多古町議会(定数14)が議長を選出できない異常事態に陥っている。町長派と反町長派の勢力争いを背景に、議長選を21回行いながら当選者2人が辞退する状況が続いており、会期が延長された19日はさらに5回を重ねたものの、議会を束ねる新リーダーは決まらないまま。
先行きが見通せない中、町民からは「一体何をやっているのか」とあきれる声も。学識者は「住民の意見を率直に聞くべき。両派に反省を促したい」と述べ、双方の話し合いによる早期解決を求めた。
 同議会の議長任期は定まっていないが、慣例として2年間とされる。今回の議長選は、鵜沢茂前議長が臨時議会初日の13日に「一身上の都合」を理由に議長を辞職したことで行われた。
 町長派と反町長派が7対7で拮抗(きっこう)する中、14人全員が投票。1回目から佐藤幸三町議と橋本孝之町議の2人が記名されている。ほぼ毎回同数で、くじ引きで当選者が決まっても、両者が辞退するため投票が繰り返されている。
 議長を出すと採決で数的不利になることから、少数派にならないよう両派が相手側に押しつけ合っている格好。19日はさらに5回実施したものの、再び両者が辞退を重ね、20日までの会期延長が決まった。
 2023年春に行われた町議選後の議長選も1回では決まらず、最終的に町長派から出した経緯がある。町長派の議員は「リスクを承知の上で議長を出した結果、議会の採決権を握られ、道の駅周辺に整備する計画だった地域経済活性化拠点施設に関する議案も否決されてしまった」と話し、「今の町長に実績を作らせたくないのではと勘ぐってしまう」とつぶやいた。

 反町長派の議員は「これまでの2年間、多くの議案を採決してきたが、否決したのは数議案。頭ごなしに反対しているわけではない」と主張。拠点整備に関する議案の否決については「当初示されていた事業費よりも増額し、他にも疑義があった」と訴え、町政へのチェック機能を果たしていることを強調した。
 会期の延長が決まった後、議会運営委員長の飯田良一町議は「混乱を招いていることについては頭を下げる。町民のためにも議長を選出できるよう努力を重ねたい」と釈明した。
 こうした状況に、町民は「一体何をやっているのか。もめている状況をはたから見られ、町に良い話も入ってこなくなる」と心配し、別の町民からは「町の評判が落ちる一方だ」と落胆する声が上がった。
 政治学や地方自治を専門とする千葉商科大学の田中信一郎教授は千葉日報社の取材に「両派の言い分も分かるが、現状にはあきれる。住民の意見を率直に聞くべき。両派に反省を促したい」と述べ、解決に向けて「原点に立ち返って両派で話し合うしかない」と指摘した。
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