自身が院長を務めていた歯科医院で患者の女性から「講演会の協力金」などと称して現金200万円をだまし取ったとして、千葉県警は19日、詐欺の疑いで、歯科医院「高橋デンタルオフィス」(千葉市中央区、閉業)の元院長、高橋仁一容疑者(58)=茨城県古河市東1=を逮捕した。県警捜査2課によると、黙秘している。
高橋容疑者が患者に説明していた「講演会」は存在しなかった。県警には容疑者の患者からの相談が相次いでいて、その被害総額は1億円を超えているという。(大村慧)
 同課によると、高橋容疑者は2013年ごろから、歯科医院の賃料を滞納し始めた。20年10月には滞納額が700万円を超えたため、賃貸借契約が解除された。同課は賃料などさまざまな負債が膨らみ、自転車操業状態になっていたとみている。
 逮捕容疑は2021年3月30日ごろ、千葉県内の患者の50代女性に対し、「講演会の協力金」などと称して、治療費と同額をインプラントメーカーに支払えば後日、メーカーから返還されるなどとうそを言い、同月31日、女性から現金200万円をだまし取った疑い。
 同課によると、容疑者は「講演会に症例として(治療の)資料を提供してほしい」「支払い済みの(200万円の)治療費と同額の現金を、インプラントメーカーに提供すれば後日、メーカーから支払い済みの治療費相当額と合わせ、返還が受けられる」などとうそを言ったという。実際には、講演会はなかった。
 同課は手口などから、容疑者が治療費と同額をさらに現金で支払える患者を選定していたとみている。逮捕後の事情聴取に対し、容疑者は「弁護士と話をするまでは黙秘します」と供述している。
 県警には、これまでに十数人の患者から被害の申告があり、相談も含めると被害総額は1億円を超えるという。インプラント治療や金銭貸借に関するトラブルも70件ほどある。

 千葉日報の取材に応じた患者の1人は「治療は全然進めてくれないし、協力金は何度言っても返してくれなかった」と明かす。
 容疑者は高橋デンタルオフィス閉業後、別の歯科医院で歯科医として働いていた。 
 帝国データバンクによると、高橋デンタルオフィスは昨年7月、約19億円の負債を抱え破産した。
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