2024年11月27日のMASHING UP第4回賛助会員ランチ勉強会は、1年の振り返り。この会に先立ち、「2024年に各社が取り組んだDEIテーマ/事例。
そのなかから特に関心の高かった「KPIの設定」「自分ごと化」「自律的キャリア」という3つをピックアップ。具体的にどのような課題があり、それに対してどんな取り組みをしているのか。各社の事例紹介を交えながら、ディスカッションがおこなわれた。
当日のゲストはMASHING UP理事である、SDGインパクトジャパン 代表取締役の小木曽麻里さんとニューラル 代表取締役CEOの夫馬賢治さん。参加者からは率直な意見も数多く飛び出す実り多い時間となった。
KPIは会社における、すべての戦略が凝縮されたもの
撮影/中山実華最初の議題は、「KPI設定」に関する悩み。
AOKIホールディングス 上田若菜さんは、女性管理職の割合という目標はあるものの、社内で「なぜ取り組まなければならないのか」という声もあるなかで、どの数値を目指し、どう伝えるかに苦心しているという。
「女性管理職の割合は、男女の従業員割合を目標」としているTANAKAホールディングス 原田和佳子さんは、そう設定した理由に、会議体に女性がいなければ女性向けの施策が出てこないこと。そして、従業員と同じ割合の女性がいないと、彼女たちの声を代弁できないことを挙げた。
夫馬さんは、社会からの要請だけで押し通すと共感を呼びにくいので、「なぜ30%なのか、どういう根拠で50%になっているのか、担当者が数字を掘り下げて理解し、主語を『当社』に置き換えて話すこと」や、「一緒に考えていくところに、工夫の余地がある」とアドバイス。小木曽さんからは、「KPIは会社における、すべての戦略が凝縮されたもの」で、「(公表した数字は)世の中に対する約束でもあるので、達成できなかったらきちんと説明すること」が投資家対応においても重要であることが指摘された。
意外性のあるキーパーソンを発掘すると、“自分ごと化” されやすい
撮影/中山実華次に話し合われたのは、「“自分ごと化” して主体的に取り組んでもらう風土を作るには、どうしたらよいか」という課題。今年7月からコーポレート担当になったというポーラ 後藤利佳子さんは、同社が進める「WILL起点の変革」を実現しようと多くの社員は意欲的に活動しているものの、人によって温度差があるなかで全社員を巻き込んでいく方法を模索しているそうだ。
この課題について、日本ロレアル 堀田満代さんは「地道な活動を一つひとつ重ねていくしかない」と自身の経験を語る。グローバル企業の同社はリテラシーが高いと思われているが、日本法人に所属するのは80%以上が日本人で、昭和世代も存在する。そのため、DEIの理解度には個人差があるのは同じだという。多様な価値観を広げようと呼びかけたアライコミュニティに、最初に集まったのは12人だったが、「東京レインボープライド」に参加するなど “見える化” を進めた結果、いまは85人にまで増えた、と地道な活動の成果が披露された。
夫馬さんからは「あの人が?」という意外性のあるキーパーソンを発掘し、話者になってもらうと自分ごと化されやすいことや、DEI・人権・環境などを多くの人に伝えるときは、相手を糾弾するとコミュニケーションが断絶してしまうので、「正義面(づら)」をしないようにしている、という自身が心がけるコツも伝えられた。
「人生で実現したい社会・未来」を起点に
撮影/中山実華そして3つ目の「社員の自律的キャリア形成」については、FICC 戸塚省太さんから、同社の「インサイドアウト ビジョン設計」が紹介された。その特徴はパーソナルビジョン、つまり自分のありたい姿を投影した「人生で実現したい社会・未来」を起点にすること。そこに「会社の環境・機会・資源」を重ねて長期目標を立て、最後に個人ミッションである今期目標に落とし込むことで、会社と社員の目標に相関性を持たせることに成功しているという。
戸塚さんは “推し活” に夢中の部下と話をするうちに、「応援するのが好き」から「会社の人たちが活躍する姿を見てみたい」へと思いが発展する姿を見て、対話によって解像度が上がることを実感したそうだ。ここのインサイドアウト ビジョン設計に、参加者も興味津々。小木曽さんも「この取り組みは素晴らしい」と絶賛した。
撮影/中山実華ほかにも各社での取り組みの紹介や悩みを語り合うことを通して、気づきや解決のヒントを得た参加者のみなさん。「刺激を受けた」「明日から実践したい」という声があがるなか、フラットに意見を交わせるこの会のスタイルに注目し、「会社でも、こうした会を取り入れてみたい」という感想も。
MASHING UPでは2025年も引き続き、DEIの促進とESG理解・情報に関するオフライン勉強会や、懇親会を実施していく。
執筆/山本千尋、撮影/中山実華
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