「中小企業のためのダイバーシティ経営」リーフレットより

経済産業省は 「一人ひとりの多様性を活かし、その能力を最大限発揮できる機会を提供することで、中長期的に企業価値を生み出し続ける経営の在り方」をダイバーシティ経営と定義づけ、 企業におけるダイバーシティの取り組み支援のための「ツール」を開発している。

ダイバーシティ経営を後押しする2つのツール

ひとつは、企業が自社の現状を振り返り、今後必要な取り組みを見える化することで、ダイバーシティ経営を推進することを目的とした「ダイバーシティ経営診断ツール」(ダイバーシティ経営診断シートその手引き書)。ダイバーシティ経営の実践・取組定着のうえで重要な、「経営者」、「人事管理制度」、そして「現場管理職」の3者の取り組み状況と、取組の成果としての「組織風土」や「経営上の成果」の状況を可視化。

多様な人材が活躍できる職場環境をめざし、今後の施策を考えられるよう設計されている。企業が自社の状況を分析するための自己チェックツールとして活用したり、外部アドバイザーが企業の現状、課題を明確にするための支援ツールとしても活用が可能だ。

もうひとつが羅針盤を模した「ダイバーシティ・コンパス」。企業がダイバーシティ経営を行う際に原点に立ち返り、「何のためにダイバーシティを推進するのか」を考え、目指す姿や指針をコンパスの形で整理したもので、経済産業省とカルチャーデザインファームのKESIKI が共同で作成した確認ツールだ。ダイバーシティ・コンパスは「ビジョン(目指す姿)」を中心とした4層構造の円(コンパス)になっており、半円が「組織の行動指針(カルチャー、システム、リーダーシップ)」、もう一方の半円が「個人の行動指針(コラボレーション、ウィル、コミュニケーション)」への問いかけで構成されている。 自社がダイバーシティ経営の先に目指す姿やそれと照らし合わせた時の現在の取り組みの確認をする際に活用が可能。経済産業省は、より多くの企業にコンパスを活用していただけるように、今後、企業における具体的な活用方法について検討を進めていく予定とのこと。

2024年6月に発表したリーフレット「中小企業のためのダイバーシティ経営」

「中小企業のためのダイバーシティ経営」リーフレットより

そして今年6月には、中小企業のダイバーシティ経営の取り組みをサポートするリーフレットを作成した。対象は、ダイバーシティ経営をこれから始める、あるいは実際にどのように取り組みを定着させたら良いかわからないなどの課題を抱える中小企業の経営者・従業員。

このリーフレットは、始めの一歩に寄り添うコンテンツやツールを用意し、できそうなところから一歩踏み出すための、まさにサポート役である。コンテンツはわかりやすく4つ構成されている。

1. 有識者の対談

ダイバーシティ経営に関して、アカデミアの立場から東京大学名誉教授の佐藤博樹さん、企業の立場から株式会社由利代表取締役社長の由利昇三郎さん、政府の立場から経済産業省 経済社会政策室長の相馬知子さんの対談を掲載。三者三様の立場から、ダイバーシティ経営推進のポイントが語られている。

佐藤さんは、現在、中小企業は2つの理由でダイバーシティ経営を進める必要に迫られていると指摘。ひとつは労働市場の構造の変化。もうひとつは市場の不確実性の増大。ダイバーシティ経営を推進するには「今までの採用基準を問い直すこと。経営や仕事のあり方を見直せば、これまで該当しなかった人材も十分に活躍し経営に貢献できる」と話している。

ダイバーシティ経営を実践している企業を代表して、由利さんは「制度をつくったからと言って、いきなりうまくいったわけではありません。現場を変えたのは対話でした。 特に中間マネジメント層の考え方から変えていく際には、 対話を通して、今の仕事の仕方で何年も持続できるのかを問い、組織のあり方を変えていきました」と話している。

2. 中小企業7社のケーススタディ

ダイバーシティ経営を実践する7社の事例について、ダイバーシティ・コンパスを構成する6つの行動指針と関連させて紹介。取り組みの結果、管理職の女性が半数になったケースや若手とシニアの活躍を実現したケース、全社を巻き込み男性育休率100%を達成したケース等、具体的な取り組みを紹介している。

3. ダイバーシティ経営が企業成長にもたらす4つの効果

ダイバーシティ経営に取り組むことで、どのような効果が得られるのか。直接的成果(財務的価値)と間接的成果(非財務的価値)、社外インパクトと社内インパクトという切り口から、効果を4つ(1.プロダクト・イノベーション、2.プロセス・イノベーション、3.社外評価の向上、4.職場内効果)に分類し、それぞれ、経営にどのような影響があるのかを紹介。

4. ダイバーシティ経営の実践に向けた対話シート

ダイバーシティ経営の取り組みを深めるため、社員との対話を進めていく際に活用できる対話シートも用意されている。対話を通し、多様な視点が掛け合わさることで、経営者だけでは捉えきれていなかった課題の発見や、一人では生まれなかった新しいアイデアの創出につながることもある。

対話シートでチェックする項目は、「経営者の取り組み」「人事管理制度の整理」「現場管理職の取り組み」「組織風土」の4つ。それぞれのカテゴリーについて経営者と社員が互いの認識を持ち寄ることで、社内の制度や文化に対する認識の共通点やギャップを把握することができる。このギャップの認識は社内の課題の特定や改善策の策定につながり、ダイバーシティ経営に「どの分野から取り組んでいくか」「何から取り組んでいくか」など、経営者と社員の合意の上での取り組みの実施につながっていく。

「中小企業のためのダイバーシティ経営」のリーフレットはこちらから。

8/28セミナー開催。「中小企業のためのダイバーシティ経営」実践編

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上記に紹介したリーフレット「中小企業のためのダイバーシティ経営」をベースに、ダイバーシティ経営はなぜ必要なのか? どう実際に進めていけばいいのか?をテーマに、8月28日(水)、「MASHING UP 無料オンラインセミナー」を開催します。

本セミナーでは、本リーフレットを作成した経済産業省 経済社会政策室 室長の相馬知子さんと、 リーフレットでも先進事例として紹介されているサカタ製作所 代表取締役社長の坂田匠さんにご登壇いただきます。

相馬さんには、なぜ、中小企業は「ダイバーシティ経営」に取り組む必要があるのか? またどこから始めればいいのか? 取り組む上で何が大切なのかなどを解説いただきます。また坂田さんには、改善された制度、その後の社員の方々の動きの変化など、サカタ製作所の事例をお話いただき、最後のパートでは、お二人にダイバーシティ経営の実践における「対話」のあり方についてディスカッションしていただきます。

【このような人におすすめ】
・ダイバーシティ経営を目指す企業経営者・マネジメント層
・人事、DE&I推進担当者

MASHING UP 無料オンラインセミナー Vol.13
METI発! DE&I推進に課題を抱える中小企業に向けて
「中小企業のためのダイバーシティ経営」

日時:
2024年8月28日(水)12時~12時45分 @オンライン配信

登壇者:
相馬 知子さん(経済産業省 経済社会政策室 室長 )
坂田 匠さん(サカタ製作所 代表取締役社長 )
進行:MASHING UP 遠藤 祐子

視聴方法:
無料の事前視聴申し込み後、後日視聴URLがメールで届きます。


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登壇者プロフィール

相馬 知子さん(経済産業省 経済社会政策室 室長 )
民間企業入社後、事業部門・工場・本社において、人事・組織関連の業務に従事。2020年5月より、本社D&I担当役員直下のチームで、グローバルでのDEI実行体制の整備・方針策定・施策実行等を担当し、グループ全体のDEI推進に貢献。2023年8月より現職。経済産業省経済社会政策室にて、日本企業におけるダイバーシティ経営の浸透に取り組む。

坂田 匠さん(サカタ製作所 代表取締役社長 )
日本大学工学部機械工学科卒業後、1983年に大道エンジニアリング入社。1985年、サカタ製作所に入社。常務取締役を経て1995年に社長就任。趣味は歴史書などの読書。

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