「ビジネスケアラー」という言葉をご存知だろうか。仕事と介護を両立する人をさし、高齢化が加速する社会の課題を解決する重要な存在として注目を集めている。
2024年3月、経済産業省は介護をしながら働く人を支援するための経営者向けガイドラインを発表した。多くの企業がサポート体制を整えるべく動きはじめてはいるものの、真のニーズが顕在化しにくい課題に対しどう向き合っていけばよいのかわからないという声も少なくない。

2024年6月26日のMASHING UPオンラインセミナーVol.11では、仕事と介護の両立支援プログラム「LCAT」などを展開する、チェンジウェーブグループ代表取締役副社長・COOの大隅聖子さんが登壇。ビジネスケアラーに関するリアルなデータと共に、企業の課題や有効な施策などを聞いた。

仕事と介護を両立する人の数は急増。企業が取り組むべき課題とは

この20年間で日本の80代人口は3倍以上に急増。高齢化が加速する社会におけるビジネスケアラーの現状を、大隅さんはこのように解説する。

「ビジネスケアラーの数は40代後半に著しく増えます。今や企業の正規労働者の46.3%は45歳以上で、ビジネスケアラーまたは予備軍であると言えます。また、ビジネスケアラーのうち、6人に1人は2人以上の要介護者を複数人ケアしていますし、子育てと介護が重なる「ダブルケアラー」は7人に1 人となっています」(大隅さん)

働く世代の多くにこの問題は迫っているが、その実態はあまり知られていない。リアルな課題にはどういったものがあるのか。

同社事業「LCAT」にて集めたユーザーデータにより見えた課題。
介護に対する知識、体制などの準備をしているかによって負担は大きく違う。 資料提供/チェンジウェーブグループ

「介護は誰もがいつか経験することである一方で、予期せぬタイミングで訪れることもあります。その時のために『準備ができているか』どうかによって、仕事に復帰できる日数は大きく変わってきます。

たとえば、親が怪我をした場合、退院後の介護をどう進めるのか。ケアマネージャーやヘルパーと事前に話し合いができているかなど、知識と体制づくりをしっかり行えば、仕事への影響や負担も軽減できます」(大隅さん)

介護休業や介護休暇制度の利用についても、理解が進んでいない可能性がある。自身の生活や介護の金銭問題、配偶者・上司などからの遠慮、さらには任されている業務への影響を心配し、「あえて」使わないという人もいるそうだ。

「ビジネスケアラーの介護時短利用率は4.0%、介護休暇利用率は4.8%(「LCAT」を利用している企業従業員の回答数2,555のうち)。まだ、介護の問題を第一課題として取り上げている会社は少なく、『言いづらい』、『理解されない』と思っている人が多いのです。 また、介護休業については、ご自身が介護するだけでなく、"仕事を続けるために『両立できる体制を整える』"という意識を持っていただけると良いのではと思います。一人で抱え込まず、制度やサービスを活用すること、職場の理解が進み、さらに働き方が変わることで、休業しなくても両立している方もいらっしゃいます。望まない介護離職を減らすことは、企業や個人にとって必要なのではないでしょうか……」

※当オンラインセミナーは終了しました。

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