経団連は2024年6月10日、希望すれば夫婦それぞれが生まれ持った姓を戸籍上の姓として名乗り続けることができる「選択的夫婦別姓」の早期実現を政府に求める提言を発表した。
経団連では、DEIの推進を通じたイノベーションを喚起するとともに、企業の事業変革を促し、企業価値の向上に繋げるべく、各社の取り組みを加速する活動を展開。
海外渡航や契約時など、困った経験を持つ女性役員が多数
経団連によると、現行の夫婦同氏制度においては、いまだ95%の夫婦において妻が改姓している現状がある。これは、アイデンティティの喪失や自己の存在を証することができないことによる日常生活・職業生活上の不便・不利益といった、改姓による負担が女性に偏っていることを示している。
「通称(ビジネスネーム)」の浸透度を調べた調査では、企業は社員のキャリアの連続性を重視し、91%の企業が従来の姓を利用できる「通称使用を認めている」。 しかし一方、企業の現場では、 社員の税や社会保険等の手続に際し、戸籍上の姓との照合などの負担を強いられる、結婚・離婚といったセンシティブな個人情報を、本人の意思と関係なく一定の範囲の社員が取り扱わねばならない等も生じてしまう。
また昨今、ビジネスの一線で活躍する女性が増えるなか、女性が不便・不利益を感じる場面が一層増しており、88%の女性役員が「旧姓の通称使用」が可能である場合でも、「何かしら不便さ・不都合、不利益が生じると思う」と回答。アンケートでは、通称と戸籍姓が異なることで生じるさまざまなトラブルだけでなく、仕事・キャリアへの弊害や、アイデンティティの喪失、不公平感や心理的負担を感じる、また「旧姓を使用し続けるために形式的離婚を選んだ」といった声も上った。
一刻も早く、建設的な議論を
現在、婚姻時に夫婦同姓しか選択できない国は日本のみで、国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)は、日本に対し、夫婦同姓の強制を廃止するようにこれまで2003年、2009年、2016年の3度にわたり是正を勧告。1996年に法制審議会で選択的夫婦別氏制度の導入を答申したが、いまだ法案は提出できていない。
経団連は、本件を「女性活躍の着実な進展に伴い、企業にとっても、ビジネス上のリスクとなり得る事象であり、企業経営の視点からも無視できない重大な課題である」とし、「国民の意識・社会の環境も変容しており、制度の見直しの機運が高まっている。『国会で論ぜられ、判断されるべき事柄』との最高裁判所の判決が出されてから、8年が経過している。政府が一刻も早く改正法案を提出し、国会において建設的な議論が行われることを期待」と述べた。
経団連提言、調査・アンケート結果はこちら
[ 経団連 ]
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