千葉県内のマンション共用部で遊んでいた小学生の女児が、20歳の男にトイレに連れ込まれそうになった事件。異変に気づいた小学生の兄が追いかけ、トイレの扉が閉まらないようにして妹を救ったという記事を千葉日報が報じると、ネット上では「お兄ちゃん素晴らしい!」「よく頑張って助けた!」と称賛の声が相次ぎました。
同時に、子どもを狙う性加害者への怒りや厳罰化を求める声、防犯対策の必要性を訴える投稿も広がっています。
◆勇気ある兄の行動に称賛
 事件が発生したのは7月19日午後4時半ごろ。千葉県警によると、マンションの共有スペースで小学生の兄らと遊んでいた女児が、20歳の男に「一緒にお話するだけだから大丈夫」と声をかけられ、手を引かれて併設のトイレに連れ込まれそうになりました。異変に気付いた兄が追いかけ、トイレの扉が閉まらないように押さえ、友人に大人を呼ぶよう伝えたことで、関係者が駆けつけ女児は保護されました。
 ネット上では、兄の冷静かつ勇敢な行動に、感動と称賛の声が数多く寄せられました。
「涙が出るほど勇敢なお兄ちゃんの行動に、心を動かされました。相手は大人で、下手をすれば危険な目に遭うかもしれない中で、妹さんを守り抜いた勇気には本当に頭が下がります」
「お兄ちゃんも小学生。自分も危険だったのに…追いかける姿、ドアが閉まらないように必死に押さえる姿を想像したら胸が詰まりました」
 特に称賛されたのは、友人に「大人を呼ぶよう」指示した冷静な判断です。「咄嗟に大人を呼ぶよう指示したことも素晴らしい。たすけてー!だけではパニックになる人もいるはず。きっと素晴らしい大人になる」と、その的確な行動にも注目が集まりました。
 こうした行動の背景には、学校での防犯教育や、保護者による日ごろの声かけがあるのではないかと、防犯意識の大切さを改めて実感する声も見られました。

◆安全なはずの「マンション共用部分」で
 事件現場は、子どもにとって身近で安全なはずのマンションの共用スペース。近年は、敷地内にキッズスペースや公園などを備えたマンションも増えています。
 「うちも子供たちだけでよく遊んでいるので恐怖を感じました」と、同様の環境に不安を覚えたという読者も少なくありませんでした。
◆過去の痛ましい事件を思い出す声も
 この事件を受けて多くの人が思い出したのが、2011年に熊本市で発生したスーパーのトイレでの女児殺害事件。当時3歳の女児が、大学生の男にトイレで殺害され、遺体を用水路に遺棄された凄惨(せいさん)な事件です。
 熊本の悲劇と重ね合わせ、不安や危機感をあらわにする人も。「(今回の事件は)未遂で済んだが次はどうなるか分からない」「加害者が軽い罰で社会に戻れば被害者や社会の安全は守れない。性犯罪者にはGPS監視など厳しい管理が必要」。こうした声からは、性犯罪への強い怒りと厳罰化、再発防止への切実な願いが読み取れます。
◆専門家が語る「日常に潜む危険」と対策
 Yahoo!ニュースのコメント欄には、防犯や子育ての専門家からも事件に対する見解や対策が寄せられました。
 防犯アドバイザーの京師美佳氏は、同じマンションの住人や同級生の保護者による犯罪例もあるとした上で、「知らない人にはついていかないだけでなく、知っている人にもついていかないよう教えるべき」と強調。緊急時に迎えに来てよい大人を名指しで伝えておく、屋内で遊ぶ際でも防犯ブザーを持たせるなど日常の工夫が必要だと訴えます。

 元刑事部捜査第一課の佐々木成三氏は、過去に誘拐された子どもが裸足で逃げ出したにも関わらず、大人に声をかけられず数時間後に交番に駆け込んだという実例を紹介。「地域で子どもと大人が関わり合い、子どもが良い大人・悪い大人を見極める力を育てることが何よりの防犯」と述べ、子どもが助けを求められる社会づくりの重要性を指摘しました。
 子育てアドバイザーの高祖常子氏は「困ったことが起きたときに大人を呼ぶという普段からの信頼関係」が、兄のとっさの行動に結びついたと分析し、日ごろから子どもと信頼関係を気付くことが危機回避能力を高める鍵だとしています。
 今回の事件は兄の勇気ある行動で未遂に終わりましたが、女児と兄が負った心理的ショックは計り知れません。子どもを守るために何ができるのか。性犯罪への法整備や再犯防止策に加え、子どもへの日常的な声かけで防犯意識を育むこと、そして日常に潜む危険を見逃さない大人のまなざしが、今、改めて問われています。
(デジタル編集部・山崎恵)
編集部おすすめ