親を亡くした生徒らを支援する「あしなが奨学金」の資金を当事者の学生らが募る街頭募金が今年も千葉県内で始まった。あしなが高校奨学金(高校生が対象)の本年度の県内申請者数は過去最多を更新するペースだが、資金不足からその半数近くが不採用。
学生募金事務局の千葉ブロックマネージャーを務める大学3年生の工藤杏介さん(20)=成田市=は「お金がないと遺児たちの進学の夢はかなえられない。多くの子を助けるために1円でも10円でも力になってほしい」と呼びかけている。
◆父亡くした幼なじみ
 工藤さんはあしなが奨学生ではない。それでも、同事務局の活動に参加するようになったきっかけは、小学生のころに父親を亡くした幼なじみの存在だった。とても明るい性格だった幼なじみが、父を亡くした直後は別人のように憔悴(しょうすい)しきっていた。「どうにかして支えられないかと考えたが、力になれなかった」。無力感が工藤さんの心に刻まれた。
 時を経て、その幼なじみがあしなが奨学金の街頭募金活動に参加しているのをSNSで目にした。「この活動に参加すれば、幼なじみのような境遇の子の力になれるのではないか」。勇気を出して幼なじみに連絡を取り、同事務局に加わると、厳しい状況に置かれた学生が大勢いることを知った。
 あしなが奨学生が集う合宿で出会った1人の男子高校生は、大学で医療を学ぶ目標があった。しかし、父親を亡くし、妹を養わなければならないことから「高校卒業後は就職してほしい」という母親の気持ちに応えようと、卒業後は就職を考えていたという。
金銭面から夢を諦めようとしている生徒を目の当たりにした工藤さんは「奨学金を借りていても、家庭の収入が足りていない状況がある」と実感した。
 あしなが育英会が全国の同高校奨学生の保護者を対象として昨年10月に行った調査によると、個人所得から税金や社会保険料を差し引いた手取り収入を指す「可処分所得」の年間平均が高校奨学生世帯では187万8千円だった。2023年国民生活基礎調査の全世帯平均405万8千円に対し、半分以下の水準だ。
 本年度のあしなが高校奨学金は、県内では今春の高校入学予定者75人が申請したが、うち37人が資金不足から支援を受けられなかった。
 奨学生でも苦しい状況の生徒が目立つ中、奨学金すら受けられない生徒はどのような苦境に立たされているのか。工藤さんは「一人でも多くの子を助けるためには、街頭募金でお金を集めないといけない」と力を込める。
◆各駅前で正午~午後5時
 県内での街頭募金は▽JRの千葉駅、船橋駅、本八幡駅(26、27日)▽つくばエクスプレス流山おおたかの森駅とJR新浦安駅(26日)▽JRの松戸駅と津田沼駅(27日)-の前で正午~午後5時に行う。
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