パナソニック コネクト 取締役 執行役員 シニア・ヴァイス・プレジデント CMO 兼 デザイン&マーケティング本部 マネージングダイレクター、DEI推進担当、カルチャー&マインド改革推進担当の山口有希子さん。 撮影:中山実華

パナソニックグループで、BtoBソリューションサービスを提供するパナソニック コネクト。

事業活動の土台となる“健全な企業カルチャーの醸成”と、“誰もが安心して働ける環境づくり”に注力しているという同社。互いを尊重し、支え合い、ともに成長できる企業をつくるためのチャレンジに迫る。

「健全なカルチャーなしでは、何も生まれない」

パナソニックグループの持株会社制移行に伴い、2022年4月に設立されたパナソニック コネクト。

「現場から 社会を動かし 未来へつなぐ」をパーパスに掲げ、サプライチェーン・公共サービス・生活インフラ・エンターテインメントなどさまざまな「現場」に寄り添い、課題解決に貢献するソリューションを提供している。

「自社工場でのCO2排出量削減や顧客へのサービス提供を通じたサステナビリティ施策と並んで、当社が注力しているのが“働く現場のウェルビーイング向上”です。

どれほど優れた戦略があっても、その土台となる健全な企業カルチャーがなければ組織はうまく機能しません」(山口さん)

働く「現場」をアップデートし続ける

資料提供:パナソニック コネクト

パナソニック コネクトは、前身のコネクティッドソリューションズ時代からカルチャー&マインド改革に取り組んできた。

きっかけは2017年4月、樋口泰行氏(現パナソニック コネクトCEO)が社長に就任したこと。外資系企業を渡り歩き日本マイクロソフトの経営トップを務めた経験を持つ樋口氏は、現場を重視した改革を推し進めてきた。

その施策の一つが「働く現場」を変えることだ。座席はフリーアドレスにし、社長室や役員室を撤廃。部署や役職に関わらず、誰とでもオープンにコミュニケーションがとれる環境を整えた。

資料提供:パナソニック コネクト

また、四半期に一度開催する全社集会「ALL HANDS MEETING」では、樋口CEOが毎回さまざまな拠点を訪れ、従業員と目線を合わせて自身の言葉でメッセージを発信。開催後のアンケートでは従業員からフィードバックが寄せられ、改善を続けているという。

ほかにも、社内SNSを活用した双方向のインターナルコミュニケーションの活発化、樋口CEOが社内外のゲストと対談するライブ配信番組「Ch.Yasu」、上司発の面談ではなく、部下主体の対話型1on1ミーティングの実施など、さまざまな取り組みを行っている。

資料提供:パナソニック コネクト

「堅苦しさをなくし、コミュニケーションがとりやすい環境をつくることで良いことも悪いことも言いやすい雰囲気が生まれ、意思決定のスピードも速くなります。

そのためにも、コミュニケーションスタイルや行動をたえずアップデートしていくことが重要だと考えています」(山口さん)

すべての従業員が安心して働ける環境づくり

健全な企業文化の醸成に向け、パナソニック コネクトはDEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)推進にも力を注ぐ。

「すべての人を尊重し、心理的安全性を確保すること。DEIの推進は『人権の尊重』そのものであり、すべての企業活動のベースとなるものです」(山口さん)

DEI推進において重要なのは「いかに一人ひとりが“自分事”として向き合えるか」だ。

そこでパナソニック コネクトでは、各事業部門に「DEI Champ」というDEI推進リーダーを設置し、それぞれの職場の特性に合わせた主体的なDEI浸透活動に取り組んでいる。

また、全従業員を対象としたアンコンシャスバイアス研修、外部から多様なゲストを招いて毎年開催するDEIフォーラムのほか、スポンサーを務める「東京レインボープライド2024」パレードに従業員200名が参加するなど、多様な活動を展開している。

資料提供:パナソニック コネクト

さらに、マイノリティギャップ解消の取り組みとして、男性の育休取得も推進中だ。

同社は2019年に株式会社ワーク・ライフバランスの「男性育休100%」宣言を発信し、男性育休ガイドブックの作成・配布や男性育休取得者のリアルな声を聞く座談会などを開催。その結果、2018年には13%だった男性育休取得率は2023年には92%となり、平均取得日数は約46日を実現している。

女性活躍推進に向けては、2035年までに女性管理職比率30%という目標を掲げており、2023年7月時点で女性取締役比率は33%を達成している。

このようなさまざまな取り組みを重ねてきたことで、2023年度の従業員エンゲージメント調査では、「私は一個人として尊重されている」と回答した従業員が78%、「私の職場では国籍・年齢・性別などに関わらず、すべての人が公平に扱われている」という回答が79%に上った。

「企業文化を変えることは決して簡単なことではありません。なぜなら文化とは組織の中に当たり前にある“空気”のようなものだからです。

人も社会も変わり続けているからこそ、私たちパナソニック コネクトもたえず変革を続けていかねばなりません」(山口さん)

一人の「声」と周囲のサポートが未来を変える

撮影:中山実華

最後に、話題の生成AIに関する取り組みを紹介したい。

2023年2月、パナソニック コネクトは日本国内の全従業員1万2500名に向け、ChatGPTをベースに独自開発したAIアシスタントサービス「ConnectAI」の提供を開始した。

このConnectAIを元に開発されたAIアシスタントサービス「PX-GPT」は現在、パナソニックグループの国内9万名の従業員が利用可能となっている。

資料提供:パナソニック コネクト

ConnectAI誕生のきっかけは、パナソニック コネクトのあるエンジニアの声だった。

「すべての従業員が生成AIを使えるようにすべきではないか」

この提案に、反対した役員は誰一人いなかったという。リスクを恐れて挑戦しないよりも、どうやったらリスクを抑えアイデアを実現できるのか、一緒に考えようと背中を押したのだ。すぐにプロジェクトが立ち上がり、サービス提供が始まると想定以上に多くの従業員が活用していることが分かっている。

新たなサービスやソリューションを生み出すには、自由な発想とそのアイデアを議論し、磨き上げていくための柔軟な環境が必要だ。パナソニック コネクトが注力する「人」と「組織」の力を高めるための取り組みは、多くの企業にとって参考になるはずだ。

※2024年4月に実施された、台湾政府・企業による日本のESG視察ツアー時の内容を抽出・編集したものです。
※本記事は、2024年7月11日掲載Business Insider Japanの記事の転載です。
文/星野愛、撮影/中山実華、編集/中島日和[Business Insider Japan Brand Studio]

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