大手コンビニエンスストアのセブンイレブンで起こっている、本部とフランチャイズ加盟店の対立が注目を集めている。
2月19日付「弁護士ドットコム」記事『セブンオーナー「過労死寸前」で時短営業…「契約解除」「1700万支払い」迫られる』によれば、大阪府東大阪市にあるセブン店舗が、オーナーの判断で2月1日から深夜営業を取り止めて19時間営業に変更。
同記事によれば、この店舗とセブンのFC契約は2012年から始まり、15年更新であるが、ここ数年で日本全国でコンビニの数は増加し、人手不足も深刻化するなかで、このオーナーはスタッフとして働いていた妻が昨年に死亡する前から、本部に対して営業時間短縮を申し入れてきたが、認められなかったという。
こうした経緯もあり、店舗オーナーに対して同情的な声も上がっているが、やはりFC契約で「24時間営業」が取り決められている以上、営業短縮が認められることは難しいのであろうか。弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士の山岸純氏は、次のように解説する。
●「違約金1700万円」請求は適法
まず、契約上は「24時間営業」が義務付けられており、応じない場合に「違約金1700万円」の支払い義務や契約解除が課せられる旨の文言自体は、違法でもなんでもありません。コンビニというものが「24時間営業」を謳った職種であり、そこに存在意義があるのであれば、そもそもこれを受け入れた上でコンビニのFCに参加しているわけですから、違約金の話も契約解除の話も当然“通る”話です。
また、「違約金」は民法上、「契約においてある一定の違反が発生した場合の損害額をあらかじめ定めている場合には、裁判所はその額を減らしたり増やしたりすることができない」(民法420条)と定められているものなので、契約上、定められた義務、例えば「24時間営業」義務に違反した場合に「違約金1700万円」を請求されることは、民法及び契約上、当たり前のことです。これが認められないなら、わざわざ契約をもってこの義務を規定する意味がなくなります。
もちろんFC店においては、人手不足や夜間の費用対効果など、「24時間営業」が困難なさまざまな理由があることでしょう。しかし、FC制度というものが、それを職業・ビジネスとして選択した事業主と、コンビニ経営のノウハウを提供する本部との間の対等なビジネス上の取引制度の上に成り立っているものである以上、必ず他方の“かわいそうな事情”を汲み取らなければならないというものではありません。
例えば、本部側であるセブンイレブンの会社としての売上が芳しくないときに、「FC店の皆さまに協力してもらうために、特別ロイヤリティを払ってもらいます」としたとしてFC店は喜んでこれに応じるでしょうか。
●コンビニチェーンを成立させるバランス
これまで、数多くのコンビニFC訴訟というものが存在しました。
しかし、このようなことが横行するならFC制度は崩壊しかねませんし、契約という取引の安全を図ることができなくなります。
また、前述のようにコンビニにおいては「24時間営業」にこそ存在意義があるのであれば、これを維持することがブランド価値を維持することも意味するわけですから、「(24時間営業が)できないなら、営業するな」というロジックも、ある意味、まっとうな意見と思料します。
ただし、FC店を経営する者の、コンビニ以外のビジネスを選択するという選択の自由を奪うような「長期の契約期間」が設定されていたり、「FC店側からの契約解除」が一方的に制限されているような場合には、このような契約条項は無効とされる可能性が高くなりますので、ここらへんでバランスをとるべきです。
結局のところ、今回の件はFC店側が本部とろくに話し合いもせずに、19時間営業としてしまったことにも問題があるのではないでしょうか。コンビニは、その店舗だけの都合ではなく、商品(特に生鮮食品)の製造のタイミングや、配送のタイミングなど、さまざまなバランスで成り立っています。ある地域の配送計画が綿密に立てられているのに、午前1時~6時の間、一店舗だけ閉じていたら、この配送計画も狂ってしまうことでしょう。
また、コンビニはその売れ筋などを詳細なマス・データとして商品開発などを行っているわけですから、店舗ごとの都合をいちいち聞いていたら、ここらへんにも支障を来してしまうでしょう。
このような背景事情を考えずに、「24時間営業を止めた途端に解除を通告された」点だけをとらえ、「本部は血も涙もない」などと騒ぎ立てるのがそもそもの間違いです。
(文=編集部、協力=山岸純/弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士)