「努力すれば、成功し、成功すれば幸せになる」

私たちはさまざまなシーンで、それとなく、あるいは直截的にこの方程式を刷り込まれました。「ワンランク上の学校に行ければ」「昇給すれば」「あと5キロ痩せれば」......もっと幸せになれる。

そのために頑張るという方程式は、"真面目でこつこつ"が得意とされる日本人に限らず、アメリカ、ヨーロッパ、アジアなど多くの地域で共有されている価値観です。

しかし、10年以上にわたる脳科学と心理学の臨床研究の結果、この方程式の順番が逆であることが証明されました。つまり、幸せは成功に先行するのであり、幸せな人(=幸福感を感じやすいポジティブな人)が成功するというのです。ハーバードで最も評価の高いるポジティブ心理学講座を担当するショーン・エイカー博士は、著書『幸福優位7つの法則』で、興味深い臨床例をいくつも紹介しています。

診断を下す前にポジティブな気分になった医師は、普通の気分の意識に比べ、三倍も賢明で想像力がよく働き、十九%も短い時間で正確な診断をすることができる。

楽観的な営業マンは、悲観的な営業マンに比べて五十六%も営業成績がいい。

『幸福優位7つの法則』P.22


ハーバードを始めとしたアカデミアや多くの企業での実験・臨床例をもとに、ショーン・エイカー博士は以下のような結論を出しています。

幸福感や楽観主義は、実際に業績を高め優れた成果をもたらす。幸福感そのものが競争力の源泉となるからであり、私はこの力を「ハピネス・アドバンテージ(幸福優位性)と呼んでいる。

『幸福優位7つの法則』P.6


人間の思い込みの力とは偉大なもので、クラスで平均的な学力の生徒数名に対して、「この生徒は極めて優秀だ」と先生と生徒本人、生徒の家族に言うと、1年後本当に上位の学力になっていたり(もちろん待遇面で他の生徒と違いをつけない前提)、漆アレルギーの人に「これは漆だ」と言って無害な木の樹液をこすりつけると、ほぼすべての人に痒みや発疹が出たり、75歳の男性グループに1週間55歳の時の環境で生活してもらうと、1週間後、見かけが平均で3歳若返り、視力が平均10%改善したりします。


幸福が成功に先立つという、幸福優位の法則の素晴らしいところは、幸福感は訓練によって身につけることができる点です。上司から怒られたときに、「私がダメな人間だから」ではなく、「成長してほしいから」注意してくれていると受け取るベクトルを手に入れれば、世界は大きく変わります。

世界を味方につける見方を身につけることで、毎日をハッピーに過ごしたいですね。

『幸福優位7つの法則』

著者:ショーン・エイカー

訳者:高橋由紀子

発行:徳間書店

定価:1,600円(税抜)

撮影/カフェグローブ編集部

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