新しいディスティネーションを探している。そんな女性におすすめしたいのが、アメリカ南部ルイジアナ州を巡る旅。
NYやLAにくらべると、情報も少なく日本人にとってなじみがない場所かもしれませんが、それだけに驚きと発見がたくさん。

若きジュリア・ロバーツが出ていた映画『マグノリアの花たち』の舞台といえば、ピンとくるかもしれません。今回は、ルイジアナ州からミシシッピ州にかけて巡りました。

地元名士にも人気の湖畔リゾート

まず訪れたのは、ルイジアナ州トリード・ベンド湖の湖畔に建つリゾート「Cypress Bend Resort(サイプレス・ベンド・リゾート)」。テキサスからも近く、避暑地としてやってくる南部のハイソサエティの人びとや、ヨーロッパ各地からの顧客が多いそうです。池越えのゴルフコースや、スパなどの施設も充実。また、目の前に広がるトリード・ベンド湖ではフィッシング体験も楽しめます。

©Cypress Bend Resort-aerial

この広大なトリード・ベンド湖、バス釣りの大会にもなる場所なのですが、なんと人工湖なのだとか。こんなところでもアメリカのスケールの大きさを感じました。観光客が多い場所を避け、現地の人に混じって湖畔のリゾートでのんびり。こちらの方が、リゾート感がぐっとアップします。

ベスト・サザン・スモール・タウンに選ばれた小さな町

リゾートから1時間ほどの場所にある街、ナッキトッシュは、今回の旅の目的地『マグノリアの花たち』の舞台となった場所です。

歩道には『マグノリアの花たち』の記念プレートが並んでいます。

さまざまな移民が作ってきたという歴史上、建物や料理などはフランス、スペイン、アフリカ、アメリカ先住民、クレオールと、複雑な文化を反映しています。町には当時の面影を残す邸宅が今も残り、国定歴史建造物地区として保護されていて、「USA TODAY」が選ぶBEST SOUTHERN SMALL TOWN 2015にも選ばれています。

人生を切り開いた3人の女性の物語

今でも瀟洒な邸宅が残っていますが、こうした家を建てることができたのは、その昔プランテーションなどで財産を作ることができたという理由もあります。ナッキトッシュの町の近くでは、南部の繁栄の基礎を築いたプランテーション農園のいくつかを見学することができます。

なかでも、その成り立ちと果たした役目から多くの人びとが見学に訪れるのが「Melrose Plantation(メルローズ・プランテーション)」です。この農園では、時代の波に翻弄されながらも強く生きぬいた3人の女性の物語を知ることができます。

1人目の女性は、奴隷から自由奴隷になったMarie Thérèse Coincoin(マリー・テレーズ・コインコイン:1742-1816年)。1742年に奴隷として生まれたコインコイン。その後、若いフランス商人の家政婦として働き、彼との間に10人の子どもを産みましたが、自由を求めて子どもたちと出ていくことを決意します。

その後、さまざまなビジネスで財を築き、1796年に彼女の息子1人がメルローズ・プランテーションを建て、奴隷から解放された自分たちのための農園の歴史がスタートします。

2人目の女性、Cammie Garrett Henry(カミール・ギャレット・ヘンリー:1871-1948年)は1894年に、メルローズ・プランテーションのオーナーだったルイス・メイヤーと結婚。

メルローズ・プランテーションは、南北戦争を経て荒れはてていたのですが、カミールは7人の息子と1人の娘を育てながら、メルローズ・プランテーションの復元を決意します。

地元の歴史に関する本や資料を収取し、膨大なスクラップブックを制作。芸術への関心も高く、地元の芸術家たちとも交流も深めていき、黒人のアーティスト、クレメンタイン・ハンターを迎えます。

3人目の女性は、その黒人のアーティスト、Clementine Hunter(クレメンタイン・ハンター:1886/1887-1988年)。メルローズ・プランテーションから近い、ヒィドゥン・ヒルプランテーションに生まれたクレメンタイン・ハンターは、メルローズ・プランテーションで働きながら農園での生活を描きはじめます。

空き瓶や空箱などに独特なタッチで描かれた作品は徐々に注目を集め、アーティストとして、もっとも大きな成功を収めた最初のアフリカ系アメリカ人アーティストとして評価されるまでに成長します。ジミー・カーター大統領からホワイトハウスへの招待状を受けとりましたが、彼女は出席を辞退しています。

クレメンタインの絵で一番大きく描かれているのは、女性。何もしない農園主の男性たちは小さく描かれ、キリストも天使も黒人として描いています。彼女の作品が生まれた背景を探しに訪れるファンのために、園内の建物を新たに修復していました。完成したらぜひまた訪れたい場所です。

歴史はそれぞれ異なりますが、この3人の女性からは、与えられた場所で自分ができる最大限の生き方を模索する姿を感じることができました。

南部料理とサザン・ホスピタリティ

ナッキトッシュでぜひ立ち寄ってほしいのが、地元の人気レストラン「Merci Beaucoup Restaurant(メルシー・ボクー・レストラン)」。店名がフランス語なのは、17世紀から18世紀にかけてフランス領だったころの名残です。名物はザリガニとナマズ。冷凍ものではないザリガニを使っているので味わいも抜群! 移民とともにさまざまな文化の味がミックスされた南部の料理は、本当に美味しく、アメリカの料理のイメージを覆すものだと思いました。

幸運にも、今回の旅ではミシシッピ州でお宅にお邪魔することもできました。素敵なテーブルセッティングや手作りの料理の数かずは、どれもおもてなしの精神にあふれています。

南部を旅していてよく耳にしたのが「サザン・ホスピタリティ」という言葉。プロの手に頼らず、自宅で用意した料理と空間で人をもてなすことができたら、お互いへの理解も高まるはず。「おもてなし」とは何かについても考えさせられる旅でした。

取材協力:ミシシッピ・リバー・カントリーUSA日本事務所 

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