バンコクは昼と夜、二つの異なる顔を持つ都市。夜が更けると突如として、女性を寄せつけない「男の楽園」へと変貌します。

欲望と誘惑にあふれ、はまると抜け出せない"魔都"バンコクの夜の街を、ちらり覗き見してみましょうか。

昭和ムードが漂う歓楽街・タニヤ©Bangkok Nites Partners 2016

みなさんはタイ出張中の夫や男性同僚が、タニヤのカラオケに喜々として向かう様子にふれ、「え、カラオケがそんなに楽しいの?」と、疑問に思ったことってありません?

日本人男性に人気の街といえば、タニヤ。1970年代から続く日本人向けの歓楽街で、日本語の看板がズラリと並ぶ風景は、まるで新橋や歌舞伎町さながらの雰囲気です。

©Bangkok Nites Partners 2016

タイのカラオケは、唄を歌う店というより、タイ人女性が接待するキャバクラ的な風俗店。企業接待の王道コースで、駐在員や出張者にはおなじみのスポットです。

酒を飲むだけならいいけれど、なんせタニヤ嬢はその道のプロ。自分磨きに熱心だし、魅せ方もバッチリ心得ているから、妻も子もいる駐在員がズブズブはまって恋に落ち、気づけば妻子も離れ、仕事も金もなくなり廃人に......なんてことも、この魔都バンコクではよくある話のようです。

魔都バンコクが舞台となった話題のムービー©Bangkok Nites Partners 2016

現在公開中の映画『バンコクナイツ』(富田克也監督)では、そんなタニヤ嬢にハマった日本人男性の話を軸に、バンコクの風俗や闇の社会が赤裸々に描かれています。「ああ、タイ通いの男たちはこんなことしていたのか!」「こんな奇しい世界もあるのか!」という驚きの連続は、3時間という長尺を感じさせないほど。

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風俗嬢の多くは、イサーン(東北)地方出身者が多いのだけれど、美しい故郷から体を売りに都会に出ていく女性たちが、いまもなおいる現実。そして、その需要を支えているのが日本のビジネスマンという構図。日本人を騙す日本人、戦争が残した傷跡やDVといった様々なテーマが交錯し、意味深い作品に仕上がっています。

心癒される、タイの自然にも注目を!©Bangkok Nites Partners 2016

夜の街と対照的に描かれているのが、タニヤ嬢"ラック"の実家がある、イサーン地方の牧歌的な風景です。世界を鏡のように映しこむ、黄金に輝くメコン川。懐かしい歌謡曲のようなタイ音楽モーラムの調べにのって、肌に絡みつく熱帯の風。タイを訪れたことのある人なら、瞬時にしてあの世界に引き戻される再現力の高さに感動することでしょう。

©Bangkok Nites Partners 2016

人々の日常にひょっこり精霊(ピー)が現れたり、モーラムの原型と言われる歌で病を治癒する巫女が登場したりするのも、まさにタイらしい世界観。日常と異界、現実とファンタジー、愉悦と地獄......さまざまな境界が曖昧で、混在する場所がタイという国なのかもしれません。

そろそろ熱帯の風が恋しくなったら、映画でタイを補給しよう。

[BANGKOK NITES]

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