「母と私が同年代だったとしたら、絶対に友達にはなれない。
世間には、親友のように仲の良い母と娘もいます。一方で、母に対してモヤモヤとした感情を抱え続け、どうしようもない相性の悪さに悩む娘もいます。
考えてみれば、それは当たり前のことです。母と娘は別の人格なのですから、人としての相性が良いと決まっているわけではありません。相性の良い親子もいれば、良くない親子もいて当然です。確率論的に言えば、50%の確率で相性の良くない親子がいてもおかしくないのです。
それなのに、親子は支え合い、いたわりあって生きていくべきという常識に縛られるあまり、大人になっても親離れや子離れができないケースがあまりにも多いように感じます。
特に同性同士である母と娘の関係は深刻です。いつまでも娘を自分の影響下に置いておきたい母と、母の顔色を読んで生きるクセが抜けない娘とが、互いに依存しあった人生を送ってしまいがちなのです。
母への期待や執着を捨てる「母に依存しているなんて、とんでもない! 私は母の従者のように生きることを強制されているだけだ!」......そう反論する人もいらっしゃることでしょう。
でも、ここでひとつ、厳しいことを言わせてください。「母のせいで私は不幸」と思っているうちは、まだ母に毒されています。
母に対して「ひどい親だ」「毒親だ」と断罪する行為を自分に許すことで、心が軽くなるというのは事実です。「自分ばかり責めなくてもいいんだよ、あなたの親はひどいね」という声に救われ、多少は生きやすくなったという人も多いでしょう。
こうして傷ついた心を立て直すことができたら、次にあなたがすべきことは何か? それは、自分の足で、自分の人生を生きることです。母への期待を捨てて、なるべく早く母から遠い場所に巣立っていくことです。
遠い場所というのは、ある人にとっては物理的に遠い場所を意味するかもしれません。どうしても同居し続けなければならないという人にとっては、精神的に遠い場所を指すかもしれません。
とにかく、母に対して「謝ってほしい」「わかってほしい」と思う気持ちさえも捨てて、距離を取ることだけを考えてみてください。
人生に言い訳をしないために母との距離の取り方は、書籍『逃げたい娘 諦めない母』に詳しく述べています。
たとえば、母に対して丁寧な言葉を使い続ける。嫌なことを強要されたらきっぱりと反論し、「できません」と断言する。
いい大人になってから行う親子関係の再構築は、娘にとって辛い作業です。年老いた母は、娘に逃げられることを本能的に嫌がり、邪魔をしてくることでしょう。それでも、自分の人生を言い訳なしに生きていきたいと思うのならば、絶対に通らなければならない道です。
反抗期をやり直そう仕事も、友達付き合いも、恋人も、決めるのはあなたであり、母ではありません。母を言い訳にして、あなたの人生を諦めないでください。
折り合いの悪い親子は50%の確率で存在します。あなたはたまたま、その2分の1の確率に当てはまってしまっただけ。「辛い......」と声を上げたとき、共感してくれる人や、あなたの背中を押してくれる人は、2分の1の確率でいるはずです。
でも、それで安心しているだけではダメ。自分の人生を生きるために、しっかりと反抗期をやり直してみてください。
母親からの善意や期待が重たいと感じながらも、必死に"いい娘"を演じる女性たちを描いた書籍『逃げたい娘 諦めない母』。最終回は、その書籍のなかでアドバイスを寄せてくださった臨床心理士の信田さよ子先生をお迎えし、親子関係の再構築の仕方や、自分の人生の取り戻し方など、"いい娘"をやめて"しあわせな娘"になるための実践的な方法を教えていただきます。
折しも、母親と顔を合わせなければならない機会が増える年末年始を前にした時期です。信田先生への質問がありましたら、ぜひお寄せください。
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