撮影/MASHING UP

記事のポイント

  • コカ・コーラ ボトラーズジャパンとファミリーマートがアライ活動で協働。
  • 国際カミングアウトデーにゲストを招いたイベントを開催し、社内外で啓発活動を実施。
  • 両社混合チームでLGBTQ+ALLYに関するロゴを共同制作し、多様性の象徴として採用を予定。

SDGsの分野における連携・協力事業を推進しているコカ・コーラ ボトラーズジャパンとファミリーマート。2024年10月11日の「国際カミングアウトデー(National Coming Out Day)」に協働イベントを開催した。

SDGsの中で両社が力を入れているのは、性的マイノリティを理解し支援する「アライ」活動だ(※)。アライの考え方を学び、社内はもちろん社会にその思いを広めるべく積極的に活動している。今回のイベントにはゲストに、女装パフォーマーでライターのブルボンヌさんを迎え、2024年のアライ活動の報告などを行った。

※ アライ(Ally)は同盟・仲間。この場合、LGBTQ+など性的マイノリティの課題について共に考え、行動する仲間のことを示す。

アライ活動は、企業の新しい視点の発掘や学びにつながる

LGBTQ+に関する取り組みを発表するファミリーマートの小川和之さん(左)とコカ・コーラ ボトラーズジャパンの林真伸さん(右)。 画像提供/コカ・コーラ ボトラーズジャパン

両社は「多様性をちからに」をテーマに、2023年より協働を開始。昨年の「知る」に引き続いて、今年は「動く」をコンセプトに、アライメンバー自らが考え、行動することを目的とした活動を展開

まず、ファミリーマート マーケティング本部サステナビリティ推進部の小川 和之さんが、LGBTQ+に関する取り組みを発表した。

ファミリーマートは、「like Family:多様性をちからに。誰もが活き活きかがやく未来へ」をミッションに掲げてダイバーシティを推進

中でもLGBTQ+は、“正しい知識と理解醸成”と“安全・安心な場づくり”を行っている。例えば、社内イントラネットで基礎知識動画やオリジナルハンドブックを公開したり、相談窓口を設置。社会に向けた取り組みも積極的に行い、ソックスなどのレインボーデザイン商品の売り上げの一部を「認定特定非営利活動法人 ReBit」へ寄付している。

「2023年4月には、ファミリーマートへの加盟要件においても、事実婚や同性パートナーでも法律上の夫婦同様に加盟申込みが可能になりました。これらの功績が認められて、弊社は4年連続、PRIDE指標ゴールドを受賞しています」(小川さん)

続いてコカ・コーラ ボトラーズジャパンからは、人事総務本部 人材&組織開発部 DE&I課の林真伸さんがLGBTQ+施策に関して発表した。中期経営計画の実現をささえる人事戦略としてDE&Iを掲げる同社で、やはり注力を惜しまないのがLGBTQ+の分野だ。

社内制度関連では、性別の表記変更や会社の制度を拡充し、働きやすい環境を整備している。たとえば「性別移行休暇制度」は、性別移行にかかる通院や手術などに必要な休暇に対して、積立有給が使用できるものだ。また、服装の規定表記から、男性・女性といった“目に見える性別”を廃止する「Sawayaka Style(従業員ドレスコード)」なども制定。

2022年7月、「LGBTQ+&アライのためのハンドブック」を策定・導入したことも大きな試みだ。これらの取り組みが評価され、同社は2022・23年の2年連続で、PRIDE指標レインボーおよびゴールドをW受賞している。

ゲストのブルボンヌさん。
ライター・タレント活動を行いながら、全国自治体や大学、企業においてジェンダーや多様性に関する講演活動、全国のLGBTQ+イベントでの司会など多方面で活躍している。 撮影/MASHING UP

両社のLGBTQ+施策の発表を受けて、 ゲストのブルボンヌさんは「ある統計によると、潜在的に性的マイノリティの当事者意識を持っている人は10%とも言われています。つまり、LGBTQ+は、約1300万人のマーケット。両社が行なっているアライ活動は、今まで意識してこなかったアイデアやプランの発見、そして、企業として大事なメリットや学びに繋がる素晴らしい取り組みだと思う」と感想を述べた。

「アライの輪」イメージを共有、活動への意識を高める

両社混合のチームに分かれて、「アライの輪」ロゴイメージをディスカッションした。 画像提供/コカ・コーラ ボトラーズジャパン

続いて、2025年6月の「プライド月間」に向けて、プロモーションロゴの検討会を実施。作成したデザインはアライメンバーと両社社員の投票等、各種コミュニケーションを経て、2025年以降様々な形で活用予定だ。

両社混合の5チームとオンライン参加者が、思い思いに「アライの輪」のイメージを描いた。

各人がデザインしたロゴを、オンライン参加者とともに発表を行った。 撮影/MASHING UP

「アライという“ありたい未来”を光で表現し、様々な人たちがアライの中に共に進んでいくイメージでデザインをした」

「一人ひとりが違っていい。個々が寄り添って“愛”や“心遣い”という、他人を思い合う気持ちの雫が波紋となって広がる世界を表現した

“形づくることはナンセンス”という意見が出ました。曲線もあり凸凹もありながら、様々な形や色に変形して一つの世界を形づくっていく、というイメージです」

と、企業の枠を超えた協働によるデザイン案を発表した。

ジェンダーの枠を超えた発想と創造性が大事

左から、コカ・コーラ ボトラーズジャパン執行役員 最高人事責任者兼人事・総務本部長の東由紀さん、ブルボンヌさん、ファミリーマート サステナビリティ推進部 CSR・ダイバーシティ推進グループ マネジャーの大橋結実子さん。
撮影/MASHING UP

そもそも2社はなぜ、DEI分野で協働するようになったのだろうか? コカ・コーラ ボトラーズジャパンの東さんは次のように語る。

「ファミリーマートさんとアライ活動を協働させていただいているのは“温度感”が同じだから。LGBTQ+の領域では、アライを増やしていこうという意識が共通しています。企業同士が連携することでパワーが生まれ、サステナビリティやCSR、DEIの観点からも、社会にインパクトが与えられる温度感が両社ともに揃っていると思います」(東さん)

大橋さんは、協働による「拡散力の大きさに驚いている」と話す。

「アライの協働イベントを通して思うことは、2社で発信する拡散力の大きさです。自社だけではなし得なかった知見やアイデア、リソースで、社会に対してより大きく還元ができていると実感してます」(大橋さん)

さらに、「検討段階ですが、障がい者雇用など多くのDEI分野での連携も実現したい」と今後の展望を語った。

ゲストのブルボンヌさんは、当事者の観点から「コカ・コーラ ボトラーズジャパンさんやファミリーマートさんのような企業が増えるといい」とコメント。

「人口が多かった1970年代の日本では、企業が使い勝手のいい型で抜いたような企業戦士を雇って、生産性をあげていた。しかし今の日本は人口のパワーがなくなり、企業が求める形の人材は多くありません。今の企業に求められることは、前時代では型で抜いて捨てていたような、ジェンダーの枠を超えた発想や、多様な人の創造性を活用することです。『この人はうちの企業に合わない』と切り捨てるのではなく、『企業の新しいパワーにできないか?』という観点で人材利用ができる。企業の文化にアライの考えが浸透し、そのような企業が増えていくことを望みます」(ブルボンヌさん)

撮影/MASHING UP

東さんはイベントを振り返り、「自分ならどんな行動ができるのかを、具体的に考えられるステージまで来ています。

社員たちのアライに対する熱い気持ちを感じました」と今後にも期待を寄せる。

どんな人も阻害感や不安を感じず安心して自己実現ができる社会がゴールだ。アライの輪を無限大に広げていく両社の活動は、これからも続く。

コカ・コーラ ボトラーズジャパン, ファミリーマート

取材・文/石上直美

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