オランウータンのぬいぐるみを持ち歩く市川市動植物園(市川市大町)のニホンザル「パンチ」(雄、0歳6カ月)が話題になっている。不安を感じたらしがみついたり、危険を察知したら盾にして後ろに隠れたり―。
そんな愛らしい姿を同園がSNSで紹介すると、5万件近くの「いいね」が集まった。パンチはなぜ、ぬいぐるみと一緒なのか。実は生後まもなく実の母親から育児放棄され、ぬいぐるみが「母親代わり」になっていた。
 同園によると、昨年7月に生まれたパンチは、初産の影響もあってか母親から放置された。炎天下だったため飼育員が日陰に移動させるなどして様子を見ていたが、母親らの反応が見られなかったことから、翌日から人工保育で育てることになった。その後も、サルたちが集団で過ごすサル山と距離を置いたり、近づけたりと、飼育員が試行錯誤しながら見守ってきた。
 サルの多くは生後、すぐ母親にしがみついて過ごすことが多く、育児放棄されると不安に陥りかねない。そこで園は、パンチに安心してもらおうと、しがみつくためのタオルやぬいぐるみを用意。その中でパンチが気に入ったのが、オランウータンのぬいぐるみだった。
 現在、パンチは少しずつ群れの猿たちとの交流を深めている。他のサルに怒られた際には、ぬいぐるみを盾にするしぐさも見られ、不安を感じたときの良き相棒になっているようだ。
 そんな姿は来園者の間でも徐々に話題に。
「現在、サル山の中にぬいぐるみを持った子ザルがいます」。同園は5日夕、公式X(旧ツイッター)で、オランウータンのぬいぐるみと寄り添うパンチの画像を初めて投稿。人工保育であることも伝え、「成長を温かく見守ってください」と呼び掛けたところ、応援の声が相次ぎ、6日現在で4万8千件以上の「いいね」が付いた。
 6日には、インターネット上のコミュニティーで集まった寄付が同園に届けられた。同園課長の安永崇さんの発案で生まれたハッシュタグ「#がんばれパンチ」には、来園者から動画や写真の投稿が次々と寄せられている。
 同園ではこれまでも育児放棄されたサルを育てた経験がある。2008年生まれの「オトメ」は人工保育の後、群れに戻る過程でキャラクター「リラックマ」のぬいぐるみを抱く姿が話題となり、09年ごろ人気を集めた。オトメはその後、無事に群れに受け入れられ、出産も経験している。
 園は職員間でこれまでの知見を共有しながら、群れへの復帰を目指して試行錯誤を続けている。担当飼育員の鹿野紘佑さんは「一筋縄ではいかないと思うが、健康に過ごし、オトメのように群れの一員として生きてくれたらうれしい」と話す。安永さんは「パンチが元気に過ごし、群れに戻って幸せになってくれれば。ぜひ会いに来てほしい」と来園を呼び掛ける。
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