2013年9月によしもとアール・アンド・シーより発売された『ロンハー』DVD版である『ロンドンハーツ vol.7』。これ以降、DVDの発売はなされていない。
日本のバラエティ界が誇る長寿番組といった場合に、『金曜 ロンドンハーツ』(テレビ朝日系)を挙げて異論を挟む方は少なかろう。『めちゃめちゃイケてる』や『とんねるずのみなさんのおかげでした』(共にフジテレビ系)などの番組が続々と終わりを迎え、芸人をメインとしたバラエティ番組としては“最後の牙城”ともいわれるこの番組だが、いまやこの番組も、岐路に立たされている。
もともと深夜枠だった『イナズマ! ロンドンハーツ』の放送が始まったのは1999年4月。2001年には『ロンドンハーツ』のタイトルでゴールデン帯(毎週火曜21時~)に昇格し、2016年からは『金曜 ロンドンハーツ』(毎週金曜21時~)にリニューアル、現在も放送が続いている。足かけでいうとちょうど丸20年の歴史を持つ同番組だが、この4月から「毎週火曜23時20分」に放送枠が移動することが、2月末に突如発表された。つまりは、ゴールデン枠から深夜枠への“降格”である。
足かけ20年の長寿番組に、いま何が起こっているのか? ある放送作家は次のように分析する。
「“丸20年目のリニューアル”などといわれてますが、視聴率不振による事実上の降格であると見て間違いありません。だからなのか、業界内で『どんなふうにリニューアルされるのか』がまったく伝わってこないんですよ。一説には、開始当初の『イナズマ! ロンドンハーツ』時代のような“素人いじり”をメインとした番組になるのではないかともいわれてますが、コンプライアンスが叫ばれて久しい昨今、素人をメインに据えることほど面倒くさいものはありません。
私は、深夜帯にありがちなトーク番組になるのかな、とも思っていたのですが、兄弟番組の『アメトーーク!』がいまだに好調なので、それもなかなか難しい。そもそも『視聴率が悪いのに、人気芸人のギャラが高騰しているために制作費が圧迫されている』というのが降格の理由でしょうから、なんらかのマイナーチェンジは当然行われるはずです」
●決してコスパはよくない『ロンハー』
確かに、人気芸人が多数出演し、大掛かりなドッキリ企画にかかる莫大な制作費なども勘案すると、決してコスパのいい番組とは思えない、現在の『金曜 ロンドンハーツ』。
「企画のパッケージ化が秀逸で、DVDなどのソフトにも落とし込みやすい『アメトーーク!』は好セールスが続いてますが、毎回さまざまな企画に挑んでいる『ロンドンハーツ』は、DVDの売り上げも全然よくないそうです。両番組の総合演出を担当する加地(倫三・テレビ朝日プロデューサー)さんの功績があるからこそ降格程度で済みましたが、今回のリニューアル次第では、番組打ち切りの可能性もあるかと思いますね。
また、ブレイク直後の有吉(弘行)さんを即座にレギュラーに加えたもののいまいち生かし切れていない。ザキヤマ(山崎弘也)さん、狩野英孝さんなど『ロンドンハーツ』をきっかけにブレイクした多くの芸人を、毎回“おいしく料理する”ところまでの企画にはなかなかできていない……等々のウィークポイントもある。『アメトーーク!』と比べて企画にしばりがなく自由度が高いぶん、いまではそれがアダとなっているのではないでしょうか。とにかく無駄が多いというか、それがある意味では“贅沢”にも作用しているバラエティ番組だと思うのですが、このご時世、そのままではなかなか存続させづらいというのが現状のようです」(前出の放送作家)
●ブレイクした“ガヤ芸人”たちの嘘くささ
4月から深夜枠に移動する『ロンドンハーツ』に代わって、金曜21時枠に入るのは『ザワつく!一茂良純時々ちさ子の会』。この采配も、「いまのご時世を象徴している」と語るのは、あるテレビ局バラエティ班のディレクターだ。
「お茶の間の視聴者は、ハングリー精神むき出しの芸人によるバラエティ番組に“食傷気味”なんだということだと思います。『ロンハー』のメインの出演者はほとんどが40代。みな、それなりにブレイクしてお金もそれなりに持ってるのに、番組の性質上、若手芸人のようにギャーギャー騒いで前へ前へと出ていかなければならない。それが、嘘くさいんですよね。
一方、同枠に入る新番組のメインは、長嶋一茂、石原良純、高嶋ちさ子といった“育ちのよすぎる”面々。彼らは自由気ままに自分の意見を押しまくりますが、決して下品にならないし、嘘くさくもない。そんな彼らの番組が『ロンドンハーツ』を深夜に追いやるということは、いま、お茶の間は“上品さ”を求めているということの証左だと思います。ですから『ロンドンハーツ』のリニューアルは、まずはそういう芸人を排除するということから始めていかないと、本当に打ち切りになってしまう可能性は高いと思いますね」
放送開始まで1カ月を切ったものの、依然として謎のベールに包まれている『ロンドンハーツ深夜版』。果たしてどのようなリニューアルが行われるのか、固唾をのんで見守りたい。
(文=藤原三星)
●藤原三星(ふじわら・さんせい)
ドラマ評論家・コメンテーター・脚本家・コピーライターなど、エンタメ業界に潜伏すること15年。独自の人脈で半歩踏み込んだ芸能記事を中心に量産中。<twitter:@samsungfujiwara>