吉高由里子が主演を務める連続テレビドラマ『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)が4月16日に放送を開始し、初回の平均視聴率は9.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)だった。
同ドラマは、小説家・朱野帰子氏が文芸誌「yom yom」(新潮社)で連載していた作品を実写化。主人公の東山結衣(吉高)は過去にあるトラウマを抱え、現在は「残業ゼロ」「定時で帰る」をモットーにウェブ制作会社・ネットヒーローズで働く、32歳の独身OL。会社ではディレクターとして仕事に集中し、しかも生産性の高い働きぶりを見せるが、定時になるとサッと退社。行きつけの中華料理店でビールを飲み、恋人の諏訪巧(KAT-TUN・中丸雄一)との時間も大事にしている。
第1話でも、結衣は同僚の三谷佳菜子(シシド・カフカ)の小言を受け流しつつ定時退社、有給休暇を消化してプライベートを充実させていた。そんななか、結衣の元婚約者でワーカーホリックの種田晃太郎(向井理)が職場に戻ってくる。一方、大きな仕事を任された三谷は体調を崩しても仕事の手を止めず、新人・小泉咲(ついひじ杏奈)に対しても厳しく教育していた。その結果、小泉は「パワハラ」を主張して会社に来なくなり、動揺した三谷も帰ってしまう……という内容を繰り広げた。
惜しくも初回、視聴率2ケタ台には乗らなかった『わたし、定時で帰ります。』だが、同日にフジテレビ系「火曜21時」枠でスタートした、松坂桃李主演『パーフェクトワールド』は初回6.9%だった。また、『わたし、定時で帰ります。』と同じTBS系「火曜ドラマ」枠で前クールに放送していた、深田恭子主演『初めて恋をした日に読む話』が初回8.6%だったことを踏まえると、9.5%発進は上出来だろう。
内容に関しては、三谷が「あなたのためを思って」と小泉に苦言を呈したり、新任部長・福永清次(ユースケ・サンタマリア)が悪気なく“ブラック発言”をしたりするため、インターネット上には「押し付けがましい」「こんな上司イヤだ!」といった書き込みが続出。なかには「イライラするから見るのやめておくわ」「平日に仕事して帰ってきて、さらに疲れるようなドラマは見たくない」と“離脱”する人もいたようだが、一方で「新人がちゃんと言い返しててウケる。いいぞ!」「吉高ちゃんの役も、断固として定時退社を徹底してるから気持ちがいいね」「私もこんなふうに仕事とプライベートを両立させたいな~」など、ポジティブなコメントも。
とはいえ、三谷サイドに立つ視聴者も少なくなく、一部では「小泉も性格悪いし、何もかも三谷さんが悪いわけじゃない」「三谷さんの言い方はキツいけど、小泉にも問題はあるだろ」「新人の指導って本当に難しいよね」といった意見が寄せられていた。また、三谷ががんばってもなかなか報われず、要領よく見える結衣にイラついてしまう姿にも「わかるよ、私もそうだもん」との声が。こうした書き込みを見るに、同ドラマは現時点で視聴者の“共感”を得ているようなので、数字を伸ばしていく可能性はありそうだ。
ところで今回、ネット上で話題だったのは、中丸の“良い彼氏感”である。中丸演じる巧は、優秀な営業マンでありながら家庭的で料理上手なキャラクター。自宅で結衣を優しく迎え、手料理を振る舞うシーンが放送されると、「えっ! めっちゃ良い彼氏!」「ほんわかした雰囲気で食事と会話の時間を大切にしてくれるとか、最高なのでは?」などと騒がれた。
同時に「中丸くん、演技ヘタだよね」「セリフ棒読みなのが気になる」といった指摘も多かったが、それがまた「おもしろい」とウケていて、「結衣は種田と元サヤ展開かな? 巧は当て馬っぽいよね。でも、途中で中丸くんが出なくなるのはさびしい」「中丸くんの芝居はヘタだけど癒やされるのに!」というコメントも散見された。これは珍しいパターンである。
働き方を問う社会派ドラマにおいて、中丸の“脱力感”はほど良い息抜きになるのかもしれない。
(文=美神サチコ/コラムニスト)