春の野菜は、この時期にしか食べられないものが多いですね。店頭には、旬を迎えたみずみずしい野菜の数々が並び、春の訪れを実感いたします。



 この時期にしか美味しく味わえない、たらのめ、ふきのとう、こごみ、うど、ふき、うるい、わらび、ぜんまいなどの山菜やタケノコは、独特の苦み、えぐみ、香りも楽しむことができます。苦み、えぐみ成分は、野菜が害虫から身を守るための防衛成分という説もあります。

 春の野菜に多い苦み、えぐみ成分のひとつに、シュウ酸があります。シュウ酸は、尿路結石の材料となる成分、ほうれん草に多く含まれる成分として、ご存じの方も多いことでしょう。シュウ酸は、ジカルボン酸(COOH+COOH)という構造式をもち、代謝の最終産物、つまり尿へ排出される成分です。尿路結石に一度なられた方は、尿中のシュウ酸が多いと尿路結石の再発率も高くなることがわかっています。

 尿路結石の原因をつくる主な成分として、シュウ酸のほかに、リン酸、尿酸、カルシウム、リン酸マグネシウム、アンモニウム、シスチンなどがあります。尿路結石のなかで80%を占めるのが、尿中でシュウ酸とカルシウムが結合してできるシュウ酸カルシウム結石といわれています。

 ここで、カルシウムも摂りすぎはいけないのでは? と心配になった方もいらっしゃるかもしれません。結論から申し上げますと、カルシウムの摂りすぎよりも、カルシウム不足のほうが心配です。食品からカルシウムをたくさん摂っても、そのまま尿へストレートにいくわけではありません。では、尿へいくカルシウムは、どこからきているのでしょうか。


 実は、食品からのカルシウムが不足すると、血液中のカルシウムが不足しかねません。そうならないように、カラダは骨からカルシウムを溶かしだし不足を補っています。このときに、必要以上にカルシウムが溶けだしてしまう場合があり、カラダで使われなかった分が尿へいってしまうのです。そのため、現在では、結石の予防として、食品からカルシウムを積極的に摂取することが推奨されています。ちなみに、多くの日本人は、カルシウム摂取量が1日の推奨量に達していないといわれています。

●シュウ酸の性質を知る

 尿中のシュウ酸の半分以上は、食事に由来するといわれています。そこで、シュウ酸の多い食品を食べなければよいと思った方もいるかもしれません。それも一理あります。

 しかし、実はシュウ酸はあらゆるものに多かれ少なかれ含まれていますので、多くのシュウ酸が尿までいかないように調理方法や食事での食べ合わせを考えることが、効率の良い方法といえます。

 それには、シュウ酸の性質を知ることです。大きく2つあります。

 1つ目は、シュウ酸には水溶性があることです。
ゆでることで、かなり減らすことができます。

 2つ目は、シュウ酸はカルシウムと結び付きやすい性質があることです。カルシウムが豊富な食品を一緒に摂れば、腸内でカルシウムとシュウ酸が結合してシュウ酸カルシウムとなり、便として排泄されます。シュウ酸が尿へいくことを防いでくれます。

 しかし、食事からのカルシウムの量が少なくシュウ酸の量が多いと、腸内でシュウ酸カルシウムがあまりできないため、シュウ酸が尿へといってしまい尿のなかに存在するカルシウムと結合して石をつくってしまうのです。そのため、腸内でシュウ酸と結び付くカルシウムを食事から増やし、便とともに排出することがおすすめなのです。

 タケノコ料理を食べるならば、カルシウムが豊富な小魚、干しえび、小松菜、乳製品を一緒に、汁椀をつくるなら、カルシウムが豊富な煮干しでだしを、天ぷらなら、衣にスキムミルク(脱脂粉乳)を少量加えてみましょう。食後に、ヨーグルトを食べるのもよいですね。

 また、水分をしっかり摂りながらお食事をし、体内へシュウ酸を長時間ためないようにしましょう。水分補給におすすめは、水道水、ミネラルウォーター(軟水)、麦茶、ほうじ茶です。アルコール、コーヒー、ウーロン茶、紅茶、緑茶には、シュウ酸がふくまれていますので、シュウ酸の多い料理を食べるときは、摂りすぎないほうが無難です。

 山菜やたけのこの天ぷらをいただくなら、美味しい抹茶塩も、この時だけは、控えたほうがよいかもしれません。


 食後にコーヒー、紅茶をいただく時も、いつも何も入れない方は、ミルクを入れましょう。コーヒー、紅茶のシュウ酸がカップの中でミルクに含まれるカルシウムと結びつきシュウ酸カルシウムができるので、シュウ酸が単独で尿中へいくのを防いでくれます。

 尿路結石をつくる危険因子は、シュウ酸だけではありませんが、材料のひとつになっているので、春の野菜をいただくときは、特にご注意ください。
(文=森由香子/管理栄養士)

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