女友だちに、恐ろしくモテる女性がいる。バツイチ、子どもなし、現在独身。
小柄で細っこくて、サラサラのロングヘアをキュッとひとつにまとめ、無邪気な笑顔と笑い声で周囲を和ませるかわいいタイプの女性だ。それなのに声の質は色っぽい。ルックスのかわいさとセクシーな声のギャップもあってか、同年代や年上の男性たちにファンが多いのが彼女のモテ特徴。

彼女がモテるのは、見た目や声以外にも理由がある。わたしとしては「人懐っこすぎるゆえに、男性から勘違いをされる」のもモテの一因だと思っている。

「全然なんとも思っていない男性から『俺のこと好きでしょう?』と、上から目線で言われることが多いの」と彼女も困惑しているほどだ。

女の隙につけこむ男心の構図とは?

彼女を見ていると、こちらがハラハラするほどの「隙」がある。男性から「結婚してるの? 彼氏いるの?」と聞かれれば、「いないんですよ~。独り身で寂しいものですよ」なんて正直に答えている。

もともと男性は勘違いしやすい生き物だ。たとえ彼女に他意がなく「現在の状況と事実を伝えただけ」だとしても、「独り身アピール=俺にアプローチ?」という公式ができてしまい、結果「俺のことが好きなんだな」と思わせてしまう。

「男性からそういう質問されたときは、よほど気になる人じゃない限りは『彼氏、いますよ』と答えたほうがいいよ。

しつこくされるから」と何度かアドバイスしたことがあるが、「どんな彼? なにをしている人?」と続けて聞かれたときに、ドギマギしてしまうからウソはつきたくないという。

そんな彼女のことを、口が悪い友だちは「思わせぶり」と揶揄する。わたしから見ると、決して思わせぶりなどの悪女ではなく、単なる天然ちゃんで、本当に悪意がない。そこもまた彼女の魅力なのだ。

先日は、仕事で知り合った男性から「仕事の相談がある」と食事に誘われ、その後ドライブのような車デートの流れになり(この時点で彼女は単に「家に送ってもらっている」と思いこんでいる)、夜景が見える丘まで連れていかれ、その男性に抱きつかれた......とプンプン怒っていた。

わたしはため息をつきながら「それ......、どこかの時点で『絶対にこの女性は俺に気がある』と確信したんだね。そうじゃないとそんな強気な態度とれないよね」と彼女に言ったところ、「思わせぶりなんて、ちらりともしてない!」と訴えた。

彼女に非があるとすればそんな無邪気なところだ。もっといえば、男性は「ふたりきりの食事」を承諾した時点で、勝手に「脈あり!」のスタンプを心に押す。男の"心のスタンプ集め"については、経験値を踏んだアラフォー女性ならば、何度か経験があると思う。

「食事をふたりきりでした」「飲みに誘ったら来た」はもちろん、「目があったら微笑んだ」とか「彼氏いなくてさみしい......というつぶやきをした」だけで「こいつ、俺に気がある!」といきなり回線がとんでもないところにつながる。それが男だ。

「でも『仕事の相談がある』と言われて誘われたのよ。てっきり仕事に関わると思ったからこそ出かけたのに......」と彼女。

「仕事の話なんて、食事の最初のほうでちらっと出てきただけでしょ?」と言うと「確かにそうだった。『仕事の相談ってこんなこと? だったらメールや電話でもよかったのでは』と思った」

男性が気になる女性を誘うときは、かっこつけで必ず「仕事の話、相談がある」が常套句と決まっている。食事に誘って振られたらカッコ悪いし、自分の気持ちを気取られたくはないから、「仕事」にかこつけるのが一番手取り早いのだ。

彼女だって経験を積んできたアラフォーだから、こんなことくらい体感でわかっていそうなのに、そこが天然。学習しないというか、素直すぎると言うか、とにかくいつも危なっかしい。

男性たちはそんな彼女の純粋さにつけこんで、厚かましくズカズカと彼女に近寄ってくる。彼女がバツイチ独身だと知ると、勝手に「苦労してるんだな」と思い、既婚者のくせに「僕があなたを幸せにします」とか「スポンサーになってあげてもいい」とまで口にする。

「そんなのきっぱり断りなさいよ!」というと「そのきっぱり......ができないから困ってるのよ」と彼女。何度かきっぱり断ったら、その後、逆恨みされたりストーカーまがいのことをされた経験があり、しつこい男性たちを無下にすると「あとが怖い」と言う。

「だから、『あなたのスポンサーになりたい』と言われたら、『まあ、ありがとうございます。

ではなにかの助けが必要になったらお願いします(ニコッ)』と答えているの」

こう答えると、相変わらず連絡はしてくるものの一線は超えず、距離を保ちつつしつこくされるだけだから、まだいいの......と彼女。よほど過去のストーカーまがいの経験がトラウマになっているのだろう。

そこで最近、彼女があみ出した「しつこい男性撃退法」が、「左手の薬指に、指輪をはめる」という作戦。

「この年齢だから、男性は『結婚しているかどうか』を必ずチェックしてくるでしょ。当然、既婚の女性には少しは遠慮するじゃない。だから『わたくし、結婚していますの』という無言の牽制をするために、自分で指輪を買っちゃった」。

彼女の左薬指は、オーダーで作られたリングがひっそりと輝いている。プラチナに小さなダイヤが埋められた上品なデザインで、結婚指輪ともファッションリングともとれる絶妙な指輪だ。

「指輪の効果は?」と尋ねると、「いまのところまだわからない。でも気安く誘われることは少なくなった気がする」と彼女。意外に効果を発揮している様子の、薬指の指輪ちゃん。

でもウソがつけない彼女のことだから、「結婚して何年目?」などと聞かれたら、答えにつまって「いえいえ、実は独身なんですよ~」と苦笑いして答えるのが目に見える。

確かに彼女には隙がたくさんある。しかし「その隙に入ってね」とは誰も言っていないのに、つけこんでしつこくする男たちのなんと厚かましいことよ。

彼女に起こる現象は、男性陣から見るとまったく違う見解になるんだろうなあ。これってあれだ、「ミニスカートはいてるくせに『パンツ見るな』だなんて! 見られたいからミニスカはいてるんじゃないの? 女って意味わかんね~」という男心と同じ構図だね。

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