2024年7月11日、山田進太郎D&I財団は、全国10万人以上の女子中高生を対象とした新たなプログラム「Girls Meet STEM Career」を開始した。
JR東日本、LINEヤフー、理化学研究所など全16の企業・団体と連携し、企業や研究機関のオフィスツアーやSTEM分野で活躍する女性のロールモデルとの交流などを通じて、STEM分野でのキャリアを希望する女子生徒たちに、具体的なキャリアパスを提供する。
初日となった11日には、理事の山田進太郎さん、常務理事 COOの石倉秀明さんが登壇し、また参画する16企業・研究機関が本プログラムへの想いを語った。後半には昭和女子大学附属中高の女子生徒が参加し、オフィスツアーデモ、LINEヤフー社で働く女性社員への質疑応答などが行われた。
産業界、教育機関と共にジェンダーギャップ解消へ
山田進太郎D&I財団 理事の山田進太郎さん。ダイバーシティ&インクルージョンを通して、誰もが性別や背景に関わらず好きなことができる社会をめざす。その第一弾として、STEM分野におけるジェンダーギャップの解消に力を入れていると話す。 画像提供/山田進太郎D&I財団同財団は、2021年から奨学助成金、Girls Meet STEMの二つの事業を行う。奨学助成金事業では高校1年、2年生を対象に文理選択をする際に理系に進むことを応援することを目的とし、所得や成績を問わずに運営している。
Girls Meet STEM事業では、「Girls Meet STEM College」、今回発表された「Girls Meet STEM Career」の2つのプログラムを展開。
同プログラムを始動した背景には、日本のSTEM領域への女性の大学進学率、およびエンジニアとして活躍する女性の割合が依然として低いという現実がある。STEM領域におけるジェンダーギャップの原因は複合的であるが、「理工系は男性の仕事」などの固定観念により、女子生徒がSTEM分野に興味を持っていても周囲の期待や自己認識によって進路選択に制約がかかってしまうことが、大きな要因として挙げられる。
「STEM領域のジェンダーギャップを解消するためには、産業界、教育機関、政府、自治体などが協力し社会に訴えていく必要があります。
理系人材の多様性をめざして
山田進太郎D&I財団 常務理事 COOの石倉秀明さん。 撮影/MASHING UP編集部また、STEM領域の女性の人材不足には、産業界も危機を感じている、と石倉さんは話す。
「経団連の調査によると約63.9%の企業が、理系領域で勉強している女性をたくさん採用したい、または拡大していく方向であると答えています。では、採用の難しさはどう乗り越えるか。文理選択で文系に進む女子生徒が多く、そうなると大学でも文系に進む傾向にあり、理系の職業を選択するルートが少なくなってしまう。私たちとしては、文理選択の前に理系分野に進む人生やキャリアの選択があることを知ってもらいたいと考えています」(石倉さん)
今回参画した16の企業・研究機関からは、「本プログラムを通じて、STEM領域における人材の多様性の向上に取り組んでいき、大きな社会変革に繋げたい」(LINE 西田修一さん)、「女性エンジニアの割合は依然として低く、大きなジェンダーギャップが存在している。枠を超えて、自分達の『好き』や得意を伸ばしていける社会をつくっていきたい」(JR東日本 中川晴美さん)などのコメントが寄せられた。
LINEヤフー LODGEにて行われたオフィスツアーデモの様子。 撮影/MASHING UP編集部後半では、オフィスツアーデモ、LINEヤフー社女性社員との質疑応答を実施。質疑応答では、事前に女子生徒へ質問内容を募集し、女性社員と共にディスカッションが行われた。
LINEヤフーで働く女子社員との質疑応答の様子。将来に向けてどのようなスキルが必要か、理系職に就くとどういったことが楽しいか、どんな人材が求められているか といった会話が展開された。女子生徒からは、「AIの導入が積極的に進んでいるなか、どのようなスキルや知識が必要か」などの質問が上がった。これに対し、LINEヤフーは「AIによって作ったプログラムをどう活用するか、その判断は人間でなくてはならない。これまで必要とされてきたスキルも備えながら、チームでプロジェクトを遂行する力などそういった能力も必要だ」と回答。
今、STEM分野でなぜ女性が求められているのか、なぜ男性の分野だとされてきたのかという問いに対しては、「日本では、まだまだ『理工系は男性の方が向いている』という固定観念が残ってしまっている。それでも、誰もが自分の好きなことに進んでほしいし、理系のキャリアや学問に興味を持ってほしい」と言葉をかけた。