日本経済の持続的成長に向け、経済産業省は一人ひとりの能力を最大限に引き出す「ダイバーシティ経営」の推進に取り組んでいる。中でも鍵を握るのは、国内約350万社のうち99%以上を占める、中小企業のダイバーシティ経営の実践だ。

2024年8月28日に行われた、MASHING UPオンラインセミナーVol.13「METI発、DE&Iに課題を抱える 中小企業向けのダイバーシティ経営」では、経済産業省 経済社会政策室長の相馬知子さんサカタ製作所代表取締役社長の坂田匠さんが登壇。中小企業経営者はどのようにダイバーシティ経営に取り組めばいいのか。企業の成功事例を元に話し合った。

中小企業の課題は深刻な人手不足。解決の糸口になるのが「ダイバーシティ経営」

資料提供/経済産業省

経済産業省が定義する「ダイバーシティ経営」は「多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」を指す。推進に必要なことは「経営者の取り組み」、「人事管理制度の整備」、「現場管理職の取り組み」だという。

では、ダイバーシティ経営は企業に何をもたらすのか。相馬さんが効果の一例を説明した。

「直接的な財務価値につながる成果は、新しい商品やサービスの開発等の“プロダクト・イノベーション”と、生産性や効率性が向上する“プロセス・イノベーション”です。間接的な成果は2つあり、1つは職場の就業環境の改善や社員満足度の向上といった職場内効果。もう1つは、企業の市場価値が向上し、優秀な人材の獲得につながる外的評価の向上です」(相馬さん)

また、ダイバーシティ経営は中小企業が抱える問題解決の糸口になるとも話す。

「中小企業の課題の一つに人手不足がありますが、一方で人員が十分に確保できている企業もあります。

そのような企業は、女性をはじめとした様々な人が働きやすいような業務プロセスの改善、定年制度の延長やシニアの再雇用、福利厚生の充実など、属性を問わず働きやすい職場環境の整備を行っています。サカタ製作所はその好事例ですね」(相馬さん)

ダイバーシティ経営の成功の鍵は「社員が経営者と同じ意識を持つ」こと

資料提供/サカタ製作所

サカタ製作所は、ダイバーシティ経営を実現するために働き方改革を行った。具体的な取り組みで特に目を引くのは、「男性育休率100%」の成功。他にもさまざまな改革を実現しているが、その始まりは「残業をゼロにしたこと」だと坂田さんは振り返る。

「きっかけは全社員が参加したある講演会でした。そこで語られた“残業の弊害”の講話で全社員が一致団結。約1年の取り組みで、残業がほぼゼロになりました。その後、男性の育休取得や、製造業では難しいとされるリモートワーク化も推進。おかげで弊社はホワイト企業と認知され、優秀な人材に恵まれています。売り上げも高水準で推移しており、社員の給与に還元できています」(坂田さん)

他にも、女性社員を管理職に登用し、外国人やLGBTQ+の人材を戦略的に採用。多様な価値観による新たな視点が、ビジネスチャンスにつながっているという。ではなぜ、サカタ製作所はこれほどダイバーシティ経営に成功しているのだろうか。

「弊社では経営改革のアイデアが社員から多数寄せられます。

良い案だけでなく、成功しそうにないと思われるアイデアもありますが、トライしてもらいます。失敗した反省が、次の成功に繋がるからです。ダイバーシティ経営には、トップの意識改革はもちろん必要ですが、社員が経営者と同じ意識を持つことが重要なのではないでしょうか」(坂田さん)

※当オンラインセミナーは終了しました。

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