“ひとり芸日本一”の称号をかけて、3月10日に行われた『R-1ぐらんぷり2019』(フジテレビ系)の決勝戦。お笑いコンビ・霜降り明星の粗品が『M-1グランプリ2018』(テレビ朝日系)に続き、史上初の2冠達成を果たしたが、一方で別の話題に注目が向く大会となった。
2500人を超える挑戦者のなかからストレートで勝ち上がった10名と、「復活ステージ」から勝ち上がった2名の計12名で繰り広げられた決勝戦。フリップ芸を展開して見事栄冠を手にした粗品は、2冠に加えて「R-1ぐらんぷり」史上最年少優勝を飾ることになった。
記録ずくめの優勝で、「最高の気分」「『R-1ぐらんぷり』はお笑いを始めたきっかけなので、優勝することができて光栄」などと語った粗品だが、一方でテレビ放送の“外側”では不穏な気配が漂った。松本人志(ダウンタウン)は放送終了後に、「R-1の客…」とツイート。また同大会の3回戦で審査員批判を展開して注目されたお笑い芸人・キートンも、粗品を祝福しつつ「やっぱり、賞レースでのテレビ観覧客の過剰な反応は邪魔ですな。おもしろい時に笑うだけでいい。全員おもしろいネタをやったんだからさ」とツイートしている。
キートンといえば、決勝戦の前にもツイッターで「賞レースでの観客の過剰な反応はいらない」と注文をつけていた。その不安が的中してしまったかたちで、決勝戦ではネット上にも「観客の笑い声が大げさすぎる」「せっかくの面白いネタが、過剰な笑い声でシラけてしまう」「笑い声を足しているんじゃないかと思うほど反応が不自然」といった声が相次いだ。
せっかくの優勝に水を差された粗品だが、振り返ってみれば「M-1グランプリ2018」でも、苦い思い出がある。大会終了後に出場者の久保田かずのぶ(とろサーモン)と武智(スーパーマラドーナ)が、審査員の上沼恵美子を批判する動画を配信したのだ。瞬く間に大問題となり、メディアがこぞって取り上げたため、優勝者の霜降り明星がすっかり霞んでしまった。
続けて2つの大会で場外に話題を持っていかれ、ファンからは「せっかく優勝したのに、まったく違う部分がフォーカスされる粗品さんがかわいそう」と、同情の声が多く寄せられている。
このような観客の“過剰反応”は、運営側が意図してつくり出したものなのだろうか。お笑い評論家のラリー遠田氏は、「運営側が観客の空気をコントロールするのは、それほど簡単なことではない」と語る。
「確かに、今回の『R-1』の観客は、必要以上に反応が良すぎると感じられる場面もありました。オチに行く前のフリの段階で笑いが起きていたり、やたらと悲鳴があがったり、“過剰反応”といえるぐらいでした。しかし、それは運営側が意図的に生み出したものではないでしょう。お笑いコンテストの観客は、笑うべきところで笑ってくれる『程よい盛り上がり』があるのが理想的です。でも、実際にはこれがなかなか難しい。『厳しく見てください』などと注文をつけると、かえって観客が緊張して必要以上に重い雰囲気になってしまう可能性もあるからです。
昨年の『M-1』では、場が重くて笑いが起きにくかったといわれていますが、今回の『R-1』のように本筋と関係ないところでやたらと笑いが起きるのも、芸人としてはやりにくかったと思います。運営側は、いい雰囲気を作るために最大限の配慮はしているはずですが、生ものである観客の反応をコントロールするのは至難の業です」(ラリー遠田氏)
観覧客の過剰反応とは別に、今回の大会では疑問を呈するお笑いファンも多い。たとえば、これまで“プロ・アマ問わず””だった出場資格が、今回から“プロ限定”になった。
次の大会では、改善できる点は改善し、視聴者に純粋な感動を提供してほしい。
(文=編集部)