プロバイオティクスを活用したスキンケアブランド「トゥーラ(Tula)」は、年齢を重ねることに前向きな意味を持たせようと、2020年10月14日から新しくカテゴリーに「エイジレス」を導入している。

トゥーラは、今後ブランドのマーケティング用の写真を修正しないと約束する新たな取り組み「#EmbraceYourSkin(ありのままの肌で)」をソーシャルメディアやTula.comで展開しており、エイジレスというカテゴリーはそれにあわせて追加されたものだ。

キャンペーンのローンチに際し、本カテゴリーには既存の3つの製品に加え、モイスチャライザーとセラムの2つの新製品が追加された。トゥーラのコアカスタマーは25~34歳で、その内75%が35歳以下。エイジレスカテゴリーへのトゥーラのアプローチは、多くの美容ブランドがその難しいテーマに取り組む際の手法と同様に、問題を前向きにとらえ直そうとしつつ、その解決策を提供することで、最終的に顧客に多くのメッセージを提示しようというものだ。

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ミレニアル世代が「アンチエイジング」カテゴリーにもたらした変化

「ミレニアル世代の顧客がアンチエイジングのカテゴリーに参入しはじめていますが、この世代は自分たちの価値観に合う方法で取り組みたいと考えている」と話すトゥーラのCEOサヴァンナ・サックス(Savannah Sachs)氏は、歳を重ねることによる変化と顧客に対する想いとして、以下のように語る。

「私たちは肌をポジティブにとらえており、その際に重要になってくるのが言葉選びだと考えています。私たちはエイジングに『アンチ』なものなんてないと考えていますし、トゥーラが今、エイジレスカテゴリーに参入してきたミレニアル世代にとっての主力ブランドになりたい。(アンチエイジングは)少し時代遅れで、とっつきにくいイメージがあるので、我々は異なるアプローチを取りました」(サックス氏)

またサックス氏によると、トゥーラの売上高は過去3年連続で前年比300%増となっており、売上高の50%以上をDTCのEコマースが占めているという。

30~34歳の顧客を対象に2020年1月に行った調査では、トゥーラの顧客の57%がアンチエイジング製品に興味を持っているものの、現在それらの製品を使用しているのは30%にとどまっていることがわかった。目的を明確に伝えながら、このカテゴリーをどのようにリブランドしたらよいかを理解するため、アンチエイジングに関するGoogleのトレンド検索を調査したとサックス氏は述べている。

BritishBeautyBlogger.comの創設者ジェーン・カニンガム(Jane Cunningham)氏は、遅くとも2017年以降は「アンチエイジング」というフレーズを使うことをやめている。年齢を問わないインクルーシビティ(包括性)という意識が美容ブランドの間で高まっていることに彼女自身は気づいていたが、こうした変化を美容マーケーターらがどう受け入れたらよいかを理解していないとも指摘する。

「長い間、ブランドは自社製品を販売するために、「老化の落とし穴」について女性に恐怖心を煽っていました。今は新しい方法で年配の顧客に製品の魅力を感じてもらうためにも、ブランドは真摯に考えなくてはなりません」(カニンガム氏)

美容業界のあらゆるブランドが婉曲的な表現を使用している。

ダヴ(Dove)には、50代と60代のモデルをマーケティングに用いた「プロエイジ」と呼ばれる製品ラインがあり、オレイ(Olay)は「エイジディファイイング」、ロレアル(L'Oreal)は「エイジパーフェクト」、ヴィシー(Vichy)のスキンケアは「スローエイジ」という言葉を採用している。また『アリューア(Allure)』誌は2017年に「アンチエイジング」という言葉を記事に使うことを廃止した

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矛盾を抱える美容業界は消費者とどう向き合うべきか。

ここ数年でブランドは進歩を遂げようとしているが、ブランドの広告に対する顧客の受け止め方は改善されていないのが現状だ。トゥーラが1万人に行った調査では、顧客の70%が美容広告で自信が低下すると感じていることが判明した。ソーシャルメディアが自分に自信を持たせてくれると答えたのはわずか1%だった

さらに、今日の美容業界に影響を及ぼす勢力はますます競合が激しくなっている。それにより、既存の商品やマーチャンダイジングの手法と、より新しい美容のコンセプトを一致させようとして、ブランド内でも矛盾が生じている。たとえば、多様性への取り組みを大々的に宣伝しながら美白商品を販売したり、ニキビケア商品のために肌に自信を持とうというキャンペーンを展開したりなどだ。

アンチエイジングの場合、遠回しな表現を使って、歳を重ねることを蔑むべきではないという考えを宣伝すると同時に、老化予防の製品を求める人々にそれとなく恥ずかしいという気持ちを抱かせてしまっているケースも多く、それ故、消費者間で「間違ったかたちで歳をとっているという」発想が蔓延している。

トゥーラの「エイジレス」という言葉の解釈は、優雅に年を重ねていくようなイメージを連想させる。しかし「エイジレス」という言葉の定義は「歳をとらない、あるいは歳をとっているように見えない」という意味であり、前向きな言葉として使用するには矛盾があるし、アンチエイジングという言葉を捨てようという業界の試みに対立している。

言葉を変えても、コンセプトは多かれ少なかれ変わっていないのだ。

「(エイジレスとは)私たちがリスクを負うことを厭わないものです。なぜならそれはとても大事なことだと考えているし、私たちの価値観は自信を鼓舞することにあるからです」とサックス氏は述べ、ソーシャルメディアやウェブサイトでの「#EmbraceYourSkin」キャンペーンのキャッチフレーズ「Beautiful before, beautiful after(これまでも、これからも美しく)」は、肌の状態は本来の自分の価値とは関係がないことを伝えると同時に、製品がすばらしい結果をもたらすことを暗示することができると付け加えた。

エイジレスというカテゴリーにはニュアンスや説明が必要なため、トゥーラはTula.comや、製品を独占販売しているアルタ(Ulta)の全店舗でオムニチャネルのアプローチをとっている。トゥーラはサックス氏いわく、ウィリー・ウォンカにインスパイアされたという楽しく明るいイメージの科学実験室をテーマに、写真や動画、アニメーションを制作した。

このキャンペーンは、顔にできるしわを、子どもを持ったり、笑ったことによってほうれい線ができたりといった、生きた証の象徴としてたたえようというものだ。また同ブランドが起用した700人以上の有償・無償のインフルエンサーが、それぞれのソーシャルページを通じて「#EmbraceYourSkin」のために取り組んでいることや、自信を持つことについて語っている。トゥーラの収益の50%以上はインフルエンサーのアフィリエイトマーケティングによるものだ。

「美しさはひとつではなく、多面的なものです。自分の娘や若い女性たちに美しさというのはいずれ失われるものだと思わせたくないなら、歳をとった女性は美しくないというナラティブはすぐにでもやめなくてはなりません。顔の変化に伴い、あなたの美しさも変化します。それによって失われるものなどないし、実際には、すべてのものは得られたものなんです。

人生の喜びや笑いを反映するかのようなほうれい線のある年配の女性を見れば、それのどこが美しくないといえるのでしょうか?」(カニンガム氏)

原文[Tula skin care confronts ‘anti-aging’ terminology with new ‘ageless’ category]

EMMA SANDLER(翻訳:Maya Kishida)

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