午後4時に仕事を終えて帰宅する──。2024年の世界幸福度調査ランキングで再び1位を獲得したフィンランド。
その働き方が、近年の働き方改革の動きと相まって注目を集めている。1人あたりのGDPが日本の約1.6倍(2023年)でありながら、プライベートを大切にし、余裕を持った働き方を実現している背景には何があるのだろうか。

2024年12月19日に開催されたMASHING UP オンラインセミナー Vol.20「フィンランドの働き方から学ぶ 効率よく働き、効率よく休む方法」では、『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』(ポプラ新書)の著者である堀内都喜子さんが登壇。

フィンランドの働き方や、仕事と幸福度の関係について語った。彼らが「効率よく働き、効率よく休む」ライフスタイルをどう確立しているのか、その具体的な秘訣に迫る内容となった。

自分の意見も目標もしっかり伝える

フィンランド企業文化の特徴。オフィスは社員同士のつながりができるよう環境を整え、ウェルビーイングやモチベーション向上につながるような工夫がされている場合が多いという。 資料提供/堀内都喜子

世界の幸福度ランキングで、7年連続1位を誇るフィンランド。同国はSDGs(持続可能な開発目標)の達成度でも3年連続で世界トップを記録しており、2035年までにカーボンニュートラルを実現することを目標に掲げている。持続可能な社会の実現に向けて、さまざまな新技術やイノベーションが生み出されている。そんなフィンランドの企業は、個人の働き方に対してどのような支援を行っているのだろうか。

「フィンランドでは、どの業界においても一日8時間、週40時間以内に労働時間を収めることが徹底されています。また、子育てや家族の事情を考慮したフレックスタイム制度やリモートワーク制度が広く普及しており、育児休業も男女問わず取得する文化が根付いています。

現在では男性の8割が育休を取得するまでになっており、特に管理職や上層部の人々が積極的に育休を取る傾向にあります。今では育休を取らない人がいると、『何か特別な事情があるのだろうか?』と思われるほど」(堀内さん)

さらに、男女の家事労働時間についても「50/50が理想だ」と考える若年層が増えていると堀内さんは語る。「フィンランドでは年齢や性別による偏見が少ないという特徴があります。そのおかげで、自分の意見を言いやすい環境が整っているんです。上司から何かを頼まれても、『ノー』と言える。個人を尊重することを大切にしています」

また、フィンランドの企業文化には「ジョブディスクリプション」の考え方が広く浸透している。仕事の内容や目標を最初に明確にする仕組みで、これによって上司が部下を信頼し、仕事を任せる姿勢が一般的になっている。また、一部の企業では肩書きをほとんど設けない、あるいは肩書きを柔軟に扱うなどの工夫を行い、フラットな組織づくりを推進しているそうだ。

休むことを大切にする文化

堀内都喜子さん(右)/ライター、通訳としても活動。2013年よりフィンランド大使館広報部に勤務。著書『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』(ポプラ新書)は、読者が選ぶビジネス書グランプリ2021でイノベーション部門賞を受賞。 Screenshot: MASHING UP via YouTube

フィンランドではコロナ禍以前から、公的手続きがすべてデジタル化されている。例えば、引っ越しをする際も市役所や区役所に足を運ぶ必要はまったくなく、出生届の提出もオンラインで完了する。

こうした仕組みにより、市役所や区役所を訪れる機会が人生の中でほとんどなくなりつつあるという。フィンランドの柔軟な働き方やDX化が違和感なく進んだ背景には、フィンランド人が「休むこと」を大切にしている文化があると堀内さんは語る。

「いかに効率よく休み、心身をリセットするかが重要なのです。例えば、長期休暇の申請は半年前から行い、みんなが休暇時期を調整して重ならないようにしています。また、長期休暇だけでなく、急な体調不良や家庭の都合で休む場合にも対応できるよう、常にペアを組む形で代わりの人を任命しておきます。誰が誰のバックアップを担うのかを明確にし、必要な業務内容を文書化や言語化しておくことが大事」(堀内さん)

休暇中は同僚や上司からの連絡を一切受けないことや、メールを確認しないことが徹底されているのだそうだ。

セミナーでは、このほかにも、

  • オープンで安全な職場
  • リスキリングや生涯教育
  • 社会課題への取り組み

などのトピックスを紹介。

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