シェアハウス、シェアオフィス、シェアカーという言葉がすっかり一般的になり、誰かと何かを“シェア”するという考え方が日本にも定着してきました。ファッション業界ではレンタル服のマーケットが広がり、パーティや結婚式用のドレスや着物だけでなく、デイリー使いの服をレンタルするシェアサービスが急増中。
また最近では、夫婦やカップル間で服を共有する、男女の“シェア服”人気も高まりを見せています。単なる服の貸し借りに収まらない、“シェア服”という概念が生まれた背景には、男女の枠を超えたユニセックス服を提案するジャパニーズブランドが増えていることが関係しています。
2016年にスタートした「SLOANE(スローン)」は、ユニセックスのニットとトップスに特化したブランド。ほぼすべてのアイテムを1~5の5サイズで展開しています。一部の服をユニセックスで提案するブランドはこれまでにもあったものの、ブランドコンセプト自体がユニセックスという発想は世界的に見てもとてもユニーク。アイテム数やカラー展開も豊富で、男女で共有できるサイズを選べば、自ずとシェア服として活躍してくれるのです。
“シェア服”を後押しするもののひとつに、女性がオーバーサイズの服を着るようになった数年前からのトレンドがあります。たとえばごくベーシックなニットやシャツなどの普通の服は、ジャストサイズを着るよりも少し大きめのサイズを着るほうが着こなしにニュアンスが生まれ、おしゃれ感がぐっと増す。オーバーサイズの服を求める女性にとっては、サイズ展開の多いユニセックス服ブランドの台頭は嬉しい限りなのです。
スローンと同じく2016年にスタートした「ATON(エイトン)」では、アウターを中心にユニセックス服を提案しています。特に人気を誇るトレンチコートは、2、4、6の3サイズ展開。
ファッションをシェア服の視点から考えることによって、カップルでのショッピングの楽しみもぐっと広がります。おしゃれに興味の薄い男性をお買い物に連れ出すきっかけにもなりますし、自分の服選びのために相手を待たせる時間も減るはずです。また、そもそもファッションに限らず、誰かと何かを“シェア”するという考えは、“多くのものを所有しない”という断捨離ブームからくるもの。そういった意味からもシェア服は、時代の流れにかなったファッションなのかもしれません。
(文=磯部安伽/ファッションエディター)