なんとなく早朝の渋谷で一線を越えて、そういうことになった私たち。それから4か月もたたないうちにいわゆる同棲生活へと突入。といっても「一緒に暮らしませんか」みたいな心がザワザワする申し出が彼からあったわけではありませんでした。
彼は私とそういうことになってから、1か月後に横浜の実家を出て武蔵小杉のワンルームマンションで一人暮らしをはじめていました。なんで一人暮らしを急にはじめたのか、後から聞いたところによると「男として自立しないといけない」と思ったのだそう。年上の私と付き合いだしたことが根底にあるのは明白でした。
そして毎晩自炊を試みたらしく、メールで「今日はカレーを作ってみます」とか「野菜炒めに入れる野菜ってなに?」などと連絡をしてくるようになりました。付き合いはじめたばかりの恋人へ送るメールじゃないですね。
そんなある日の休日。突然、彼から電話がかかってきました。「お風呂掃除してたんだけど......。なんかすごく具合が悪い。
なにがどうしたのやら、お風呂掃除で具合が悪くなることってあるんだろうか? と首を傾げつつ、状況を確認すると。なんと塩素系漂白剤をまるまる1本使って、お風呂場のカビを取ろうと躍起になっていたことがわかりました。しかも換気扇もつけずに!
彼の無知からくるトラブルはこれだけではありませんでした。仕事が忙しくて何日も昼ヌキで働く様子を見かねた私が、メールチェックしながらでも食べられるようにつくって渡しておいたオニギリを持ち帰り。「これ、焼きオニギリにしよう」とアルミで包んだまま電子レンジでチンして火花が出たとか、ベッドサイドに置いた照明器具の白熱電球にタオルをかけて発火。
ボヤを起こしかけたなど枚挙に暇がありません。
「この人ダメだ」見るに見かねて同棲開始トラブルのたびに子犬がクンクン泣くように「見捨てないでください......」という彼。「この人、このままだといつか死ぬかもしれない」と、見るに見かねて彼の狭いマンションで私が寝起きをはじめた......というのが、同棲生活の始まりでした。
なにしろ一人暮らし用の住居だったので私の荷物が入るわけもなく。私の家も引き続きトランクルームのように契約を残しての二拠点生活でした。
大事に育てられた箱入り息子なのか、はたまた男の子だと家のことをあまり手伝わずに育つからなのかな。
一緒に暮らしてからも、彼が起こすトラブルは多々ありました。
怒るとシュンとしてしまうので「なぜこうしてはいけないのか」をこんこんと説明します。すると「なるほどー」と頷いて理解をし、次に同じミスは起こすことはなかったけれど。
ふと我にかえると弟のようなかわいい年下の彼氏はどこへやら。さしずめお受験ママと期待に応えるべく頑張る息子のような、キャリアアップを図る上司と部下のような二人三脚。およそ恋人同士とは思えない雰囲気に変化してしまいました。
年下の無色透明さは働く女のメリットこう書いてしまうと「年下ってやっぱり大変なのか」「男としてみれないのは嫌だなあ」と思われてしまうかもしれません。付き合いはじめる年ごろによっては、確かに私たちのように手がかかるケースもあります。けれど、一方で年下ならではの無色透明さがメリットになることもありました。
その最たる例が、働く男女が一緒に暮らすと、必ずぶち当たる家事分担の問題。一緒に暮らしてみて強く感じたのは「あ、年下って働く女性にいいな」ということでした。
なぜなら80年代生まれの彼には「男はこうあるべき」とか「家事は女性がやるもの」みたいな古い価値観がゼロ。だから不得手な料理を除いては、掃除や洗濯にも彼はまったく抵抗がなく。「なんで私ばっかり! 少しくらい手伝ってよ!」なんていうお決まりの喧嘩が起こることがないのです。
会社帰りや土日の買い物だって当たり前。ひどい時には夜中だってポツリと「ビール飲みたいなあ」とつぶやくと「じゃ、行ってこようか」とコンビニに使い走りもザラ。若いのでフットワークも軽く、そそくさと出かけてくれます。
出張続きで家を空けることが多くても、部屋が散らかっていても付き合いで飲んでベロベロで帰ってきても。「お互い仕事してるんだから仕方ないよ。ムリしてもしょうがないじゃん」と言ってくれる年下の彼は、ガッツリ働きたい女性にはぴったりだと思いませんか。
ちょっとずつ、大人になっていった彼。私たちは同棲生活3年目に入籍しました。いわゆる再婚です。
次回は"バツイチで5歳年上"という絶対歓迎されない条件が揃った私が、初めて彼の両親と会うことになる「年下夫と結婚への道」について書いていきます。
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