首都中枢に最も被害が大きいM7・3の都心南部を震源とした直下型地震のモデルでは、千葉県内でも市川市や船橋市、千葉市美浜区などの6市で最大震度6強の揺れが見込まれる。食事や暖房で電化製品の利用が多い冬の夕方に発生した場合、死者は最大で約1500人、負傷者も約9400人に上る。
揺れや火災、液状化などで全壊・焼失する建物は、最大約3万8千棟になる可能性がある。
 試算では、県内の避難者数は発災後から徐々に増え、最も多い2週間後で約71万人、1カ月後でも約49万人が避難生活を余儀なくされる。帰宅困難者も約93万人いて、うち約23万人は行き場がなくなると予想される。
 生活を支えるライフラインへの被害も深刻だ。上水道では、被災直後に県の給水人口の36%(約227万人)が断水に直面し、被災1週間後でも20%(約125万人)に届かない。電力も52%にあたる223万軒で少なくとも3日間は停電が続く。携帯電話も電波を飛ばす基地局の53%が、非常用電源などを失い発災翌日以降に停止する。
 県災害情報室の中沢文男室長は、都心南部で直下型地震が起きた場合、県内では「東葛や浦安、市川などの都心に近いエリアの被害が大きくなるだろう」と見通す。県内では12年前の想定に比べ、建物の損失件数は耐震化などが進んだことで減少したが、死者数は横ばいだった。中沢室長は「テレワークの定着や高齢化率の上昇で生活様式が変容し、在宅率が高いことが要因のようだ」と話す。
 その上で「減災に必要なのは防災意識の向上で、日頃からの備えや逃げる場所の確認をお願いしたい。火災による死者が多いと出ているので、地震感知で電気が切れる『感震ブレーカー』などを導入してもらうことが死者を減らす鍵になる」という。

 県も、特に県内で被害が大きくなる県北西部を震源とした地震などの被害想定調査を進めていて、来年度に公表を予定している。
(中田大貴)
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