プロ野球・読売ジャイアンツ(巨人)の上原浩治投手が5月20日に現役引退を表明した。メジャーリーグでも活躍した名選手だけに、国内外から惜別の声が寄せられている。
異例となる“シーズン中の現役引退”を報じたスポーツ報知によると、実力の限界を感じた上原投手が今月に入って球団に引退の意向を報告。慰留する球団に対し、上原投手は「自分の代わりに若手にチャンスを与えてほしい」と申し出たという。報道を受けて上原投手はツイッターを更新し、「今朝の新聞の通り、今日で引退となります。長い間、応援ありがとうございました。まだ心の中、頭の中がごちゃごちゃしてますので、とりあえずはご報告まで…」とつづった。
1998年のドラフト会議で巨人から1位指名を受けた上原投手は、99年にプロ1年目ながら20勝を上げて最多勝、最多奪三振などのタイトルを獲得する活躍を見せ、新人賞と沢村賞を同時受賞した。また、自身を例えた「雑草魂」というフレーズに注目が集まり、同年の「流行語大賞」にも輝いている。
2008年にフリーエージェント宣言を行った上原投手は、メジャーのボルティモア・オリオールズに入団。その後、18年に日本球界復帰を果たすまで、テキサス・レンジャーズ、ボストン・レッドソックスと活躍の場を移していく。なお、レッドソックス時代の13年にはクローザーとして大活躍を見せ、世界一を決めるワールドシリーズにも登板。第6戦で最後の打者を空振り三振に仕留め、日本人初の“胴上げ投手”として世界一に輝いた。
巨人に復帰した18年は36試合に登板して0勝5敗という成績に終わり、今季は1軍登板のないまま引退を迎えた上原投手。
ファンからもメッセージが殺到しており、「イチローに続いて、また球界人気を支えた名選手がマウンドを去るのか。本当にさびしくなる」「エリート集団の巨人にあって、上原投手は異質な存在だった。まさに“雑草魂”という言葉を具現化した名投手だと思う」「『若手にチャンスを与えてほしい』とは、苦労を積んできた上原投手らしい言葉。最後まで感動させてくれる素晴らしい選手ですね」といった声が上がっている。
一方で、議論されているのが「名球会入り」についてだ。上原投手の成績は、日米通算134勝、128セーブ、104ホールド。「100勝・100セーブ・100ホールド」達成は日本人初の快挙で世界でも2人目となるが、名球会の入会資格である「200勝」「250セーブ」「2000本安打」(いずれも日米通算)のいずれもクリアしていない。そのため、上原投手が前述の「トリプル100」を達成した昨年11月には名球会総会で資格見直しについて議論されたが、結論は先送りとなった。
ファンの間でも、かねて「そもそもピッチャーの入会基準のハードルが高すぎる」「これほどのレジェンドが入れないのであれば、もはや名球会など不要。
また、上原投手の引退によって、「巨人の次期監督レースにも変化が生まれそうだ」(スポーツライター)という。
「巨人は強引に高橋由伸を引退させて監督に据えたものの、成績不振から交代せざるを得なくなり、候補者不足が露呈。現在の原辰徳は松井秀喜や阿部慎之助など次世代の人材、あるいは高橋再登板に向けての“つなぎ”であることは明白です。上原は国内では巨人一筋で、実績も人気も申し分ない。高校時代は補欠で、一浪して大学に入った苦労人が巨人でエースとして花開いたというストーリー性も持ち合わせており、イメージも良い。ただでさえなり手の少ない巨人監督の有力候補に上がってきてもおかしくないでしょう」(同)
引退後の上原投手は、どのような道に進むのか。後進の育成を望むファンも多いはずだ。
(文=編集部)