ついに憧れのマウンドに上がった。プロ2年目、19歳の早坂響投手が7月12日のライオンズ戦で3番手として本拠地ZOZOマリンスタジアムで初登板した。
名前がコールされると、待っていたといわんばかりにスタンドから歓声が沸き起こる。ファンのコールと拍手を浴びながら早坂がマウンドへと向かった。
 「結構、緊張していたので最初は感慨とか昔のこととか思い出す余裕はなかったけど、歓声とかを聞いてこみ上げるものがありました」
 翌13日の練習後、早坂は夏の雲を見上げながら、そう振り返った。2軍戦では登板があるもののやはり1軍の舞台は特別だ。しかも松戸市出身でファンクラブ会員でもあった早坂にとって、子供の時からよくスタンド観戦していた憧れのスタジアムになる。ドラフト指名直前の高校3年の秋もクライマックスシリーズファーストステージを内野席で観戦。藤岡裕大内野手が延長戦で同点3ランを打ち、最後は安田尚憲内野手がサヨナラ打を打ち勝利した幕張の奇跡と呼ばれる伝説のゲームを生で見た。「あの試合は本当に鳥肌が立ちました。すごいなあと。そのあと、ドラフトがあって、マリーンズに指名をしていただいて、今、こうやってその試合でプレーをしていた皆さまと一緒にいる。本当に縁を感じますし不思議だなあと思います」と笑った。
 この時期になると高校時代も思い出す。
3年夏は県大会5回戦で専大松戸に敗れた。6失点完投負け。舞台はZOZOマリンスタジアムだった。「マリンで2回、試合ができた。それは本当にボクたちにとっては素晴らしい想い出になりました。今でも当時の仲間たちと会うとそういう話になります」と振り返る。11人いた同級生のチームメートのうち、今も野球を続けているのは早坂と大学でプレーをしている1名の2人だけだ。仲間たちはいつも早坂の動向に注目をしており、ZOZOマリンスタジアムデビューとなったこの試合も投げるかどうか分からないにも関わらず、観戦に来てくれた。仲間たちの代表としてプロ野球の世界で頑張りたいという想いがどんな時も早坂の心に響いている。
 プロ初登板となった5月11日のライオンズ戦(ベルーナドームは)は1回を1失点。2度目の登板となった5月14日のイーグルス戦(楽天モバイルパーク)を無失点に抑えた後に登録を抹消された。2軍では1軍で得た経験を元に課題と向き合い、抹消後、2軍戦8試合で防御率0・71という誇れる数字をたたき出して1軍再昇格を果たした。

 「マウンドに上がったら勝負。強い気持ちでファーストストライクをしっかりと取って、自分の持ち味であるストレートでどれだけ勝負できるか」と早坂。ピッチングにおいてはリズムを大事にしながら投げ込む。本拠地デビュー戦は1回、打者3人を10球で料理。成長した姿を見せつけた。
 「まだこれからなので。どんどん投げてアピールをしたい」。すでに同期入団で同じ年の寺地隆成捕手はオールスター出場を決めるなど大活躍。木村優人投手も2勝1セーブを挙げている。その活躍が早坂の心に響かないわけはない。「もちろん刺激になっています」とニヤリ。若手が躍動する今年のマリーンズにおいて早坂もまたまばゆい光を放っている。

(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)
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