を二階派に入れて当選したら自民党入党を認めるという手法は、二階議員の得意技なのです。今回の細野議員も、そういうことなのでしょう。とはいえ、細野議員の選挙区には、すでに自民党として活動を続けている候補者がいるのです。
ただ、その候補が次の選挙で当選するかは微妙で、細野議員が当選する可能性のほうが高いです。そうなれば、必然的に細野議員の自民党入りは確実ということになります。

 こうした二階議員の手法については派閥内でもあきれる声があがっているようですが、自民党の幹事長なので誰も意見できないのでしょう。

 また、細野議員にも疑問があります。今の秘書の方々の処遇はどうするつもりなのでしょうか。たとえば、同じように民主党から自民党へ無所属で会派入りした松本剛明議員は、自民党に移ったときに、それまでの秘書をみんなクビにしました。もし細野議員も同じようなことをするのであれば、許せないです。

 そもそも、希望の党への電撃移籍もなんだったのでしょうか。民進党の「顔」だったのに、2017年8月に急に離党して翌月には希望の党に入り、総選挙では民進党出身者の公認をめぐって多くの候補者が出馬すらできない事態になってしまいました。その人たちの無念を、細野議員は受け止める責任があります。

 自分の政治生命の延命のためだけに自民党入りなんて、選挙区の支援者たちも受け入れられないでしょう。すでに「地元の反発」を危惧する報道も出始めています。
ただ、その一方で「与党議員として政治活動をしたい」という気持ちも理解できます。与党の議員でないとできないことも多いからです。

 神澤の友人の50代の女性秘書は、参院選の出馬オファーを何度も受けているそうです。彼女いわく「私もいい年齢になったから、出馬も考えなくはない。でも、本気で勝負するなら与党からがいい。若ければ野党で経験を積むことも考えられるかもしれないけど、もう私にはそういう時間はないから。しょせん、私は野党が女性候補者を増やしたいがための数合わせ要員なの」とのこと。

 数合わせの国会運営を許してはいけないと思います。自分の政治生命より、国民や日本のために尽力する。そういう国会議員を求めて、神澤はこれからも国会の中心からレポートしていきたいと思います。

 平成最後の結び年、新元号元年の2019年。今年もよろしくお願いいたします。
(文=神澤志万/国会議員秘書)

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