50代でクレジットカードの支払い(リボ払い)やカードローンによる借金に苦しむ人が少なくない、と前回話した。20~30代だと年収がまだ低いので、借りられる額も少ない。

だいたい100万円くらい。債務整理や自己破産をしても、生活への影響は少なく、5年がまんすればクレジットカードもつくれるようになるし、住宅ローンも借りられるから、やり直しもしやすい。

 一方、50代で年収が高いと、クレジットカードとカードローンの残高の合計が500万円を超えることもある。金利が15%なら、年間の利息の支払いだけで75万円、毎月10万円返済してもその60%以上は利息なので、返しても返しても残高が減らない。貯金がないので、ローン残高が少し減ったら、また借りる悪循環になる。

 ここからどう抜け出すか考えてみよう。ステップはシンプルだ。

(1)借金の一覧表をつくる
(2)自力で返済できる額か判断する
(3)判断が難しいとき、返済できそうにない時は、すぐに専門家に相談する
(4)アドバイスに基づいて行動する

● 一覧表をつくって現実を見る

 クレジットカードを使いすぎている、カードローンの返済が負担だ、返しても返しても借金が減らない、ということはわかっていても、本当の実態がわかっていないことが多い。見たくないから。でも逃げていては解決しない。

 まず、一覧表をつくろう。こんな簡単な表でいい。


 表をつくると残高や金利がはっきりしてくる。返済方法や返済計画がわかってないものは問い合わせて、はっきりさせる。金利が8%と15%と18%のものがある、とか、残高120万円のものと30万円のものがあるとか、支払い月額を合計すると家賃よりも高いとか。ため息が出るかもしれないが、これが大切な第一歩だ。

●現実的な対応を考える 年収の30%を超える借金は自力では難しい

 借金の総額がわかったら、自力で返せるかどうか判断できる。結論からいうと、自力で返せる可能性があるのは、ローン残高が年収の30%くらいまで。

 税込年収1000万円(手取り750万円)の人に300万円(税込年収の30%)のローンがある例を考えてみよう。金利15%とする。借入先がひとつなら、返済額は月3.5万円(リボ払い)から7.3万円(5年返済)ほど。リボ払いを選んだら残高が減らないので延々と返し続けることになるが、5年返済にすれば、毎月の返済は苦しいが返し終えるのは不可能ではない。

 ところが、同じ300万円15%のローンでも、借入先が5カ所(残高が各60万円)だと様子が変わってくる。リボ払いで1カ所当たりの返済額が2万円とすると、5カ所で10万円。
家賃や住宅ローンと同じくらい。返し続けるのは難しい。少し返してまた借りるという生活になりがち。

 ローンが1本なら、年収の30%くらいまでは自力で返せる可能性はある。30%が分かれ目。ローンの数も問題。

 借入額を合計して年収の25%以上だったら、すぐに専門家に相談したい。30%を超える前に。自力で返したい、あるいは返せるかどうか考えたいなら専門のFP(ファイナンシャルプランナー)に相談する。借金は気力や努力や節約だけでは返せない。

 もう無理だと思うなら消費生活センターや地方自治体の窓口へ。債務整理や自己破産の覚悟が決まっていれば、司法書士や弁護士へ。


●ローンが複数ある場合の2つの対処法

 ローン残高が年収の30%以下でも、借入先が複数だと毎月の返済額が大きくなり、返し続けるのが難しくなる。先に説明したとおりだ。そのときの手立ては、2つある。

(1)残高が少ないローンから返してしまい、借入先を減らしていく

 先の表の例では、アトムとカードローンBの残高が少ないので、これを繰り上げ返済して返してしまう。すると、毎月の合計返済額が9万3,000円から8万5,000円になり、少し楽になる。楽になった分をさらに繰り上げ返済に充てて、みどり銀行分をゼロにすると、毎月の返済額は6万5,000円に。ボーナスなどを利用して繰り上げし、借入先を5→4→3→2→1と絞っていく。どれをどう、どんなタイミングで返していくか、専門家のアドバイスを受けよう。

 もうひとつ大切なことは、返済を終えたカードから順にハサミを入れ、解約することだ。複数のカードを持っていたことで、このローン地獄にはまってしまった。ポイントがつく、割引になる、お得だから、と次々とカードをつくってしまった結果だ。いったんローンを返し終えても、カードを持っていたら、また借りてしまう。
間違いなく。

(2)おまとめローンを検討してみる

 もうひとつは「おまとめローン」だ。一定の収入があって、過去にローン返済の滞納がない人ならこれが使えるかもしれない。たとえば、5枚のカードで計300万円のローンがあるとき、ひとつの金融機関から300万円を借りて先の5社分を返してしまう。次のメリットが期待できる。

(1)毎月の返済額が減る
(2)金利が下がる可能性がある
(3)残高や返済の管理がしやすくなる
(4)総返済額が少なくなる(金利が下がった場合)

 たとえば、60万円ずつ5カ所から18%で借りていると、返済額は最低でも月10万円弱だが、金利が少し下がって15%になっただけでも、毎月の返済額は7万1,369円(5年返済)となる。12%、10%になれば返済額はぐんと減る。

 おまとめローンの傾向として、審査が早く当日~数日で入金される金融機関より、少し日数がかかるところが金利が低い傾向がある。0.1%でも低い金利に借り換えたいので、あせらず複数の金融機関に試算してもらう。ただ、最近はAIスコアで借入可能額や金利を素早く算出してくれるサービス、金融機関が登場している。これを試してみる価値はある。

 おまとめローンを利用したときの鉄則は、それまで利用していたクレジットカード、ローンカードを全部解約すること。
これをやらないと、前よりもっとひどいことになるリスクがある。これについては次回話そう。
(文=中村芳子/アルファアンドアソシエイツ代表、ファイナンシャルプランナー)

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